2023年1月2日/年末年始

前日の記事のタイトルの西暦が2022年になっていることに気が付いて訂正した。一人で2022年を繰り返すところだった。しかし、自分はまた同じ一年を繰り返すという気しかしない。一方、コロナウイルスの流行やロシアのウクライナの侵攻に鑑みると、日々の生活は容易に変わり得るのだとも思う。

年末に綿野恵太「みんな政治でバカになる」を読んだ。本書は認知バイアスと政治的無知による大衆の政治への無関心をバカとしており、認知科学の有力な仮説である二重過程理論等を参照している。二重過程理論とは人間の脳内に直観システムと推論システムがあるという説である。なお、このシステムには様々な呼び名があり、本書に従っている。直観システムは経験や慣習に基づいて直観的に素早く判断を下すが、間違いも多く、間違いには認知バイアスに基づく一定のパターンがある。推論システムは言語的・意識的な推論になり、直観システムと比較して間違いは少ないものの、時間や労力を必要とする。本書は二重過程理論やその他の最新の知見に基づき、人間本性や環境を分析したものである。あとがきによれば、これらの知見はビジネス書にを通じて世間の浸透しつつある一般的な言説になるという。非常に面白く、皆に読んで欲しい一冊である。

新海誠監督の「すずめの戸締まり」をようやく観た。一見した感想は過去の作品をアップグレードした良い作品である。一方、東日本大震災を扱った作品になることやダイジンの解釈等によって評価が分かれるとも思った。

こちらのブログ記事「mRNAワクチンを接種した人全員に読んでもらいたい、ワクチン開発の奮闘を描き出す一気読み必至のノンフィクション──『mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来』 - 基本読書」を読み、年末年始に掛けて「mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来」を読んだ。確かにコロナウイルスワクチンを打った人全てに読んで欲しい一冊である。驚いたのは、ビオンテックの創業者で医師の夫婦であるエズレム=チュレジとウール=シャヒンは2020年1月の新型コロナウイルスの報道確認直後に、統計学から世界的な流行を導き出し、長年の研究で得たmRNAワクチンの技術が使用可能と判断し、新型コロナウイルスのワクチン開発を決定していたということである、本書でも指摘されているが、2020年1月において、新型コロナウイルスの世界的流行を誰もが予測できた訳では無かった。しかし、前掲書の「みんな政治でバカになる」の言葉を借りれば、エズレム=チュレジとウール=シャヒンは推論システムを使用して、自らのすべきことを判断した訳である。本書を読んで、優秀な人々によって自分が生かされていることを実感した。

香山滋「ゴジラ」を読んだ。収録されている主な作品は「ゴジラ」「ゴジラの逆襲」「G作品検討用台本」「獣人雪男」になる。「ゴジラ」は1954年に公開された映画ゴジラのノベライズになる。なお、ノベライズ版は主人公が南吉になっており、原作とは若干異なる内容になっている。また、「G作品検討用台本」は1954年に公開された映画ゴジラの検討用の台本になる。そのため、本書には1954年版「ゴジラ」の決定稿の脚本は収録されていない。なお、竹内博の解説によれば、1954年版「ゴジラ」の決定稿の脚本は三一書房の香山滋全集7巻等に収録されているとのことである。