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収容所惑星

読書

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『収容所惑星』を読んだ。

マクシム=カンメラーが活躍する三部作の第一作目であり、異文明接触委員会が登場するNoon Universe〈未来年代記〉シリーズの一つでもある。この未来年代記にあたる他の作品に「神様はつらい」「地獄から来た青年」がある。尚、本書は物語を覆す結末が用意されている作品であり、下記でこれについて触れている事を留意されたい。

  • 惑星を調査する自由調査団はまともな人間がやらない仕事らしい。この仕事に取り組むマクシム=カンメラーは宇宙船が成層圏で隕石と衝突する事故に遭い、放射能に汚染された惑星サラクシに降り立つ。宇宙船を何者かに爆破されたマクシムは惑星の調査に乗り出す。
  • 原住民に捕まったマクシムは憲兵隊に引き渡される。交渉を試みようとするも突如躁状態に陥った憲兵隊たちが特攻隊の歌をがなり暴力を働くのだった。結局病院に収容されるマクシム。権力者である〈遍歴者〉が彼に目を付け監督下に置こうと連行するものの、またも謎の躁状態に陥った原住民たちに巻き込まれ逃げ出す事になる。
  • 最初に知り合った憲兵隊員ガイの元に身を寄せたマクシムは憲兵隊候補生として働くようになる。憲兵隊の仕事は国家転覆を図る奇形人を取り締まる事だった。国は紅蓮創造者なる一部の集団によって支配されミサイル迎撃システムによって守られているのだという。しかし仕事に疑問を持ったマクシムは上官の奇形人殺害命令を拒否し銃弾を浴びるのだった。
  • 原住民とは比較にならない体力と治癒力を持つマクシムは死んでおらず奇形人の元に身を寄せる。ミサイル迎撃システムは国民をコントロールする放射線放出設備であり、奇形人はこれに対応出来ず頭痛等の症状に苦しんでいるのだという。国民の謎の躁状態もこれが原因だったのだ。ミサイル迎撃システムを破壊する事になったマクシムは塔の爆破に成功するが、ほとんど仲間が死んでしまう。
  • 捕まったマクシムは囚人として国境線近くで自動機械の破壊に従事していた。そんな最中、森で大型の頭を持った犬と遭遇する。物語でこれ以上触れられないものの、次巻「蟻塚の中のカブト虫」に登場するビッグ・ヘッド人である。尚、地球人で初めてビッグ・ヘッド人を発見したのはマクシムらしい。
  • 自動機械の戦車を手に入れたマクシムは南の国境線を越えようとする。そこで左遷されたガイと出会い連れて行く事にする。
  • 南で迫害されたミュータントたちの共同体を見つけたマクシム。飛行機を手に入れ海岸線に赴くものの、座礁した潜水艦から殺戮の歴史を知るだけだった。
  • 捕まったマクシムは隣国ホンチの国境線に連れて行かれる。戦争が始まるのだ。放射線移動車に追い立てられた戦車の群れが国境線を越える。マクシムはこれを逃れるものの、混乱の最中にガイは死んでしまう。
  • 〈遍歴者〉の計らいのもと研究員になったマクシムは地下組織を先導し、保身を図る国家検事の協力のもと放射線コントロール設備を爆破する事に成功する。遂に〈遍歴者〉を名乗る男と相対するものの、彼が発したのはドイツ語の罵倒だった。
  • 〈遍歴者〉の正体は銀河系保安局の職員であり、惑星を救済する為に国家中枢に入り込んでいた。マクシムはそれを知らずに行動し「あらゆる結果を考慮した準備」を破壊してしまったのだ。放射線設備もまた隣国からの侵攻を食い止める手段だったという。
  • 〈遍歴者〉を名乗る男はルドルフ=シコルスキーであり次巻ではマクシムの上司、通称閣下として登場する。本書では惑星サラクシの進歩官〈プログレッサー〉だったという事だろう。
  • 進歩官〈プログレッサー〉の役割は「神様はつらい」や「地獄から来た青年」の通り、発展途上の惑星で情報収集及び干渉するものである。更にここでシコルスキーが〈遍歴者〉を名乗っているが、高度な地球文明を凌駕する更に高度な文明の呼び名をあやかったものであり、続刊で言及される。
  • 物語の終わり、マクシムは〈遍歴者〉であるルドルフ=シコルスキーに今までの準備を破壊した事を非難されるなか辛うじて「ぼくが生きているあいだは、どんなことがあっても、けっして(放射線放出)センターを建てるようなことはさせない。たとえその意図が善意からでたものであっても……」と応えるのだった。

本表紙が古臭いものの強烈な印象を与える。結末は知らなかったのだが、よくよく考えてみると異文明接触委員会が登場する事が分かれば察しがついたかもしれない。ストルガツキー兄弟の作品で娯楽的な結末―但し苦渋に満ちている―が用意されているとは思ってもみなかった。

収容所惑星 (ハヤカワ文庫SF)

収容所惑星 (ハヤカワ文庫SF)