仮面の告白/マチネの終わりに

三島由紀夫の「仮面の告白」を読み進めようと試みるものの上手くいかない。しかし、最初から2~3度読み返したところ、ようやく判るところが増えてくる。脚注があるものの、教養が無いため比喩を理解できない。とはいえ、そろそろ意欲が湧き始め、先に読み進めることができそうだという手応えを持っている。
そんななか、全く活字に触れないのも気分が良くないため、リハビリで平野啓一郎の「マチネの終わりに」を再読した。何度目の再読かわからない。しかしながら、自分の年齢が登場人物に近しくなり、共感するところも増えた。本作には《ヴェニスに死す》症候群という言葉がある。その定義は「中高年になって突然、現実社会への適応に嫌気が差して、本来の自分へと立ち返るべく、破滅的な行動に出ること」である。いわゆる中年の危機を本作の登場人物の行動に落とし込んだ言葉である。さて、ここで先程、三島の比喩を教養が無いため判らないと言った。しかしながら、「ヴェニスに死す」を読んだことの無い私は本作においてそれを苦にしていない(なお、作中にヴェニスに死すのあらすじは説明される)。結局、教養の無さといったものが必ずしも読書に弊害をもたらす訳では無いのだ。