2020年3月17日/令和2年の水曜日

長野県での仕事を終え、予定通り直帰することにした。帰りに一度行ったジャズ喫茶に寄ることにしたが、最寄駅の路線である西武新宿線が人身事故で停まっていることを知る。
新宿でミッドサマーでも観るべきかと上映時間を確認するとディレクターズカット版まで上映されていた。ディレクターズカット版を観るべきか等と考えていると制服姿の高校生と私服の中学生が電車に乗り込んで来た。イヤフォン越しに会話が聴こえ、ふと、その中の1人と目が合った。何の感慨も無さそうな目にも関わらず、私はそこに憐れみを読み取れそうな気がした。一方で私も若さ故の奢りに苦虫を潰しつつも羨望の眼差しを送っているのではないかと思われた。

中学生の前の座席が空き、互い互いに席を譲り合っている。池袋駅に到着すると空いた座席に中学生たちが座り、目が合った高校生が「座れねえのかよ」とぼやく。スマートフォンの中では半年間鍛え上げられた戦士たちが戦いに明け暮れている。よく見ると私と同じように電車に乗ってゲームを起動させている人がいるらしい。強敵を倒した彼が表彰台に登るのを2回見ることになった。

高田馬場駅を過ぎる。

新宿駅で中央線に乗り換え、中野駅を目指すなか、会社の携帯電話が鳴る。携帯電話を見ると客先からだった。今日何度も電話を掛けているが、担当者と未だに話すことができていない。鳴り続ける携帯電話を片手にうんざりする。中野駅で電車を降り、電話をかけ直したところ、やはりうんざりする内容だった。

溜め息をつきながら喫茶店を目指す。気分を変えようと思う。音楽を聴けば気分が変わる。気分が変わっても明日に待ち受ける現実が変わる訳では無いことは判っている。