惑星トンガリ/第7回(最終回)

凸恒星系が栄華を極めたなか、惑星トンガリはその角を天体観測塔として運用され、宇宙上の情報の流通経路となっていた。とある日、惑星トンガリの天体観測塔が解析不能の未知語を受信した。膨大な未知語の受信直後、惑星トンガリに膨大な熱と質量が集約され、瞬く間に凸恒星系は消え去った。

惑星トンガリの消失と共に現れたのは、光り輝く角を持つ獣だった。角は常に光を集め、同時にエネルギーを発散していた。

彼は消失した身体を復元しつつ、猛る角を持つ獣を認識し、凸恒星系に関与した高次の存在の正体を知った。宇宙の誕生と共に角は存在した。角は始源のエネルギーの一形態だった。始源のエネルギーは拡散する宇宙を掻き乱し、宇宙に苦痛や煩悶のストレスを与え、更なる深化と進化を促し、宇宙の延命を図っていた。角はエネルギーを減少させると、その姿を長く保てる場所に滞留して自らのエネルギーを復元させる機会を待つ。そして、その条件が満たされた瞬間、元の姿に戻り、また宇宙をかき乱すのだ。これは宇宙を永続させるための仕組みのようだった。

彼は一角の獣と戦うことを選んだ。考える余地は無い。彼の存在理由は種の存続だった。そして、高次な存在の考えを読み違えたとは言え、彼の外縁部が開かれた宇宙の理念を求めたことも影響していた。実際彼の目に現れた高次な存在は宇宙に生きるものを省みない、宇宙そのものに奉仕する存在だった。また、皮肉なことに彼が戦うことは、おそらく数多の宇宙を奪うことと同義だった。

彼は一角の獣が放つエネルギーを弾くと数多の生命や熱が消えた。彼の放つ蹴りがあらゆる宇宙の因果を消し飛ばした。宇宙は崩壊した。一角の獣は角のエネルギー体となり、彼を貫こうとした。彼は角を両の手で受け止めると、自らの心の臓に差し込んだ。あたりは彼の煮えたぎる血と白熱の光に包まれた。

それから幾星霜、白熱の光と煮えたぎる血は暗闇に四散して新たな宇宙を礎となった。そして、起源宇宙には、果てしなく巨大なエネルギー源の化石、巨大な角の生えた惑星が恒星を周り続けているという。