2022年の読書

2022年の読書は以下の通り。

SFマガジン2021年12月号

スタニスワフ=レム100周年特集号。レムの短編「原子の町」が収録されている。

鈴木智彦『全員死刑:大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記』

死刑囚の獄中手記をヤクザライターの鈴木智彦氏が解説等を加えたもの。解説によれば、獄中手記は死刑中である家族4人の内、次男が金欲しさに執筆したとのことである。しかし、この文章を読んでみると、ネットで見受けられる文章より余程読みやすいということに衝撃を受ける。なお、当たり前のように書かれていることに関して、鈴木氏は淡々と「冷静に考えておかしい事態」だと指摘している。本書を読み、物語は誰にでも書けるものだということを認識した。

鈴木智彦『サカナとヤクザ』

著者が漁業とヤクザの関係を明らかにしたもの。本書によれば、私たちが食べる海産物は何らかの形でヤクザの商売と関わっている可能性があるという。

松尾諭『拾われた男』

役者の著者の自伝的エッセイ。事務所に所属するに至る経緯、『SP』抜擢、結婚、兄との確執等が描かれている。

村井理子『兄の終い』

作家・翻訳家の著者が亡くなった兄のため、死亡に伴う各種手続きを踏みながら、兄との確執やその人生等を考えるエッセイ。思ったより湿っぽさは無い。

兄の終い

兄の終い

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レイ=ブラッドベリ『華氏451度』

SFの古典。

J=R=R=トールキン『ホビットの冒険』

指輪物語を読もうと思い、その前日譚になる本書を読んだ。

J=R=R=トールキン『指輪物語』

本書を読んだ際はApple Booksの電子書籍が確認できたものの、Amazonに電子書籍は無かった。そのため、単行本を買い求めることになった。しかしながら、その後にKindleで発売された。更に2022年10月には訳文の一部を見直した最新版の文庫本と電子書籍が発売された。なお、最新版の追補編やシルマリルの物語は2023年春に刊行予定だという。

筒井康隆『旅のラゴス』

リーダビリティの高いファンタジー小説。本書内での時間的な経過は長いものの、物語自体はトントン拍子に進む。

安田峰俊『境界の民 難民、遺民、抵抗者。国と国の境界線に立つ人々』

著者のルポは基本的に面白い。

稲垣諭『絶滅へようこそ 「終わり」からはじめる哲学入門』

久しぶりに哲学の本を読み、面白いと思った。終章の村上春樹論が特に面白い。

村上春樹『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』『ダンス・ダンス・ダンス』

前傾書の村上春樹論を読み、著者のネズミ三部作、もしくはヒツジ四部作を読み直した。

栗原裕一郎(編著)『村上春樹の100曲』

村上春樹の著作を読んだ後に読むと大変良い。

ジョン=コルベット『フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き』

音楽の聴き方が変わった。今まではブルートゥースのイヤホンで適当に聴き流していたところ、ヘッドホンをパソコンに繋いで聴いている。そして言葉にする。当然、集中力が必要だ。単純に一曲一曲に向き合う根気がいる。聴いた音楽全てにできることではない。気が付くと違うことを考え、楽曲が数曲進んでしまっていることもある。しかしながら、きちんと聴いて言葉にした成果は嬉しいものである。

アイリス=オーウェンス『 アフター・クロード』

国書刊行会のドーキーアーカイヴの一冊。わきまえない女性の言動を面白おかしく読む内に、言動自体は唯の相手ありきのものだと判り、一気に転落していく様子が正に地獄巡り。

ライオネル=ホワイト『気狂いピエロ』

ゴダールの映画「気狂いピエロ」の原作。

ロバート=A=ハイライン『夏への扉』

SFの古典。

ユリア=エブナー『ゴーイング・ダーク 12の過激主義組織潜入ルポ』

現代の地獄巡り。つまり、我々は既に地獄にいる、と言うのは比喩になり、過激主義者たちはカジュアルに人々の支持を取り付ける戦略を取っている。

藤原学思『Qを追う 陰謀論集団の正体』

朝日新聞記者が陰謀論Qアノンを取材した連載を書籍化したもの。

ジョナサン=ゴットシャル『ストーリーが世界を滅ぼす―物語があなたの脳を操作する』

本書は人は物語によって物事を理解する性質がある都合上、物語の影響から抜け出すことができないことを指摘したものである。物語の力が陰謀論を生み出しているのではないのか?そういった疑念を持ち、本書を手に取った次第である。

綿野恵太『みんな政治でバカになる』

脳内には「直観システム」と「推論システム」という異なる認知システムがあり、更に様々なバイアスがあるため、政治的にバカな発言をしてしまうという。本書は吉本隆明や認知科学や進化心理学等を参照した評論である。