2015-01-01から1年間の記事一覧

『フルスタリョフ、車を!』『わが友イワン・ラプシン』

アレクセイ=ゲルマン監督作品『フルスタリョフ、車を!』『わが友イワン・ラプシン』を観た。 「神々のたそがれ」の公開を契機にアレクセイ=ゲルマンの作品が各所で上映された。アレクセイ=ゲルマンが監督したのは事実上「神々のたそがれ」を含め五作品と…

2015年12月21日~2015年12月27日

駅に着いて定期券を忘れた事に気がつく。全く自分には呆れるしかない。金が惜しければ遅刻しても良かったのだと後になって気がついた。割と単価の高い喫茶店で若い男女が語り合う姿を見掛ける。クリスマスイブの朧月は何やら大きく見えた。駅構内、エスカレ…

モスクワ妄想倶楽部

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、中沢敦夫訳『モスクワ妄想倶楽部』を読んだ。モスクワ在住の作家は所属する作家倶楽部から原稿を幾つか持って研究センターに行くよう命じられていた。研究センターでは何やら作家の原稿に関する研究が行われているら…

2015年12月14日~2015年12月20日

カール=ルイスが世界で一番脚が早かった頃、彼の名がその代名詞だった。そんな事を思い出した。コンビニのレジの前で財布を忘れた事に気がつく。全く自分には呆れるしかない。天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART1 を読み終える。役者は揃い、一同が…

みにくい白鳥

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、中沢敦夫訳『みにくい白鳥』を読んだ。雨が降り止む様子は無い。作家ヴィクトルは娘が大人のように話している事に気がつく。妻によれば娘は濡れ男のところに出入りするようになったという。濡れ男について余り街の人…

2015年12月7日~2015年12月13日

十二月のイルミネーションを家に飾る親子を見掛ける。この輝きは必要とする人たちだけに用意された物なのだと腑に落ちた。電車に乗ろうと駅に赴くと電光掲示板には電車の遅延情報が流れて行く。「~線は~駅で起きた人身事故により」路線は一つでは無いらし…

2015年11月30日~2015年12月6日

椎名誠について調べていると、ネット上に公式の文学館があり、目黒考二と共に全著作を振り返るという企画があった。まずSF三部作及び読んだ記憶のある私小説について読んでいった。著者自身、忘れている作品があったりするのはご愛嬌だが、旧知の間柄の二人…

2015年11月23日~2015年11月29日

掃除をしたのだが一向に終わる気配が無い。台所を主に取り掛かったのだが、長年住み暮らした生活感は消えなかった。とんかつ屋で熱燗で日本酒を飲む。通しで味噌田楽とこんにゃくが出る。ラジオから流れるのはのど自慢だがよく鐘が鳴る。参加者の嬉々とした…

そろそろ登れカタツムリ

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『そろそろ登れカタツムリ』を読んだ。森は深く広く誰も何も理解出来ずにそこにある。森に建てられた研究所を舞台にしたペーレツ編と森でさまよい暮らすカンジート編で本書は構成されている。実際本書が発表…

2015年11月16日~2015年11月22日

中年の男性がスマートフォンでアプリを起動させて「うんち」と入力して送信するのを垣間見てしまった。ちょっとした事でも簡単にやり取り出来る訳だから勿論内容もどうにでもなり得てしまう。Sugadairo piano solo at velvetsun を聴いている。ピアノの旋律…

2015年11月9日~2015年11月15日

雨が降っている。おかげで蒸し暑く、電車の中で額に汗を流している。汗、労働の対価、輝き。なんてこった、俺が本を読んでいる間にあいつは女と寝ていた。全く取り返しがつかない事になってしまった。なんてこった、俺が女と寝ている間にあいつは本を読んで…

2015年11月2日~2015年11月8日

沖縄。山の中腹に温泉が湧いたという。老人たちがぶつくさ言いながら温泉の周りにたむろしていた。温泉に向かわなければ、境内で人力車を見つけ、それに乗り込み鳥居を潜り抜ける。近くに居た守衛は「境内で運転するとは。」と呟いた。目覚めると外から雨音…

地獄から来た青年

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『地獄から来た青年』を読んだ。惑星ギガンダではアライ公国と帝国が血みどろの戦争を繰り広げていた。アライ公爵に忠誠を誓う公国特殊部隊ファイティング・キャットのガークは突破された前線にて守備につく…

2015年10月26日~2015年11月1日

スエットに着替えパソコンを眺めていると首筋に何かが這っているようだった。半信半疑で首筋を二度叩くと、手の平にバラバラになった大きな蟻の死骸があった。思わず声を挙げるが、おそらく洗濯物を取り込んだ時、そのまま家に迎え入れたのだろう。イスラム…

完全な真空

スタニスワフ=レム著、沼野充義・工藤幸雄・長谷見一雄訳『完全な真空』を読んだ。スタニスワフ=レムによる架空の書物の書評集であり、メタフィクションの傑作として知られている。「短篇ベスト10」で紹介した通り、読者投票では本書から五作品が選ばれて…

2015年10月19日~2015年10月25日

制服を着た子どもが満員電車に乗り込んで来た。後ろに下がった女性を懐で受け止める羽目になった。子どもは周りを顧みずソフトカバーの本を貪り読んでいる。坊主頭越しに頁に彩られた紋様が目に入る。ファンタジー小説でも読んでいるのだろう。自分が本を自…

少女は自転車にのって

ハイファ=アル=マンスール監督作品『少女は自転車にのって』を観た。十歳のワジダは男友達と自転車で競争しようとするものの、イスラム教の戒律を守る周囲の大人はそれを許さない。ある日、雑貨屋で見掛けた自転車に一目惚れしたワジダは、友人にミサンガ…

2015年10月12日~2015年10月18日

外は雨だった。わざわざ出張までしてやる事が他愛も無いものだった。日々小間使いだと吹っ切れているつもりだが、忙しなく働く人々の横では、さすがに情け無さくらい感じるべきだろう。年長の社員共に作業に従事しながら尋ねてみる。「あんまり効率的では無…

コングレス未来学会議

アリ=フォルマン監督作品『コングレス未来学会議』を観た。原作はスタニスワフ=レム著「泰平ヨンの未来学会議」。ハリウッドは人気絶頂期の俳優をスキャンしデジタルデータとして自由に作品をつくる事が可能となっていた。「キアヌ=リーブスもサインした…

2015年10月5日〜2015年10月11日

スガダイローの刃文を聴いている。蓮の花が美しい。ピアノは単純にその音色だけで美しい。「帰ってたんだ。」夫はそれだけ言うと鞄を持って午前七時前に家を出て行った。もう、会話はこれ以上は起こるべくも無い。トーストを齧り八時前に自宅を出る。通勤に…

2015年9月28日~2015年10月4日

琵琶湖でドライブしてバーベキューをする夢を見た。「人間に疲れヤギになった男」というニュースを目にしていたのだが、また外国の変人かと無視していた。どうやら「ゼロからトースターを作ってみた」、文庫版では改題された「ゼロからトースターを作ってみ…

『マッドマックス 怒りのデスロード』

ジョージ=ミラー監督作品『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観た。荒野、改造車の傍らに男が佇んでいる。入り乱れる無線の音、脚元に現れたトカゲを踵で踏み潰し、口に運ぶ。男たちに捕らえれ、生きた輸血袋としてスキンヘッドの色白男に繋がれる主人…

ソラリス

スタニスワフ=レム著、沼野充義訳『ソラリス』を読んだ。飯田規和訳はロシア語からの翻訳になるらしいのだが、そのロシア語版は編集サイドの自主的な検閲により一部削除された箇所があるという。沼野充義訳はポーランド語版からの翻訳になり、国書刊行会か…

2015年9月21日~2015年9月27日

ブレードランナーを観たところ、大変感銘を受けた。これが初めての鑑賞ではないのだが、やっと作品のディテールを読み込めるようになったという事だろう。そもそも当初の鑑賞は中学生か高校生の頃まで遡る。おそらく何らかの媒体で評判が良い事を知ったのだ…

2015年9月14日~2015年9月20日

連日の勤務の為か、早朝目覚めてしまう。早めに自宅を出るとヒールを履いた女性は小走りに、その横を両手に鞄を持った男性が歩く。例えばこの男性がスーツを脱いだ無職になっても、二人の関係は続くのだろうか…経済力は重要だ、そんな結論しか出ない。リクル…

『天の声・枯草熱』

スタニスワフ=レム著、沼野充義・深見弾・吉上昭三訳『天の声・枯草熱』を読んだ。スタニスワフ=レムの長篇二編が収められている。 天の声 偶然発見された地球外からの信号を研究する為に一流の科学者達が集められた。しかし信号の一部を解読して出来たの…

泰平ヨンの未来学会議

スタニスワフ=レム著、深見弾・大野典宏訳『泰平ヨンの未来学会議』を読んだ。アリ=フォルマン監督が本作を原作に「コングレス未来学会議」として映画化している。映画を観たのだが、メタ的な視点やドラッグがもたらす幻覚をアニメーションで描く等面白い…

2015年9月7日~2015年9月13日

吉田一郎不可触世界のあぱんだを聴く。自宅を出ると目の前に若い男女が傘を差しながら歩いている。東京で生きる事に救われていると考えてみた。果たしてそうだろうか。高校生がだらしなく鞄を肩に掛け追い抜いて行った。確かに片田舎にいれば何かと窮屈な思…

2015年8月31日~2015年9月6日

霧雨程度の雨だと気がつき傘を畳むと、電線から滴る水滴がこめかみに落ちた。雨がもたらしたのは蒸し暑さだった。流されるがままにたどり着いた場所で得た出会いも、研鑽の上にたどり着いた場所で得た出会いも、共に等価だと気がついた。朝、制服姿の学生を…

短編ベスト10

スタニスワフ=レム著、沼野充義・関口時正・久山宏一・芝田文乃訳『短編ベスト10』を読んだ。ポーランドのSF作家スタニスワフ=レムの短篇集。読者投票、編者、レムによって選ばれた短編十五作の内、十篇を邦訳したものとなっている。翻訳者の一人である沼…