惑星トンガリ/第5回

凍てつく凸恒星系、閉じられた星系は慣性に従った天体の運動だけが許されていた。角を生やした異形のトンガリは確かに目に付いたものの、高度文明の惑星開発と比較すれば可愛いものと言えた。彼はいつも通り、星系内の調査を開始して情報を集めた。調査結果は事前の情報と相違無かった。原始宇宙の辺境の星系、凸恒星系と惑星トンガリは彼が手を掛ければ如何なる不規則な事態も想定されることは無かった。凸恒星系における大規模な変化はやはり惑星トンガリに角を生やすことになった流星の衝突だっだ。流星は凸恒星系よりも更に遠い起源宇宙とも言える空間を出自としていた。そもそもトンガリの角は惑星の大地の隆起ではあったものの、衝突した流星の成分そのものだった。また、流星は深く刺さり、クレーターはその後の溶岩層によって覆われていた。彼はトンガリに関する遡れる限りの情報の思念の流れを追いかけたものの、特筆すべきものは確認できなかった。

彼は幾星霜の宇宙の旅で改竄された宇宙史を幾度も経験していた。その経験と調査結果を評価する限り、凸恒星系と惑星トンガリには意図的な情報操作が行われていることは間違い無かった。証拠は無いものの、証拠が一切無いことが、情報操作の根拠になるという矛盾した状態だった。おそらく、自らを超越した高次な存在が関与しているのだろう。それならば、自分に何もできることはない。そう考えた彼は凸恒星系の制御理論を発動させて支配下に置き、惑星トンガリに降下した。