高い城の男

フィリップ=K=ディック著、浅倉久志訳「高い城の男」を読んだ。

本書は以前から購入していたものの積んドル(Kindleで購入しているが読んでいない状態)だったと記憶している。しかし、ピーター=トライアス著「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」の発売を受け、歴史改変小説ということで「高い城の男」が言及された。その機会にようやく読み始めたという訳である。なお、「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」は読んでいない。

枢軸国が第二次世界大戦に勝利し、アメリカ合衆国はドイツと日本の分割統治により3つの国に分断されていた。そしてアメリカ人の間では高い城の男なる人物が創作した連合国が第二次世界大戦に勝利した歴史改変小説「イナゴ身重く横たわる」が流行していた。また、登場人物の一部は物語内で流行している易経を指針に行動している。

本書を読んだものの、夢中になって読むということは無かった。おそらく私の読解力や解釈が凡俗なためなのだろう。

アメリカ人の美術商がアメリカ人が作成した装身具にアメリカ人として自信を見い出すところは興味深かった。やはり敗戦というものは個人のアイデンティティに影響を及ぼすということなのだろう。翻って実際に敗戦国を生きる私に日本人というアイデンティティがあるのかと問われれば当然あると思われるが、そういうものは試されて初めて現出する類のものだとも思う。ここでいう試すとは実際に国外の人と話したり、外国との比較で発生することを指すのだけれども、私生活で国外の人と話すことはまずほとんど無い。仕事ではまれに話すことがあるものの、そこまで込み入った話をするには至らない。例えば日本は素晴らしいよねと言われれば嬉しく思う反面、指摘された以外の点を思い出し、それを敢えて語らない私は苦笑いを浮かべていることだろう。また、日本が好きだという具体的な感想を持っているかと問われればそれも怪しい。ただし、否定されれば苛立つこともあろう。加えて、日本に対する感情と日本政府に対する感情はまた別である。
以上のように結果的に私は自国に対する具体的な感情や思いを考えるということは特にしていない。そういったことが本書に対して凡百な読みしかできなかった要因の一つではないかと思われる。

高い城の男

高い城の男

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)

ジョーカー・ゲーム

柳広司著「ジョーカー・ゲーム」シリーズを読んだ。

Twitterを眺めているとたまたまこんなRTが閲覧することになった。


浅学のため著者を知らなかったものの、「仕事柄、日本の諜報・防諜関連資料に目を通す機会が多い」作家の作品は面白いに決まっていると思い、本シリーズを手に取った。なお、シリーズ最終巻である「ラスト・ワルツ」はKindleに無かったため読んでいない。また、Production I.GによるTVアニメ、TVアニメに準拠したコミカライズも発表されている。

第二次世界大戦前、陸軍の魔王こと結城中佐の発案によりスパイ養成学校であるD機関が設立される。D機関の訓練生たちは互いのことを知らないまま、優秀なスパイとして活躍するというのが本シリーズのあらすじとなる。D機関のモデルは陸軍中野学校とのこと。
D機関の設定や結城中佐の謎、短編の完成度の高さ等、人に勧めたくなる連作短編集である。

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ダブル・ジョーカー ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ダブル・ジョーカー ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

パラダイス・ロスト ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

パラダイス・ロスト ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ハルモニア

篠田節子著「ハルモニア」を読んだ。

クラシックギター奏者である猪居亜美の「Black Star」を聴いていたところ、日本テレビ系の土曜ドラマとして放送されていた「ハルモニア この愛の涯て」で演奏されていたフレーズを耳にした。テレビドラマではチェロの演奏だったが、印象的なフレーズが耳に残っていた。猪井亜美の演奏の楽曲を確認したところ、ニコロ=パガニーニの「24のカプリース(奇想曲)」とあり、福田進一の編曲によるものだった。

ニコロ=パガニーニはヴァイオリニスト・ヴィオリスト・ギタリスト・作曲家である。「24のカプリース(奇想曲)」はヴァイオリン無伴奏曲であるという。

テレビドラマでは堂本光一と中谷美紀が主人公とヒロインを演じていた。今日たまたまジムのテレビで堂本光一を見掛けたのだが、昔の容姿とほとんど変わりが無いことに驚いた。一方、中谷美紀について調べてみたところ、ヴィオラ奏者と国際結婚をしていた。

「24のカプリース(奇想曲)」を聴き、原作はどのような物語だったのかと本書を手に取った。著者の作品を読むのは初めてのことである。なお、テレビドラマの結末がどのようなものだったかは忘れてしまった。

後天的な脳障害で超感覚的知覚保持者の女性をチェリストの男性が個人教授をすることになる。女性は驚異的な才能を示していく一方、女性の周りで不可解な事象が発生する。作品紹介等を見るとホラー小説と記載されており、女性が音楽の才能と共に超能力を発揮する。しかし、この小説の面白さはそういった状況において、チェリストの男性と女性が「天上の音楽」のために全てを捧げ殉じる姿を描いているところにある。

ハルモニア (文春文庫)

ハルモニア (文春文庫)

Black Star

Black Star

  • 猪居亜美
  • クラシック
  • ¥1833

鈴木三重吉の諸作品を読む

鈴木三重吉の諸作品を読んだ。

鈴木三重吉は小説家・児童文学者となる。東京帝国大学では夏目漱石の講義を受け、夏目漱石の推薦により作品を発表したという。大学卒業後は中学校教諭等を務める傍ら、作品を発表して小説家としての評価を高める一方、娘のために児童文学を読み漁ったことをきっかけに児童文学作品を発表、その後は児童文学に集中し、児童文芸誌「赤い鳥」を創刊する。
芥川龍之介の蜘蛛の糸、新美南吉のごんぎつねは「赤い鳥」が初出となっており、鈴木三重吉は児童文学や教育界に与えた影響は多大との評価が与えられているそうだ。

さて、鈴木三重吉の諸作品を読むに至った理由は「走れメロス」を読んだところ、その末尾に「(古伝説と、シルレルの詩から。)」とあったためである。一体どんな伝説や詩なのかと調べた結果(主にWikipediaである)、ピタゴラス学派の教団員の団結力を示す逸話が「古伝説」であり、シルレルことフリードヒ=フォン=シラーが逸話を下に発表した「人質」という詩が「シルレルの詩」であることが判った。そこでピタゴラス学派の教団員の団結力を示す逸話を鈴木三重吉が「デイモンとピシアス」として発表していることを知ったという訳である。

私が読んだ鈴木三重吉の作品は以下の通りになる。児童文学ということもあり、作品は短時間で読み切ることができる。改めて「デイモンとピシアス」や「ダマスカスの賢者」を読んだが、テンポと小気味の良さ、子どもに媚びない文章が良い。何より物語に初めて触れた喜びを再発見できるような気がする。加えて青空文庫で読めるのが素晴らしい。

デイモンとピシアス

デイモンとピシアス

黄金鳥

黄金鳥

金魚

金魚

パナマ運河を開いた話

パナマ運河を開いた話

『平野啓一郎 タイアップ小説集』

平野啓一郎著「平野啓一郎 タイアップ小説集」を読んだ。

著者のまえがきによれば、本書は2008年から2016年にかけて、主に雑誌の依頼に応じて執筆されたタイアップ小説・エッセイ集となる。本書には月刊誌『FRaU』に連載された「Fashion Series」の作品が主に収録されている。著者はエッセイ等の依頼は受けていたものの、「~のための小説」は書かないと決めていたそうである。しかしながら、2004年頃からモードに関心を持ち、コマーシャルな媒体で与えられたテーマに触発されるがままに良い意味で少し遊んで見るのも良いと考えたとのこと。執筆にはモード写真の表現の影響を受けているという。
以下、目次。

掌編小説

  • そよ風になった少年~CHANEL
  • 光を浴びて~ETRO
  • ポール~HERMES
  • まちあわせ~EMPORIO ARMANI
  • 老人とワイン畑~PRADA
  • 春眠~Louis Vuitton
  • 指輪と蓮の花~DE BEERS
  • エレベーターの前で~BURBERRY PRORSUM
  • 太陽の涙~Cartier
  • 魔術師の瞳~BVLGARI
  • 鍵を開けて、中を見て~TIFFANY&Co.
  • 心のいろ~BOTTEGA VENETA
  • 大理石の上の花瓶と花々~DOLCE&GABBANA
  • 残った花びらは二つ~TOD'S
  • あの花は誰から届けられたの?~Dior
  • 待ち人、来たる~FENDI
  • あの子の正体~LANVIN
  • 記憶カレンダー~BALENCIAGA
  • 時間の透明なマス目~エルメス銀座店
  • マネキンたち~シャネル銀座店
  • 旅のあとさき~GUERLAIN
  • 腕時計のなかった腕~HARRY WINSTON

エッセイ

  • 星空の時間
  • 釣り好きの祖父の酒
  • 猫のように、僕はコーヒーが好きだ
  • 時間の漫ろ歩き
  • 桜の中で、時が重なり合う

タイアップされているブランドを眺めるだけで溜め息が出る。以前から著者がファッション誌に小説を発表していたことは知っていたものの、読む機会が得られなかったため、そのような人に本書は嬉しいものであろう。

平野啓一郎 タイアップ小説集 〔電子版限定〕

平野啓一郎 タイアップ小説集 〔電子版限定〕

走れメロス

太宰治著「走れメロス」を読んだ。

ふと「走れメロス」とはどんな物語だったのかと思い手に取った。「走れメロス」を初めて読んだのは中学生頃だったと思われるがはっきりとしない。改めて読んだ結果、おそらく既に指摘されていることだと思うのだが、色々思うところがあったため、それをここに記しておきたいと思う。

走れメロスとは言えば「メロスは激怒した。」の冒頭が有名である。メロスは政治が判らない村の牧人であるが邪悪に敏感らしい。16歳になる婚姻を控えた妹の結婚式の準備のため、村からシラクスの市へ2年振りにやって来た。結婚式の品々を買い終えた後、市内に住む友人のセリヌンティウスの下を久しぶりに訪ねようとすると、市内の異変に気が付く。メロスは通りすがりの老爺から国王ディオニスが人を信じることができないために世継を含む近親者や賢臣、派手な暮らしをしている市民を次々と殺していることを知る。そして「呆れた王だ。生かしておけぬ。」と冒頭の通り、激怒するのである。激怒したメロスの行動は早い。買い物を背負ったまま王城に入りたちまち捕縛され懐から短剣が出てきて大騒ぎになる。その後、メロスを国王の下に引き出され、問答が始まる。メロスは短剣で国王を殺害するつもりだったことを認め、国王が人の心を疑うことは悪徳だと語る。一方、国王は人は私欲の塊で信じるには足らないのだと語る。そしてメロスを磔に処せれば泣いて詫びる口だけの男だと断じる。メロスは国王に対して、ここで死ぬ覚悟があり、命乞いはしないと言いつつも、丁寧語で妹の結婚式を挙げるための三日間を要求する。国王は一度逃せば戻ってくることは無いとメロスの言葉を信じない。そのためにメロスは自らの身代わりとして友人のセリヌンティウスを差し出すのである。

メロスは政治が判らないものの、司法取引は行うのである。また、老爺に対して国王の行動が乱心に基づくかの確認もしている。加えて、最終的に友人を身代わりとして差し出すという行動も取っている。これらは、どうにも老爺の言葉を一切に確かめることもせずに信じたり、国王の殺害を決定したりする行動とは相容れないようにも思われる。メロスが単純素朴であるならば、その場で磔にされて死を受け入れれば良いし、友人を差し出す提案をするのではあれば、村に戻って妹の結婚式を挙げた後、国王を殺害するためにシラクスの市へ戻れば良いし、市へ戻る刻限を三日間と言わず五日間にすれば良いのである。しかしメロスは自らが走るためかのように物語の舞台を整えるのである。

走れメロス

走れメロス

『天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART2』

小川一水著『天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART2』を読んだ。

既に本シリーズは本書の続刊である「天冥の標Ⅹ PART1~3」を以て結末を迎えている。おそらくこの記事を見ることになった人は天冥の標に少しでも興味を持っている人であろうから、もし読んでいないのではあれば、さっさと本書を全てを買い揃えて読み始めるべきであると思われる。そうすれば、おそらく最高の年末を迎えることが約束できる。

天冥の標IX PART2 ヒトであるヒトとないヒトと(ハヤカワ文庫JA)

天冥の標IX PART2 ヒトであるヒトとないヒトと(ハヤカワ文庫JA)

天冥の標? ヒトであるヒトとないヒトと PART2 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標? ヒトであるヒトとないヒトと PART2 (ハヤカワ文庫JA)

永い言い訳

西川美和監督作品『永い言い訳』を観た。

小説家が編集者と不倫中、妻が乗車しているバスの事故に遭い亡くなったことを知る。小説家は妻が亡くなったことに全く感情が湧いてこない。そんななか妻と共に亡くなった妻の友人の夫と知り合い、その子どもたちの面倒を観ることにやりがいを見出していくのだが………

本作は友人から勧められて観たものだ。友人は自らを小説家と重ね合わせ、家族が亡くなった時に涙が出なかったことを思い出したという。

私は本作を観ながら少々まとまりに欠けるのではないかと思ったのだが、日常こそまとまりに欠けており、直接的な答えを示唆してくれるものでは無いと思い至った。それでも、人は日々の生活をこなしながら、ふとしたことで物事が収まるところに収まったり、理解できてしまったりするものである。また、知らぬ間に忘れてしまうこともあるだろう。小説家がどのように妻の死を受け入れたかは判らなかったものの、小説家は妻の死の体験をノンフィクションの物語として発表して本作は終わりを迎える。

死は直截に受け入れることができず、本能的に避けてしまうものでは無いだろうか。しかし、人は死を避ける手立てが無い。だからこそ人は死をフィクションという形で触れようとする。おそらく、ここで言うフィクションにはニュース等で触れる人の生き死にも含まれるのだろう。「気の毒にね」「かわいそうにね」という言葉が心をよぎった時、次は何かしら自分の番ではないかと思う一方で、自分には関係の無いことだと安堵を覚えている。そんなことだから、死は概して唐突なものになる。そして唐突なできごとに人は概して対応できない。小さな子どもは転んだ後、数秒は平気な顔をしているが、傍に駆け付けた親の「大丈夫?」という声掛けに自らが泣いても良いということを知り泣き声を上げる。小さな子どもでさえ泣く理由が必要なのだから、大人が親しい人の「唐突な死の知らせ」に泣くことができずいるということはありそうなことである。しかも、大人には傍に駆け付けて「大丈夫?」等と声掛けをしてくれる人はそうはいないだろうと思われる(なかなか結構な関係性が無ければ言えそうも無い気がする)。そして気が付いた時には泣くべきタイミングを逸しているということもあるのでは無いだろうか。だから、おそらく、私にできることは(なかなか結構な関係性が無ければ言えそうも無いのだが)単純に「大丈夫?」と声を掛けることなのだろうと思う。そして「大丈夫じゃないよ!!」と声を荒げて言われることではないかと思う。

永い言い訳 [Blu-ray]

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『∀ガンダム I 地球光』『∀ガンダム II 月光蝶』

富野由悠季監督作品『∀ガンダム I 地球光』『∀ガンダム II 月光蝶』を観た。

大学生の頃、同級生が富野由悠季を好んでおり「富野由悠季のファンは「伝説巨神イデオン」が好きだというが、俺は「∀ガンダム 」が好きだ」と言っていた(今思うと、もしかしたらダンバインやリーンの翼等と言っていたかもしれないが、既に10年以上も前のことだ)。彼は「∀ガンダム 」の放映時、高校生のバレーボール大会で放映が中止したことに怒りを覚え、テレビ局に電話を掛けたとも言っていた。

そんなことをふと思い出し、本作を観た。編集力の極みにより物語を追うことはできるようになっている。しかしながら、細部に至るまで物語を追えるかと言えば微妙なところだ。今思えば私はガンダムを全話観たという経験が無く、全て編集された映画版しか観たことが無いのだった。

印象に残っているのは(端的にはっきり憶えているところとも言える)物語の終わりに主人公が元々仕えていた他族のヒロインから自らの一族の姫に付き添うことを選択したことである。これには色々と思うところがあった。

∀ガンダム Blu-ray Box I

∀ガンダム Blu-ray Box I

∀ガンダム Blu-ray Box II

∀ガンダム Blu-ray Box II

2019年10月の音楽

今月は未聴の音楽を聴いた。

高橋悠治『モンポウ 沈黙の音楽』

Mompou: Música Callada

Mompou: Música Callada

  • 高橋悠治
  • クラシック
  • ¥1800
スペインはカタルーニャの作曲家であるフェデリコ=モンポウの後期のピアノ曲集。
Wikipediaによれば、印象主義音楽の影響を受けており、クロード=ドビュッシーの後継者と言われたとのこと。また、実証的では無いが、エリック=サティの影響があると指摘する人もいるらしい。
私はモンポウについては本作を聴くまで全く知らなかった。初めて聴いた際はサティの曲のようだという印象を抱いたが、高橋悠治のサティの演奏と比較すると、サティの楽曲が感情を省みて表現しているとするならば、モンポウの楽曲は現在進行形の不安定な感情を表現しているように思える。


FINAL SPANK HAPPY『mint exorcist』

夏の天才

夏の天才


BOSS THE NKとODによるFINAL SPANK HAPPYの新譜。かなり快楽度が高いポップスである。
実はSPANK HAPPYの過去の楽曲はラジオや小田朋美のカバー曲でしか聴いた事は無い。そのため、比較して聴くということができない。
M-1の「NICE CUT」でODの「~じゃないすか」という口調が「ナイスカット」に掛かっていることを知る。
また、M-1「NICE CUT」、M-3「雨降りテクノ」、M-12「mint exorcist」でODやBOSS THE NKの語りが割と好きである。気散じが紛れる効能があると思う。
上記の動画のM-7「エイリアンセックスフレンド」では琴と思われる和風な弦楽器がリズムの裏で鳴る気持ち良さが最高である。

メディアと自民党

西田亮介著「メディアと自民党」を読んだ。

私が何を思って本書を手に取ったのかは3年前になるためすっかり忘れてしまったが、本書は題名の通り、メディアと自民党の関係を解説した本である。例えば、ある国政選挙の際、自民党は世耕弘成を中心にメディア対策を蓄積して内製化しており、選挙では各候補者に配られたiPadから毎日演説の際にネタ等が提供されていたという。

現在の自民党のメディア戦力はどのようになっているのか考える時、ファッション誌と自民党のコレボレーション、自民党の#自民党2019プロジェクト、首相のInstagram等に話題に挙がったことが記憶に新しい。また、他党でも国会議員がYou tubeを開設している。これらは政治に対するイメージを刷新するのには有効であると思われるが、イメージ戦略が先行し、その内実が蔑ろにされている気もする。実際のところはどうなのだろうか?

同年代の同僚と選挙の話になったことがある。ちょうど選挙の時期だったのだと思う。同僚は「選挙に行っても仕方が無い。選挙に行って何か変わることがありますか?」という。確かに何かが変わったという認識をミクロ的な観点から得られたことは無いような気がする。私は同僚の話に適当に相槌を打った。最近、その同年代の同僚が新居を購入した。しかしながら、増税前の家電の購入等はしなかったという。また、奥さんがスーパーの野菜の値段を細かくチェックしているともいう。そういった話を聞きながら、ミクロ的ではなくマクロ的な観点から見れば、選挙に行っていれば消費税が増税されることは無かったのではないか、眉唾ではあるが野菜の値段を気にすることも無かったのではないかと思いがよぎる。

メディアと自民党 (角川新書)

メディアと自民党 (角川新書)

2019年9月の音楽

今月は今年前半に聴いた音楽の再視聴をしたというところ。

Celer『How could you believe me when I said I loved you when you know I've been a liar all my life』


tower.jp
アメリカ人の音楽家で現在は日本在住のCelerことWill Longのアルバム。
ドローンを検索した際に上記の記事で知る。


Ortance『Escargot』

Escargot

Escargot

  • Ortance
  • J-Pop
  • ¥2400
メンバーは坪口昌恭、西田修大、大井一彌。
私はRadioheadのカバーで知ったつもりでいたがFlying Lotus『L.A.』の全曲カバー等で知られているという。


Chick Corea, Dave Holland, Barry Altshu『A.R.C.』

A.R.C.

A.R.C.

  • バリー・アルトシュル, チック・コリア & デイヴ・ホランド
  • ジャズ
  • ¥1600
喫茶店の店主曰くまだ偉くなっていない頃のチック=コリアとのこと。確か東京JAZZに来日する云々という話の流れで聴かせてもらったものである。大抵、こういう時は一曲目で評価をしてしまうものだが、やはり何か違うということは素人にも明らかだった。レーベルはECM。


Dollar Brand『African Piano』

上記に続き、こちらも喫茶店で聴いもの。繰り返されるフレーズと跳ねる躍動する音に生きている心地がする。レーベルはECM。

Nik Bärtsch's Ronin『Awase』

Awase

Awase

  • ニック・ベルチュ
  • ジャズ
  • ¥2100
体感的に表現するとシャリシャリとした感じは薄めでモワーンとしている。すごく良いです。レーベルはECM。

『羊の歌―わが回想』『続 羊の歌―わが回想』

加藤周一著『羊の歌―わが回想』『続 羊の歌―わが回想』を読んだ。

テニスの練習を一生懸命したとか、日本人女性の付き合いがあったとか、外国人女性とも付き合ったとか、海外を放浪していた…といった断片的な記憶しか残っていない。

最近、山田風太郎の「戦中派不戦日記」を読み終えたのだが、本書と比較すると、日記とエッセイという体裁の違いもあると思われるが、世界観が全く異なる印象を受ける。なお、偶然であるものの、2人共医学を志し、肋膜炎により兵役を免除になったという一致がある。

以前も説明した通り、私が加藤周一を意識するようになったのは高校生の時に国語の教科書に掲載されていた「日本の庭」が面白かったことによる。また、朝日新聞で連載されていた夕陽妄語を読んでいた記憶がある。本書内で触れられていたかは忘れたがモスラの原作者である中村真一郎、福永武彦とも親交があったと言う。

羊の歌?わが回想 (岩波新書)

羊の歌?わが回想 (岩波新書)

続 羊の歌?わが回想 (岩波新書)

続 羊の歌?わが回想 (岩波新書)

奥泉光の諸作品を読む

奥泉光の諸作品を読んだ。
読んだ作品の一覧は以下の通りとなる。

バナールな現象 (集英社文庫)

バナールな現象 (集英社文庫)

モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)

モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)

桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)

黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2 (文春文庫)

黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2 (文春文庫)

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)

新・地底旅行

新・地底旅行

『吾輩は猫である』殺人事件 (河出文庫)

『吾輩は猫である』殺人事件 (河出文庫)

神器〈上〉―軍艦「橿原」殺人事件 (新潮文庫)

神器〈上〉―軍艦「橿原」殺人事件 (新潮文庫)

神器〈下〉―軍艦「橿原」殺人事件 (新潮文庫)

神器〈下〉―軍艦「橿原」殺人事件 (新潮文庫)

虫樹音楽集

虫樹音楽集

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

シューマンの指 (100周年書き下ろし)

ビビビ・ビ・バップ (講談社文庫)

ビビビ・ビ・バップ (講談社文庫)

奥泉光の作品を知ったのは中学生の頃になるのだろうか?新聞の週末の書評欄に「鳥類学者のファンタジア」がジャズに関する小説として取り上げられていた。題名に謳われるようにファンタジーなのだろう等と考え、それから数ヶ月か数年の後、図書館でハードカバーを手に取ったことまでは覚えているが、結局読むには至らなかったのだと思う。当然ながら、当時(今もだが)鳥類学者がアルト・サックス奏者のチャーリー=パーカーを指すことも知らなかった。

その後、奥泉光がフルートを吹くことを知る。また、「対テロ戦争株式会社―「不安の政治」から営利をむさぼる企業」「戦争サービス業―民間軍事会社が民主主義を蝕む」等の書評を読み、現代の戦争に関することを小説の題材にしているのかと思ったこともある。

それから十数年経過して、私は最近のジャズを自ら聴くようになった。そして奥泉光がジャズを題材にした「ビビビ・ビ・バップ」を発表することを知った。ちょうど無職だったこともあり、これを機に一気読みをするかと立ち上がったのが3年前の話だ。

「バナールな現象」と「モーダルな事象」は今となっては印象が薄い。しかしながら「モーダルな事象」に登場した桑幸とその生徒の活躍が描かれる「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」シリーズにはすっかりハマってしまった。

「鳥類学者のファンタジア」、おそらく新聞紙上の連載を読んでいた「新・地底旅行」「『吾輩は猫である』殺人事件」を読み、それぞれの作品に同じ設定が仕込まれていることを知るに至る。

「神器」は前回の記事で触れたメガノベル。平野啓一郎の「決壊」と共に新潮で連載されていた。

「虫樹音楽集」は短編集でジャズに関する物語があったことを覚えている。

「東京自叙伝」は「そんなつもりは無かったのです」「仕方無かったのです」とあらゆる出来事が締めくくられるグロテスクな作品。無責任で反省の無い人々の精神性が明らかにされているように思う。

「シューマンの指」はベートーヴェンのピアノソナタが話題に挙がっていたように思う。

「ビビビ・ビバップ」は「鳥類学者のファンタジア」の設定を継承した作品となっている。近未来SF的な話で割と何でもありのかなり面白い小説である。

珈琲東山/まとめ

当ブログで最も読まれているのは友人が営んでいる自家焙煎珈琲「珈琲東山」の記事となっている。
嬉しい反面、わざわざ検索までして友人の喫茶店のことを調べようと思う人々には最も良い情報に触れて欲しいという気持ちがある。
そのため、現状のネットで確認できる情報をまとめることにした。



www.facebook.com
珈琲東山のウェブサイト。店主が記事を投稿しているため、最新の情報はここから確認しよう。フェイスブックのウェブサイトになるため、セキュリティチェックが必要と表示されているが、問題無くサイトにリンクされています。



www.porta-y.jp
山梨県内の情報を届けるポータルサイトPORTAにおける珈琲東山の紹介。
店内の様子や雰囲気がよく分かる。地図で駐車場の位置が確認できる心配りも嬉しい。
ちなみに山梨県・公益社団法人やまなし観光推進機構が提供する「富士の国やまなし観光ネット」にもPORTAが提供している珈琲東山の記事がある。



www.rubaiyat.jp
店主が珈琲東山を開業するまで働いていたルバイヤートのワインで知られる丸藤葡萄酒工業のブログ記事。
記事にもある通り、珈琲東山ではルバイヤートのワインを多く取り揃えている。


www.instagram.com
店主の後輩の珈琲東山に関する素敵なinstgramの投稿。
上記の記事と比較すると使用されているソーサーに違いがあることに気が付く。





当ブログの記事。
bullotus.hatenablog.com
bullotus.hatenablog.com