フィリップ=K=ディック著、浅倉久志訳「高い城の男」を読んだ。
本書は以前から購入していたものの積んドル(Kindleで購入しているが読んでいない状態)だったと記憶している。しかし、ピーター=トライアス著「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」の発売を受け、歴史改変小説ということで「高い城の男」が言及された。その機会にようやく読み始めたという訳である。なお、「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」は読んでいない。
枢軸国が第二次世界大戦に勝利し、アメリカ合衆国はドイツと日本の分割統治により3つの国に分断されていた。そしてアメリカ人の間では高い城の男なる人物が創作した連合国が第二次世界大戦に勝利した歴史改変小説「イナゴ身重く横たわる」が流行していた。また、登場人物の一部は物語内で流行している易経を指針に行動している。
本書を読んだものの、夢中になって読むということは無かった。おそらく私の読解力や解釈が凡俗なためなのだろう。
アメリカ人の美術商がアメリカ人が作成した装身具にアメリカ人として自信を見い出すところは興味深かった。やはり敗戦というものは個人のアイデンティティに影響を及ぼすということなのだろう。翻って実際に敗戦国を生きる私に日本人というアイデンティティがあるのかと問われれば当然あると思われるが、そういうものは試されて初めて現出する類のものだとも思う。ここでいう試すとは実際に国外の人と話したり、外国との比較で発生することを指すのだけれども、私生活で国外の人と話すことはまずほとんど無い。仕事ではまれに話すことがあるものの、そこまで込み入った話をするには至らない。例えば日本は素晴らしいよねと言われれば嬉しく思う反面、指摘された以外の点を思い出し、それを敢えて語らない私は苦笑いを浮かべていることだろう。また、日本が好きだという具体的な感想を持っているかと問われればそれも怪しい。ただし、否定されれば苛立つこともあろう。加えて、日本に対する感情と日本政府に対する感情はまた別である。
以上のように結果的に私は自国に対する具体的な感情や思いを考えるということは特にしていない。そういったことが本書に対して凡百な読みしかできなかった要因の一つではないかと思われる。
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