『太陽を盗んだ男』

太陽を盗んだ男』をキネカ大森で観た。同時上映の『イングロリアス・バスターズ』も観賞。
太陽を盗んだ男』は原爆を教師が作り、それを持って政府に下らない要求を突きつけるという話だとは聞いていた。
主人公が原子力発電所からプルトニウムを強奪した事件を過激派の仕業と報道する演出や、主人公が乗る観光バスをバスジャックして天皇に面会を求める男の登場に、当時のリアリティを垣間見た気がした。
また主人公のライバルとして登場する警察官との泥臭い戦いと、その結末―まるで何も考えていない主人公が偶然にも生き残り、まとめな警察官があっさり死ぬ―この偶然の勝利の無思想さに圧倒された。この何も無さは原爆を作り出すものの持て余す主人公の無思想さと通じる。かつ作品の作り手たちがこの主人公とこの結末を以て娯楽という無思想さを示しているようにも思う。
そしてこの事態に私は躊躇いのようなものを覚えるのであった。
一方、冒頭のバスジャック犯が面会を求めた天皇こそ、太陽に喩えられる存在であり、主人公は原爆を作り出す事によって太陽=天皇=国家のアイデンティティを脅かし蹂躙する存在になった考える事も出来るのかもしれない*1

主人公がアパートの一角でガイガーカウンターの針の揺れを観ながら原爆を作るその様子は、非常にスリリングであった。
同時に、ガイガーカウンターの存在をあっさり受け入れる事が出来る現在には失笑せざるえなかった。
あと池上季実子が可愛い。


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*1:と考えたが蛇足だろうが、国の秩序を壊し云々でいつもの大きな物語の失効という話には繋げられるかも。