高貴な方はニーチェを読まない―『プリーズ、ジーブス 第2巻』

勝田文著、原作P.G.ウッドハウス、『プリーズ、ジーヴス』第2巻を読みました。
お気楽なバーティーと執事ジーヴスのちょっとした騒動を描いたコメディの第2巻が発売されました。
今回はジーヴスとの出会い、「ちょっぴり頭が毛糸でできてる」ビッフェン氏、「ブライトン近郊の女子高事件」のお話が掲載されており、楽しく読みました。
またバーティが才女に好かれやすい体質であるという事に触れられており、

バーティ「僕の脳みそは通常人の半分しかない
逆に2倍くらい持っている女の子はなぜか恋の炎を燃やしながら僕に直進してくるんだ!!」
ジーヴス「種のバランスを維持せんとする大自然の采配かと」

とか何とか。
そこで才女たちを才女たらしめんとする小道具に哲学書が登場し、バーティは横顔が美しいフローレンスという婚約者から知的教育の為に「倫理学の諸形態」と題する本を勧められ嫌々ながら読んでいたりします。
第1巻でもラスキンやら牧師が学生にニコマコス倫理学を朗読するところがちらっと登場しており、「ディティールに(無駄に)こだわる」著者が伺えます(第1巻掲載「BUN IN LONDON」より)。
当時のイギリスで一般教養として哲学が学ばれていたんですね。
さて、そこでジーヴスはバーティーがフローレンスとお似合いでない事を進言してこういいます。

「それにあなた様はお嬢様から頂いた「倫理学の諸形態」をテーブルの上にずっと放置されていらっしゃいます」
「メイドが聞いた話ではお嬢様はこの次はあなた様にニーチェを読ませるおつもりであったと」
「ニーチェでございますぞ!!」

といった具合で、イギリスの伝統格式あるお金持ちにニーチェが嫌われているのが面白いですね。
そういえば、勝田文さんの著者である『あのこにもらった音楽』でもブラームスに関するニーチェの言葉や、それを受けて『ツァラトゥストラかく語りき』を読むシーンなんかがちらっとありました。
尚、第2巻には、原作本『それいけ、ジーヴス』より「フレディーにキスして」と題された小篇が掲載されており、そちらも楽しく読みました。原作は未読なのでそちらの方もいつか確認してみたいです。
ちなみに今回のベストショットは、捨てられた子犬に例えられたバーティーが最高です。
さて勝田文さんは今月は『ちくたくぼんぼん』の2巻も発売されるそうで、勝田ファンには嬉しい歳末になりそうです。