『ガメラ 大怪獣空中決戦』『ガメラ2 レギオン襲来』『ガメラ3 邪神覚醒』

金子修介(本編)、樋口真嗣(特撮)監督作品『ガメラ 大怪獣空中決戦』、『ガメラ2 レギオン襲来』、『ガメラ3 邪神覚醒』を観た。
アメリカ版ゴジラに向けた一連のゴジラ映画観賞の後、平成ガメラシリーズを観た。アメリカ版ゴジラがかなり平成ガメラシリーズを参考にしている事が伺え、今となって良いタイミングだったと思う。ガメラ映画は劇場で観たのは一作のみ。昭和ガメラシリーズを含め全作をテレビで観ているものの、小学生の頃の話なので記憶は朧気である。

  • 『ガメラ 大怪獣空中決戦』

超古代文明の遺伝子工学の産物ギャオス。同じく古代文明の生物兵器ガメラの戦いを描く平成ガメラシリーズ第一作。群体で登場するギャオスは怪獣と言うより外国製B級映画に出てくるクリーチャーに見えるが、成長していく事によって怪獣として完成し、折れた東京タワーの上での鋭角なシルエットはとても美しい。
ガメラは海洋を彷徨う岩礁として発見されるが、これをいち早く察知するのは保険会社だというのは面白い。保険会社は海上保険に於いて事故を特定しなければならないのである。
ヒロインの鳥類学者は中山忍が演じている。中山忍について深く感じた事は無かったが、この女優は姉である中山美穂と違って「たまたま美しかった」とでも言うような自然さがある。それ故に鳥類学者が板に就いている。あと割とガメラにシンクロする少女を演じる藤谷文子の出番は少ない。

  • 『ガメラ2 レギオン襲来』

本作は唯一劇場で観賞。おそらく平成ガメラシリーズで一番ファンに愛されている作品なのでは無いだろうか?レギオンが放つ光線から上がる爆炎、ガメラの火球三連射。名シークエンスが言わずと知られている。レギオンは聖書通りの群体、SFファンも首肯する種を宇宙に放つため爆発を起こす草体に別れている。レギオンの造形は昭和ガメラの敵怪獣の系譜を受け継いでいる節が、実際昆虫らしく節もある。ガメラ最後の必殺技ウルティメイト・プラズマには度肝を抜かれたが、なるほど生物兵器ならそうあるべき。ウルティメイト・プラズマを放った結果、地球上の「マナ」エネルギーを著しく消費したため地球環境に異変が発生、続編では地球上にギャオスが大量に発生する。
本作のヒロインは学芸員役の水野美紀。自衛隊員とナードなエンジニアを相手に一歩も引かない演技を見せている。お約束の怪獣レイプ要員は札幌地下鉄の運転手役田口トモロフ。良い死に様を見せてくれる。

  • 『ガメラ3 邪神覚醒』

キャッチコピー「わたしはガメラを許さない。」が知られた作品。正義の怪獣が街で暴れたら人死にが出るよねという疑問に挑んだ意欲作。前作のSF設定から村の言い伝えに始まるスピリチュアル+コンピュータの世界に足を踏み入れた結果、作品から滲み出すのはちょっとしたB級感。怪獣映画にはSF設定が似合う。
敵怪獣はギャオスの亜種イリス。こいつがヌメヌメして気色悪い上、まだ十六歳だった前田愛を取り込んでローション塗れにする。今思えばU20タレントのイメージビデオの過激化に警鐘を鳴らしていたのかもしれない(嘘)。またイリスは獲物の体液を吸ってミイラ化させるのだが、この怪獣レイプ要員にはなんと仲間由紀恵が登場。女性キャンパーとして林で男と戯れているところを襲われミイラになるという、型通りの大役を務めている。
夜の京都を襲うイリスの白い影は美しく、ガメラや陸上自衛隊との空中戦は雲の表情を豊かに描く。最終決戦は京都駅構内、動きに欠けるものの怪獣映画史上初の屋内戦であり、そうだ、京都駅に行こうな感じになる。実際、京都駅は天井とか階段とか本当に格好良いというのが実地の感想である。
前田愛が渾身の演技を見せているが上述の通りローション塗れにされたり酷い仕打ちである。彼女も今や歌舞伎俳優の美しい奥様、子どもも二人おり、長男は舞台デビュー済みなのだから時の経過とは残酷なものである。完結作とあり鳥類学者も登場。物語の結末を見送る。