われらが歌う時

リチャード=パワーズ著、高吉一郎訳「われらが歌う時」を読んだ。

はっきりと憶えていないのだが、2000年代後半に多くのメガノベルが発表されたと記憶している。私のメモには以下の作品が挙げられていた。

  • 平野啓一郎「決壊」
  • 鹿島田真希「ゼロの王国」
  • 古川日出男「聖家族」
  • 町田康「宿屋巡り」
  • 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日」
  • 桜庭一樹「ファミリーポートレート」
  • リチャード=パワーズ「われらが歌う時」

2000年代後半、私は大学を卒業し、会社員にはなったものの、すぐに会社を辞めて…というような経過を辿っていた。そして10年の月日を経た今、その時の心情を思い出すことも難しくなっている。

上記の作品でリアルタイムに読んだ作品は平野啓一郎「決壊」のみとなる。その後、暇があれば読もうと考えていたものの、数年が経過していたという訳である。たまたま仕事を辞めた3年前、暇にかこつけて唯一読み終えたのが「われたが歌う時」だった。
Amazonの内容紹介は以下の通り。

1961年、兄の歌声は時をさえ止めた―。亡命ユダヤ人物理学者のデイヴィッドと黒人音楽学生のディーリアは歴史的コンサートで出会い、恋に落ちた。生まれた三人の子供たち。天界の声を持つ兄ジョナ、兄の軌跡を追うピアニストの「私」、そして、空恐ろしいまでに天賦の音楽の才能を持つ末妹ルース。だが、音楽で結ばれ、あまりに美しい小宇宙を築き上げた家族は、ある悲劇を機に崩壊することになる…。妙なる音楽の調べとともに語られてゆく、30年代を起点とした過去と50年代を起点とする二つの過去。なぜ二人は恋に落ちたのか。子供たちは何を選ぶのか。通奏低音のように流れる人種問題、時間の秘密。あの日に向けて、物語は加速してゆく。巨大な知性と筆力により絶賛を浴びてきたパワーズの新境地、抜群のリーダビリティと交響曲にも似た典雅さ。聖なる家族のサーガが、いま開幕する。全米批評家協会賞最終候補作。プシュカート賞/ドス・パソス賞/W・H・スミス賞ほか受賞。

上記の通り、アメリカの歴史とある家族の歴史が描かれている。もちろん、3年前に読んだということもあり、詳細は忘れている。しかし、リチャード=パワーズの作品を読むのは初めてのことだったにも関わらず、非常に面白かったことははっきりと憶えている。

われらが歌う時 上

われらが歌う時 上

われらが歌う時 下

われらが歌う時 下

シン・ゴジラ

庵野秀明監督作品「シン・ゴジラ」を観た。

3年前に映画館で2度観た。また脚本を読んだ。本記事を書く前に改めて脚本を読み、パソコンのモニターで鑑賞した。既に本作公開後、「GODZILLA」(アニメーション3部作)、更にアメリカ版ゴジラの2作目「ゴジラ キングオブモンスターズ」(2019年)が公開されている。なお、どちらも鑑賞はしていない。仕事が忙しかったのもあるのだろうが、どうにも映画館に脚を運ぶ気がならなかった。というよりここ3年程、そもそも映画館にほとんど行っていないのだった…

本作を3年前に観た時、非常に興奮したことを憶えている。エヴァンゲリオンの劇伴楽曲「EM20」とヤシオリ作戦の名称から、なるほど、エヴァの監督が作るゴジラはヤシマ作戦になるのかと膝を打った。

初代「ゴジラ」に対するオマージュやリスペクトを嬉しく思う一方、本作から思い出された作品は、舞台が東京湾と東京を舞台に繰り広げられていることもあろうが、「機動警察パトレイバー 2 the Movie」だった。
本作ではゴジラ対策のために設置された若き政治家矢口蘭堂率いる「巨大不明生物特設災害対策本部」(巨災対)の奮闘が描かれる。しかし、本作の主軸となる戦いの構図は「ゴジラVS巨災対」では無く、厳密には「ゴジラの謎を解明して失踪した牧悟郎元教授VS巨災対」である。そして矢口蘭堂の推測によれば、牧吾郎元教授はゴジラ対策のために日本に3度目の核兵器を落とすのか、牧吾郎元教授の残した謎を解いて解決するのか(「ヤシオリ作戦」)、予測していたのではないかという。この物語の構造に鑑みると、どうしても「機動警察パトレイバー 2 the Movie」を意識してしまう。

政治家や官僚、自衛隊、更にアメリカ等が一丸となって戦う姿には胸が熱くなる。一方、本作で描かれるのは、旧態依然とした日本の政治の世界やお役所仕事でもある。本作の功罪があるとすれば、旧態依然としたものがまるで新しい有効なもののように思えてしまうところではないか。現実を見れば、間違い無く日本経済と国民に大きな傷を残すであろう消費税増税が政治家や官僚の手によって実施されるのである。ここで環境省自然環境局野生生物課長補佐(後に課長代理)尾頭ヒロミの言葉を引用しよう。

「・・・・・・ゴジラより怖いのは、私たち人間ね」


本作で一番の衝撃を受けたのは、現実路線を取る政治家の赤坂秀樹が終盤に語る以下の台詞である。

「せっかく崩壊した首都と政府だ。まともに機能する形に作り替える。次の臨時政府で、巨大不明生物関連法案の成立と東京復興の目処がたてば、解散総選挙だ。都の避難民が360万人いる瀕死の日本を立て直す、新たな内閣が必要だからな」
「スクラップアンドビルドで、この国は伸し上がって来た。今度も立ち直れる」

旧態依然とした日本という国は、ゴジラのような大災害と多数の犠牲者がいなければ、作り変えることができない。一応、エクスキューズがあるものの、逆説的にそう言うのである。

その他、ゴジラが何故東京湾に出現したのか、何故東京を目指したのか、タバ作戦における武蔵小杉駅のタワマンを崩壊させたい、ゴジラの放射線流で霞が関と永田町は炎上したものの皇居の森は無事だったようだ、背中から放射線流、最初にZARAはどこは聞き漏らした、高橋一生が良く騒ぐ、エヴァ量産型も運んでいたアメリカのステルス戦闘機が格好良いけど随分高いらしいですよ等、色々思うところがあった。

以上、映画館を観た時に感じた所感である。この所感を書くために実は3年前から本作に対する批評等はほとんど観ていない。この記事を書きながら、色々と検索をしたが、既に多くのことが言及されていたようだ。

シン・ゴジラ

シン・ゴジラ

シン・ゴジラ Blu-ray2枚組

シン・ゴジラ Blu-ray2枚組

ジ・アート・オブ シン・ゴジラ

ジ・アート・オブ シン・ゴジラ

シン・ゴジラ音楽集

シン・ゴジラ音楽集

2019年8月の音楽

今月はサブスクリプションのサービスを利用していた際に購入をしていなかった音源を聴いた。
また、木澤佐登志著「ニック・ランドと反動主義」で取り上げられていたVaporwave(ヴェイバーウェイブ)を聴いた。なお、主に参考にした記事は以下になる。
obakeweb.hatenablog.com
essential-vaporwave.herokuapp.com

小埜涼子 NEWDUO series 11~14





未だ集中して聴けていない状況。

Ryorchestra『DMK』


Ryorchestraは名古屋を中心に活動中のZeuhl系アヴァンギャルド集団。小埜涼子参加。コーラスワークと奇怪なヴォイスが印象的。


Shuta Hiraki『Not Here, But There』


誘眠のための音楽。地下鉄に乗る際、ノイズキャンセリング機能があるカナルタイプのイヤフォンが必須な状態であるが、外部の音響に取り込まれながら更に本作を聴く時、二層の空間の中で意識が明確になり、遠のいて行く。


Noël Akchoté『Gabriel Fauré – Requiem in D minor (Op.48, 1887-1890) (For Dobro)』




上記のツイートで興味を覚え視聴。クラシックギター等と比較すると派手さはなく瞑想的である。ディスコグラフィーからフォーレを選んだのは、私がフォーレくらいしか判らなかったからである。

2814『新しい日の誕生』


Vaporwave(ヴェイバーウェイブ)関連。題名から完成度が高そうと思われた2814「新しい日の誕生」を聴いた。上記の記事によれば、かなりの人気作らしい。

猫 シ Corp.『NEWS AT 11』『OASYS ♁ 博物館』『Palm Mall』『HIRAETH』





Vaporwave(ヴェイバーウェイブ)関連。お気に入りの曲は「NEWS AT 11」に収録されている「Evening Traffic」。

Kobayashi Yamato『商業的な仕事 1993 – 2004』


Vaporwave(ヴェイバーウェイブ)関連。チップチューン風の音楽かと思いきやそうではない。


Blank Banshee『Blank Banshee 0』


Vaporwave(ヴェイバーウェイブ)関連。ここまで整っていると特にジャンル分けに意味は感じない。


Shuta Hiraki『Afterwhile』


Shuta Hirakiの旧譜を聴く。自宅でドローンを聴いている時、周囲の音がドローンに溶け込んでしまうことがある。

rakish『Inverted Decay』



Shuta HirakiのInstagramの画像と共に聴くプロジェクトとのこと。

2019年8月19日/蒸気の波に行きつ戻りつ航海リゾート

木澤佐登志著「ニック・ランドと反動主義」で取り上げられていたVaporwave(ヴェイバーウェイブ)に興味を持ち、Bandcampを漁っている。この夏の暑さと体調悪化に適当な音楽を探していたのだが、ただのノスタルジア、適度な雑多さ、平面的な音響…聴き手に求められる解像度の低さが気分を落ち着かせてくれる。最初はアンビエントに分類されており、題名から完成度が高そうと思われた2814「新しい日の誕生」を聴いた(どうやらかなりの人気作らしい)。その後に前掲書でも紹介されていた、猫 シ Corp.「NEWS AT 11」「Palm Mall」、McIntosh 「Floral Shoppe」(但しネットで音源を直に聴く。音源は販売されていないらしい)、もう一度、猫 シ Corp.「OASYS ♁ 博物館」「HIRAETH」。加えてBlank Banshee「Blank Banshee 0」を聴いた。多分まだ聴くと思う。

勝田文がモーニングで山田風太郎著「戦中派不戦日記」を原作とした「風太郎不戦日記」の連載を始めた。月1連載らしい。楽しみである。勝田文が漫画化したジーヴスの翻訳者である森村たまきが「美しいものも美しくないものもおんなじ密度で力入れて描いちゃうんだね。」と評しており、なるほどと思った。良い機会だと原作を読み始めた。

2019年8月15日/愚直なドラムスと立ち尽くす中年

公共施設前の路上で立ち尽くす中年の夏。

8月半ばの午後9時過ぎの電車に乗り込むと虫取り網を座席の下に置いた少年と母親を見掛ける。そういえば休日の朝方にも公園で虫取り網を持った少年と母親が樹々を眺めていた。子どもが虫取りをしたいと言えば、虫取り網をどこかで購入し、虫取りの方法も調べ、野外に飛び出さなければならない。そんな事を考えて、自らの現状を笑う。

油汗、毛穴の黒ずみ、白いニキビ、たるんだ二の腕。知らぬ間に焼けた上腕と紺色の半袖シャツと汗染みのグラデーション…気が付けば夏の暑さに汗を流していた。

仕事で無駄足を踏み空しい。これはビジネスなのだから機会と費用の損失は埋め合わせをしなければならない、いち早く対策を講じなければならない等と言いながら、内心急ぐ事でもないと察しが付いているのは全く馬鹿げたことじゃないか?一杯の珈琲と一時間も掛からない時間で気分を変えることができそうなんだ。判るだろ?さぁ、さぁ、とりあえず、まず一杯だ。

店主が流した音楽は以下の通り。Ches Smithの愚直なドラムが気に入った。また、「Polish Jazz Vol. 4」の一曲目のピアノに耳を奪われた。

  • DAVID TORN, TIM BERNE, CHES SMITH「SUN OF GOLDFINGER」
  • The Andrzej Trzaskowski Quintet 「Polish Jazz Vol. 4」。

2019年。これは令和元年である。

絵巻物から飛び出した餓鬼。暗闇の中で弛んだ腹を叩き、鏡の前で白髪を抜く。

君の名は。

新海誠監督作品『君の名は。』を観た。

既に同監督の最新作「天気の子」が話題になっているなか、3年前に映画館で観た作品を記事として上げる状況に笑うしかない。なお、「天気の子」は未視聴である。

当時鑑賞した際、私は時間SF作品として楽しむことができた。また、本作を鑑賞して驚いたのはその結末である。これまで鑑賞した「秒速5センチメートル」や「言の葉の庭」は二人が出会うものの、最終的に結ばれることは無く、「ロマンチック・ラブの否定」が描かれていた(参照サイト『星を追う子ども』公式サイト/新海 誠 最新作)。

また、彗星が隕石衝突という災害として描かれていることも意外だと思った。宇宙や自然が叙情的なものとしてだけでは無く具体的な災害として表現されたのは、やはり、東日本大震災の影響なのだろうか?

登場人物たちには彗星落下という災害を回避した結果、叙情的な表現だけが残る。これによって叙情的な表現がロマンチック・ラブを否定していたというロジックである従来の作品から、叙情的な表現がロマンチック・ラブを肯定するというロジックへの転換が果たされる。「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」が現実的な作品としてロマンチック・ラブを否定していたとするならば、本作は時間SF(フィクション)を導入することによりロマンチック・ラブを肯定したのである。

鑑賞当時は複数の友人とヒットした理由について話している。当初、私は「広告に予算が掛かっていた」「ロマンチック・ラブの否定を辞めた」「謎解きがある」がヒットの理由ではないか等と考えた。また、最終的に友人とのやり取りの中で「普通の恋愛映画であり、一般人でも楽しむ事が出来る」「時間SF作品のため、普通の恋愛映画を観ない客層にも受け入れられた」という話に落ち着いた。

2019年6~7月の音楽

いまどきサブスクリプションサービスを使用しない人の音楽履歴。
最近は仕事にかまけて音楽を聴く時間が減った。
今年前半に聴いた作品の音源を購入して聴き直したという感じだった。

Brad Mehldau『After Bach』

After Bach

After Bach

  • ブラッド・メルドー
  • ジャズ
  • ¥1900

やはりバッハは素晴らしいのだが、聴いていると感極まり哀しくなる。
バッハがパイプオルガンを使用した即興演奏者だったという話はなるほどと思う。
本作後に発表されたブラッド=メルドー名義の「Finding Gabriel」も傑作とのことだが未聴。

スガダイロー『季節はただ流れて行く』

季節はただ流れて行く

季節はただ流れて行く

  • スガダイロー
  • ジャズ
  • ¥2400

note.mu
暦をテーマに毎月1曲ずつ一年を費やし作曲した作品群。
上記の柳樂光隆のインタビューは非常に面白く、スガダイローに惹かれる理由がよく判った。なお、スガダイロートリオの「公爵月へ行く」は未聴。

河野智美『The Spain』

河野智美/ザ・スペイン

河野智美/ザ・スペイン

  • アーティスト: 河野智美,アルベニス,タレガ,グラナドス,ファリャ,ロドリーゴ,デ・ラ・マーサ
  • 出版社/メーカー: アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト / ミューズエンターテインメント)
  • 発売日: 2019/02/13
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
ようやく聴いた河野智美の新譜。
前作のバッハの次はスペイン。
一曲目のアストゥリアスで引き込まれる。

珈琲東山/アイスコーヒーの淹れ方

令和元年5月末日、松本での仕事帰りに自家焙煎珈琲「珈琲東山」を再訪した。
bullotus.hatenablog.com


夏と言えば冷たいアイスコーヒー。今回は以前の記事で触れたアイスコーヒーの淹れ方を動画で紹介する。



珈琲東山のコーヒーはネルドリップ(「ネル」と呼ばれる布製のフィルターを使用してコーヒーを抽出する方法。ネルは「フランネル」の略)だが、アイスコーヒーのためペーパードリップ(紙製のフィルターを使用してコーヒーを抽出する方法)を使用している。最近は上記のシェーカーではないアイスコーヒーの淹れ方も覚えたとのこと。

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アイスコーヒー/シェーカー使用によるコーヒー表面の泡が口当たりをまろやかにしている

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アイスコーヒー/ミルクを使用。ミルクはこだわりの低温殺菌牛乳

夏の暑さに珈琲東山のアイスコーヒーを思い出し、飲んで涼みたいと思う今日この頃である。

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ネルドリップを終えた店主/基本的に気さくな方なので話し掛けると喜ぶと思います

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平日の営業時間が11:00~から12:00~になりました(令和元年5月末日時点)

自家焙煎珈琲 珈琲東山
〒405-0005
山梨県山梨市小原東72 イーストセルジュ2


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2019年5月の音楽

今月は新譜とジャズ喫茶で知った旧譜を聴く。AppleMusicは貧乏性を発揮して精神的に疲弊するため利用を終了した。今月はColin Vallon Trio の三部作をよく聴いた。本当に素晴らしいと思う。

Mark Guiliana『BEAT MUSIC! BEAT MUSIC! BEAT MUSIC!』

BEAT MUSIC! BEAT MUSIC! BEAT MUSIC!

BEAT MUSIC! BEAT MUSIC! BEAT MUSIC!

  • MARK GUILIANA
  • エレクトロニック
  • ¥1500

Christian Scott aTunde Adjuah『Ancestral Recall』

Ancestral Recall

Ancestral Recall

  • クリスチャン・スコット
  • ジャズ
  • ¥1500

Chick Corea, David Holland, Barry Altschul『A.R.C.』

A.R.C.

A.R.C.

  • バリー・アルトシュル, チック・コリア & デイヴ・ホランド
  • ジャズ
  • ¥1600

Lonnie Liston Smith & The Cosmic Echoes『Astral Travelling』

Astral Traveling

Astral Traveling

  • Lonnie Liston Smith & The Cosmic Echoes
  • ジャズ
  • ¥1500

2019年5月11日/冷静な生活

令和元年5月1日、皇居周辺の路上で警察車両を目にする。

職場で仕事をしている間に夜となった。雨は昼頃から翌日の深夜まで降り続けたようだった。

友人の喫茶店に赴く。帰宅中、電車内で子どもが大いに泣いていた。

高尾駅のホームの照明に虫が群がっている。

連休明、会社から仕事がキャンセルとなった旨の連絡が入る。訪問先に向かう途中だったため、下車して連絡を取ったところ、面談相手が体調不良だと言う。訪問先から謝罪と労いの言葉があり、別件の用事を先送りするため、問題無いと伝えた。

訪問先が観光地だったため、未だ連休が続いているような錯覚を覚える。晴れており風が気持ち良い。

電車に乗るとボックス型の4人座席で若い2人が惚気ている。その惚気ぶりに思わずニヤついてしまう。気持ち悪いおじさんになってしまったと思う。

喫茶店に赴きコーヒーを飲む。友人が喫茶店を開業したことを店主に伝えたところ、お祝いの言葉を貰ったため、友人にメールで伝えた。店主によれば東京JAZZにChick CoreaやKamasi Washingtonが来ると言う。調べてみるとSnarky Puppyも公演を予定していた。浅学な私に気を利かせてくれた店主はChick Corea「A.R.C.」を流してくれた。Nefertitti(ネフェルティティ)を初めて聴く。

再度、喫茶店に赴きコーヒーを飲む。Cecil McBee Sextet with Chico Freeman「compassion」、
峰厚介「ダグリ」 、Dollar Brand「African Piano」を聴いた。「ダグリ」の一曲目の序盤のピアノが美しい。演奏者を確認したところ、板橋文夫だった。

2日連続で電車内や駅ホームで口論する男性を見掛けた。連休明けの影響なのだろうかと考える。

訪問先へ向かう途中、あちこちの路線で電車遅延が発生していた。連休明けの影響なのだろうかと考える。

混み合う電車内で座席に腰を下ろし、行先を確認した。その時、ふと大学を卒業して10年経った事に気が付き、目頭が熱くなった。ここで何をしているのかという問いは、この10年を過ごした自分こそよく判っているのだった。

2度目の訪問先の道中に蛙の鳴き声を聴く。田に水が張られ稲の苗が整列している。一方青い小麦が穂を揺らしていた。



2019年5月8日/珈琲と東山梨

友人が開業した珈琲店に赴く。開店日は令和元年5月1日である。

仕事であれば車や特急を利用するところだが、せっかくの休みである事や予算を考え、以前と同様に新宿から京王線と中央本線を利用した。なお、新宿から中央本線を利用するより京王線を利用した方が安価らしい。

電車内で「バナナフィッシュにうってつけの日」もしくは「バナナフィッシュ日和」を読む。お気に入りの作品ではあるが、何度も読めば新鮮さは無くなる。引鉄を何度を何度も引けば、引鉄を降ろすことに躊躇いは無くなるだろう。

電車内で多く見掛けたのはハイキングの支度をした乗客だった。高尾駅で京王線からJR中央本線に乗り換えると休日のためなのか乗客は多かったが大半は大月駅で下車した。おそらく富士急ハイランドや富士山を目指すのだろう。その後、勝沼ぶどう郷駅で割と多くの乗客が下車した。一方で部活動に勤しむ地元の高校生が乗車した。ほとんどの乗客は終点の甲府を目指していると思われた。

私は無人駅の東山梨駅で下車した。なお、私の他にも下車した乗客は2名程いたようだった。ここで簡易改札を通過しようとしたところ、金額不足と表示される。隣のホームに移動して金額をチャージする。

友人が開業した喫茶店に開店時刻前に辿り着く。無人駅とは言え、駅から徒歩1分という立地である。

喫茶店前で写真を撮っていると友人が店から顔を出した。朝食を摂っていたらしい。

店舗内は思いの外、落ち着いた趣である。居抜き物件で空調とフローリングは業者に依頼して新調する一方、壁クロスは自ら貼り替えたという。

店内の音源はパソコンのデータとレコードだった。当然、JASRACに連絡済みになるそうで月額7千円程が掛かるらしい。ちなみに友人は大学時代にメタル喫茶をつくると発言しており、その旨を伝えたところ、そんな事言ったっけ?との返答だった。

私はコーヒーに対するこだわりを特に持っておらず、喫茶店を開業した友人に教えてもらった知識しかない。友人が上京した際、喫茶店や飲食店、青山のコーヒーフェス等を周った。友人はコーヒーの苦味の濃淡から酸味や甘み等を感じ取っており、割とはっきりとした評価を口にしていた。なお、過去に友人と日本酒フェスに行った際、友人が同フェス内の利き酒のイベントに参加し、全問正解していたところを見ているので、五感等の官能的な素養は持っていると思う。

一通りのコーヒーを頼んだ。友人によれば苦味の質が異なるらしい。当然、美味いのだが、私のバカ舌では「濃厚」と「濃い目」の区別をする事ができなかった。ちなみに「普通」は多少の酸味が感じられるため、「濃厚」や「濃い目」と区別を付けることができた。

アイスコーヒーは他のコーヒーと淹れ方が異なる。店内は基本的に静的な空間ではあるが、アイスコーヒーを淹れる際はパフォーマンスを楽しむことができた。ミルクとガムシロップを入れて飲んだところ、かなり美味しかったので、アイスコーヒーを頼んでスッキリした後に濃い目のコーヒーを楽しむというのもありかもしれない。

軽食はコーヒー用のお菓子が無料で提供されていた。また、アルコールも提供するため、乾物等は有料で提供を予定しているという。ちなみに喫茶店なのでチャージ代は取らないらしい。私はルバイヤートの甲州 辛口の2017年産、ジョニー=ウォーカーのレッドレーベルを水割りで飲んだ。

客と友人の会話を聞いていると、お客は土地柄なのか舌が肥えている様子が見受けられた。

その後、友人の紹介を受け、国宝の清白寺を訪ねる。葡萄畑の先の山並みと青い空が美しい。















珈琲東山

友人がJR東日本中央本線/東山梨駅前に自家焙煎珈琲「珈琲東山」を開業した。







落ち着いた趣の店内。座席は10席程度



友人は大学卒業後、青山や京都のレストラン、ロンドンのミシュランスター1つ星の日本食レストランでウェイターとして経験を積んだ。帰国後は日本ワイン界をリードするワイナリーの1つであり、ルバイヤートのブランド名で知られる丸藤葡萄酒工業株式会社で働いた。
一方、大学在学時から喫茶店に興味を持ち、大坊珈琲店の手回し自家焙煎とネルドリップというスタイルに強い影響を受けた。




大坊珈琲店の影響を示す手回し自家焙煎機






珈琲豆とワイン。同店では焙煎の深さと抽出方法で、濃厚/インドネシア産マンデリン、濃い目/イエメン産モカマタリ、普通/エチオピア産イルガチェフェとメニューを分けており、国内産を中心にセレクトしたワイン、ウイスキーも提供している





濃厚/インドネシア産マンデリン



友人曰くまだまだ試行錯誤しているとのことだが長く店を続けたいという。

それでは客として珈琲東山でお会いできれば幸いです。
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自家焙煎珈琲 珈琲東山
〒405-0005
山梨県山梨市小原東72 イーストセルジュ2


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2019年4月30日/平静な生活

ジムのサウナで眺めた民放の天気予報によれば明日は雨になるらしい。気象予報士は天気は平成から令和のように変わるものでは無く、今日の続きなのだという趣旨をおどけて述べた。天気だけでは無く、おおよそのことは年号の変更では変わりはしないはずである。

ジムでエアロバイクを漕ぎながら天皇の退位の儀式の中継を観た。正式名称は「退位礼正殿の儀(たいいれい・せいでんのぎ)」というらしい。天皇の国民に対する言葉は心を打った。また、その言葉は象徴としての天皇の在り方を端的に表しているのではないかとも思われた。

百貨店の地下で購入したワインを飲む。以前友人が勤めていた醸造所のものだが、アルコールに弱いため1杯飲むのにも苦労する。肴にピクルスとチーズを用意したがこれがうまかった。

スーパーマーケットでピクルスを購入している。小ぶりのピクルスを1つ2つ食べると非常に満足感がある。なお、スタフドオリーブも食べたが、こちらは苦味しか感じることが出来なかった。

歯の間に髪の毛が挟まっている事に気が付いた。フロスを使用して髪の毛を取り出す。私に人の髪を食う性癖は当然無い。

久しぶりのランニングにも関わらず長距離を目標とした結果、走るよりも歩く時間が多くなった。

「なんで桜がないの」と母親に問い掛ける子ども。その問いに思わず微笑む若い男女。桜の開花時期に来たかったと思う一方、葉桜の濃淡は眩しくも目に優しく、これはこれで味わい深いとも思う。コンクリートで整備された川の泥溜まりには黄色い野菊の花が鮮やかだった。調べてみると外来種でオオキンケイギクと言うらしく、駆除されることもあるという。

川沿いにできた低層型のマンションの住人は近隣の遊歩道の敷石を並べた労働者と相見えることは無いだろう。その遊歩道の粗雑なベンチの奥深くには瀟洒な椅子が設けられている。

街角の随所で撤去されずに残る選挙掲示板を眺めることになった。選挙前より目にすることが多いことに苦笑いを浮かべたくなる。

特に予定が無かったため、途中下車をして百貨店に寄る。駅前では若手のアイドルによるミニライブが催されていた。ステージに立つ若者を私は誰1人知らなかった。そのまま百貨店の地下に行きワインコーナーを確認したところ、目当ての醸造所のものは白が売り切れとなり赤しかなかった。以前、赤ワインを飲んで身体中に激痛を起こしたことを思い出した。

友人が勤める美容室で髪を切る。友人は高校の同級生だが大学卒業後に一時的に連絡を取る機会を逸してしまって以来、疎遠となっていた。しかしながら、生命保険の営業で私の保険契約もまとめている友人の勧めで勢い連絡を取った結果、髪を切ってもらう運びとなった。私は以前から初めての美容室は友人の店と決めていたのだった。

友人は慎重に髪を切り進めた。友人の身体は薄く腕は細かった。取り留めも無く無駄に話したばかりに口の中に髪の毛が入る。床屋で髪を切るより微妙な調整ができており、今後も友人に髪を切ってもらおうと思った。

寝不足で起床が遅かった上、洗濯をしてしまったために自宅を出るのが遅れてしまう。最近はいつもこうだ。あと15分余裕が無い。

久しぶりにジムで身体を動かし気持ちが良かった。

「不思議のダンジョン2 風来のシレン」のアプリをプレイし、食神のほこらをクリアした。長かった。

連休初日はただひたすら眠った。そして1つ歳を取った。

東海道線に乗車していたところ、小田原を前にして高台から望む夕暮れの光景に目の覚める思いがした。実際、都内からひたすら座席で眠っていたのだった。

駅前の整備された平坦な道路を進む。学校、教会、スポーツセンター、住宅街、ハンバーグレストラン、そしてその先の病院…ハレルヤ!!ここには全てが揃っている、私は万物の創造主たる神にそう報告したくなった。

坂を登り、トンネルを越え、浅瀬に用意された朽ちかけた椅子に座る。暑い。春だと思う。

統一地方選挙として実施された区議会議員選挙の立候補者の中にはネット上で炎上した区議会議員が少なくとも2人いた。しかしながら両名は見事に再選していた。また、過激派の活動家も当選していた。選挙結果を確認した際、投票した区民はスマートフォンで立候補者に関して数秒でも調べる労力を割いたのだろうかと非常に落胆した。ただし、その後に元々過激派出身の区議会議員がいる等の土壌があったこと等を知り、区民が立候補者に対して何も理解することなく投票したという私の先入観こそ正されるべきなのではないかと思い直すに至った。

既に記憶は散り散りになってしまっている。

勤務先にはアメリカに詳しく在京の同国籍の知り合いを持つ先輩がいる。先輩は新元号が発表される数十秒前、モニターで新元号の発表を表示させながら作業する私の傍にやってくると「新元号は××ワだよ」と言った。上手く聞き取れなかった私は「ゲイワですか?」と訪ねると「レイワ」だよと応えた。モニターに視線を戻すと官房長官が新元号を「令和」と発表したところだった。

2019年4月の音楽

今月は先月の継続で主にシフ=アンドラーシュのベートーヴェンのピアノソナタを聴いた。
なお、AppleMusic の利用はとりあえず辞めにした。

Schiff András

Beethoven: The Piano Sonatas, Vol. I - Op. 2 and 7 (Recorded Live)

Beethoven: The Piano Sonatas, Vol. I - Op. 2 and 7 (Recorded Live)

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥2500
Beethoven: The Piano Sonatas Nos. 5, 7 & 8

Beethoven: The Piano Sonatas Nos. 5, 7 & 8

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥1600
Beethoven: The Piano Sonatas - Volume 3

Beethoven: The Piano Sonatas - Volume 3

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥1600
Beethoven: The Piano Sonatas, Volume IV

Beethoven: The Piano Sonatas, Volume IV

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥1600
Beethoven: The Piano Sonatas, Vol.5

Beethoven: The Piano Sonatas, Vol.5

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥2500
Beethoven: The Piano Sonatas, Vol. VI

Beethoven: The Piano Sonatas, Vol. VI

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥1600
Beethoven: The Piano Sonatas, Vol. VII

Beethoven: The Piano Sonatas, Vol. VII

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥1600
Beethoven: The Piano Sonatas, Vol. VIII

Beethoven: The Piano Sonatas, Vol. VIII

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥1600
Encores After Beethoven (Live)

Encores After Beethoven (Live)

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥1600
Bach - Busoni - Beethoven: Violin Sonatas

Bach - Busoni - Beethoven: Violin Sonatas

  • アンドラーシュ・シフ & 塩川悠子
  • クラシック
  • ¥2100


ねごと

解散を思い聴く。

ex Negoto

ex Negoto

  • ねごと
  • ロック
  • ¥2100
https://itunes.apple.com/jp/album/5/595622510?uo=4&at=10l8JW&ct=hatenablog

"Z"OOM - EP

  • ねごと
  • ロック
  • ¥1500
Hello!

Hello! "Z" - EP

  • ねごと
  • ロック
  • ¥1500


Base Ball Bear

Kougen

Kougen

  • Base Ball Bear
  • ロック
  • ¥1600


Chara

運転中、ラジオから聴こえて心を奪われた。ただし今までしっかりと聴いた覚えは無かった。

Swallowtail Butterfly~あいのうた~ (JEWEL ver.)

Swallowtail Butterfly~あいのうた~ (JEWEL ver.)

  • Chara
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

2019年3月の音楽

今月は主にECMレコードを聴く。参考にしたのは以下のブログとなる。
listening-log.hatenablog.com


Schiff András

シフ=アンドラーシュのベートーヴェンのピアノソナタは全ての録音がECMにあるとのこと。今後聴こうと思う。

J.S. Bach: Six Partitas

J.S. Bach: Six Partitas

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥2500
Beethoven: The Piano Sonatas, Vol. VIII

Beethoven: The Piano Sonatas, Vol. VIII

  • アンドラーシュ・シフ
  • クラシック
  • ¥1600


Nik Bärtsch's Ronin

ニック=ベルチェ率いるローニンの未視聴音源を聴く。
「Randori」のベース音を聴かせるシンプルな作品は現在の作品には見受けられず、面白く聴けた。

Randori

Randori

  • ニック・ベルチュ
  • ジャズ
  • ¥1500
Live

Live

  • ニック・ベルチュ
  • ジャズ
  • ¥2500
Rea

Rea

  • ニック・ベルチュ
  • ジャズ
  • ¥1500
Live

Live

  • ニック・ベルチュ
  • ジャズ
  • ¥2500
Awase

Awase

  • ニック・ベルチュ
  • ジャズ
  • ¥2100


Terje Rypdal

Waves

Waves

  • テリエ・リピダル
  • ジャズ
  • ¥1600
Whenever I Seem To Be Far Away

Whenever I Seem To Be Far Away

  • テリエ・リピダル
  • クラシック
  • ¥1600


Kim Kashkashian,Robert Levin,Robyn Schulkowsky

Shostakovich: Sonata for Viola and Piano - Chihara: Redwood - Bouchard: Pourtinade

Shostakovich: Sonata for Viola and Piano - Chihara: Redwood - Bouchard: Pourtinade

  • キム・カシュカシャン, ロバート・レヴィン & ロビン・シュルコフスキー
  • クラシック
  • ¥1600


Carolin Widmann,Dénes Várjon

Schumann: Violinsonaten

Schumann: Violinsonaten

  • Carolin Widmann & デーネシュ・ヴァールヨン
  • クラシック
  • ¥1600