タイタンの妖女

カート=ヴォネガット=ジュニア著、浅倉久志訳『タイタンの妖女』を読んだ。

訳者の新装版の刊行に寄せてにでも触られているが、10年以上前に爆笑問題の太田光が本書をテレビ番組で勧めていた。おそらくこれが本書を読んだきっかけになる。このタイミングで読んだ理由はKindleでセールされていたからだ。過去に著者のスラップスティックを読んでいるようだが意味の無い感想しか残っていなかった。なお、私は著者をSF作家として認識していたものの、訳者の解説によれば、戦争小説である「スローターハウス5」を以てアメリカ文学の代表的な作家として知られているとのことである。

本書は滑稽小説や風刺小説になるのだろう、登場人物たちは割と適当な設定で訳も判らず地球、月、火星、時間等曲率漏斗(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)を行き来する。そして、最後に登場人物たちの運命を左右した理由が明かされる。なお、爆笑問題の太田光は本書を勧めるにあたり、この理由を概ね説明していた。そのため、その理由が明かされた時に驚きや新鮮さは無く、若干興が削がれた気がする。おそらく、知らない方がそれなりに楽しると思うのでここでは詳細に触れない。

本書の適当な設定を読み進めるのは苦痛ではあった。しかし、その適当な設定も、本書の最後に示される理由に鑑みると、ある目的を達成するための急ごしらえのものと捉えれば、本書が滑稽小説に落ち着くことも理解できる。災害や戦争の実態を調べた時、その悲惨さと比較して浅薄で安易な判断が幾度も決定されていることに、悲劇性よりも喜劇性を見出すのはよくあることだ。