惑星トンガリ/第4回

思えば彼の長い旅路は惑星トンガリによる宇宙開闢、災厄と復興を辿るものだった。有機物、細胞生物、原始生物、高度知的生物、サイボーグ、電子頭脳、情報共有網、情報展開体、電子パルス、あらゆる生命と文明が宇宙を跋扈していた。彼にとっては何世代も前に種が経験した段階だった。数多くの文明は彼の存在に気が付くとコンタクトを試みた。彼の存在、思考、動作の残滓はあらゆる生物や文明に取って奇跡に値した。聡明な種は恭しく彼を「神」と呼んだ。

彼は神と呼ばれる事に何の感慨も持たなかったものの、自らの物資を確保する必要があったため、彼らに求められたものを与えると同時に彼らに取って未だ価値の無い物資や未知の検体を失敬していた。彼がもらたした奇跡は効果的に運用されることもあれば、忌避されたり、無視されたりしてしまうこともあった。彼が為した奇跡、例えば知的生命体の一個体に彼のほんの少しの力を授けたところ、一個体は神の代わりを名乗り、多くの信奉者を得たものの、その力ゆえに愚かな人々の迫害を受けて殺された。彼はアフターケアとして一個体を蘇生させたものの、彼の後釜に座した信奉者達に瞬く間に殺され掛けたため、憐れに思った彼は一個体を一個体が夢想した概念上の世界へ召した。その後、信奉者達は自らの殺意を忘れ、一個体を神として崇める奇跡の物語を創りだした。この文明は信仰の為に奇跡を技術として獲得することなく、事実を信仰の物語として歪曲した為に、低次の知的生命体として滅んでいった。

長い旅路の果て、彼の宇宙船は凸恒星系を辿り着いた。