インターステラー

クリストファー=ノーラン監督作品『インターステラー』を観た。

広がるトウモロコシ畑、主を失ったドローン。地球規模の異常気象に為す術も無い人類は、軍隊を解体し、教育を諦め、科学技術を放棄、衰退の一途を辿っている。ある時、元宇宙飛行士のトウモロコシ畑農場を営む男性は、娘が発見した本棚のポルターガイスト現象が意図的なメッセージである事が気がつく。メッセージが示した座標軸に辿り着くと拘束されてしまうものの、その場所は解体されたNASAの秘密基地だった。NASAでは発見されたワームホールを利用し人類を他の惑星に移住させる計画が進行していた。既に三人の科学者がワームホールを通過、居住可能の信号を地球に送っているという。かつての仕事仲間から計画に参加するよう促される男性。しかしいつ帰れるとも判らない計画に娘は意固地に反対し納得を得られない。必ず帰ると約束した男性は計画に合流、宇宙に飛び立つ。ワームホールを通過後、最初に選定した水の惑星では先に着いた飛行船の残骸のみ発見、突如襲った津波により仲間を失う。強い重力場によるウラシマ効果は娘との再会の約束、ひいては人類の滅亡に間に合わないかも知れない。男性と科学者たちは焦燥感を抱く。地球から都度送られる過去からのメッセージで息子が家族を持ち、子どもを生んだ事を報告している。しかし娘は頑固に姿を現さない。既に成人しNASA相対性理論と重力について研究しているという。しかし地球時間の長い経過により遂に娘はメッセージに姿を現し、最後にはこの計画は地球人類を放棄する意図だったと計画立案者が死の間際に漏らしたと涙ながら父を非難する。計画の心労と科学者たちの思惑が入り乱れるなか第二の惑星を選定。氷に包まれた惑星で飛行船に眠る科学者が発見される。科学者は地下に水が流れるこの惑星は開拓の余地があるという。しかし彼は地球への帰還の為に暴走、男性に襲い掛かり、飛行船の記録を読み込もうとする科学者ごと爆破、男性が止めようとするも宇宙船へのドッキングを試み暗闇に四散する。仲間を失い燃料が尽き傷ついた宇宙船。最後に残された男性と女性科学者は最後の惑星を目指す。しかし男性は自ら宇宙船を切り離し、女性科学者を最後の惑星への軌道に送った後、ブラックホールへ突入。するとそこは自宅の本棚裏の五次元空間、男性はワームホールの未知と接触を果たしたのだった。人口知能の力を借り本棚の表、過去の娘に信号を送る男性。気がつけば男性は宇宙に放り出されていた。そこに現れたのは宇宙に進出した人類。病室のベッドで目覚める男性。窓の外に見えるのは娘の名を冠した大通りだという。娘の新理論の発見により人類は地球からスペースコロニーへ脱出していた。父との約束を果たす為に長い眠りを繰り返していた娘はベッドの上で何人もの子どもたちに囲まれている。娘は父に対して女性科学者が待っていると告げ息を引き取る。男性はその言葉を受け人口知能と共に女性科学者の元へ飛行船で飛び立つのだった。

特に予備知識も無く仕事帰りに映画館に赴いた為、宇宙を題材にした内容にも関わらず、冒頭スクリーンに写ったトウモロコシ畑には意外性を感じた。地球は愛着を持てない過酷な環境であり、新理論発見後のスペースコロニー内は牧歌的で穏やかな場所として描写される。同じ宇宙を題材にしていていも「ゼロ・グラビティ」とは方向性が全く違っており地球は帰る場所と示されない。アメリカ的な開拓精神が反映されているのだろうか。宇宙船はどこか脆そうでくたびれた雰囲気があり、スタイリッシュなのは惑星探査用の小型宇宙船と「2001年宇宙の旅」のモノリスHAL9000のオマージュであろう可変型モノリスの人口知能ロボットTARSとCASEである。この二体のロボットのユニークな動きと会話が楽しかった。美しかったのは、本棚裏の色彩豊かな光が眩く錯綜する五次元空間だ。この空間が、あらゆる可能性を孕み何も為せない事はその美しさと本棚の裏であったという事実が明白に語っている。何より本作の素晴らしさは、宇宙旅行がもたらす各種設定を父と娘の約束の間に巧妙に織り込んだ事だろう。自分だけ年を取らず、子どもたちが瞬く間に老けていくのを見るのはどんな気持ちがするのだろう。
非常に見応えのある映画だった。但しこうやって平易に語れてしまうところに単純過ぎる嫌いがあるような気もする。