『GODZILLA ゴジラ』(2014年アメリカ版)

ギャレス=エドワーズ監督作品『GODZILLA ゴジラ』を観た。
ゴジラの過去作品文芸批評まで読んで本作を観賞した*1。そしていざ本作をと思えば、もう語り終えたような気がしている。
本作は、原子炉の倒壊とその後の立入禁止区域、ゴジラ到来により発生する津波といった、多少誇大かもしれないものの、日本が経験し継続している、描き難い事態を、ゴジラを含めて、描いた。そのように考えると、川本三郎、赤坂憲雄、加藤典洋が、ゴジラを第二次世界大戦で命を落とした日本兵たちであるとし、これを採用した『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』は同じ理由で再評価出来るかもしれない。
以下、本作の概要をまとめる。

放射能濃度の高かったペルム紀の巨大生物。ペルム紀の大量絶滅と放射能濃度の低下を地中に逃れていた。しかし第二次世界大戦後、核実験で地球の放射能濃度が上昇、生存可能になった地表に姿を現した。アメリカ、ソ連は核実験に偽装してゴジラを殲滅しようとするも倒す事が出来なかった。本作に登場するゴジラ第二次世界大戦後に姿を現した一体のみ。同族も地中に複数逃れていたようで、後に説明するムトーに寄生されたゴジラの亡骸が登場する。体内に原子炉を持ち青い放射能火炎を吐く。この際のエフェクトは登場シーンの咆哮と合わせて逸品である。尚、本作に於いてゴジラが姿を現すのは劇中中盤以降であり、焦らされ続ける。
日本版初代ゴジラ第五福竜丸事件を端に発しており、戦後の核実験が本作に於いてアメリカ側の弁解となっているものの、第二次世界大戦後の放射能濃度上昇を釈明しないのは本作の脚本が日本版ゴジラを研究した成果か?また今回のゴジラの目的は天敵であるムトーを倒す事であり、核攻撃をされた人類には興味を示さない。人類を歯牙に掛けず、自らの目的を果たす為に戦う姿勢は、地球の生態系維持を目的とする平成ガメラを思い出させる。

  • ムトー

ゴジラと同じペルム紀の巨大生物。小柄で飛翔可能な雄、大柄の雌の二体が登場。放射線を動力とし、体内に原子炉を持つゴジラに寄生し産卵する習性を持つ。しかし第二次世界大戦後、核兵器及び原子炉に代替物として寄生する。電磁パルスを発するため電子機器を使用不能にし人類の軍事力を封じ込める。劇中、日本の倒壊した原子炉から姿を現すのが雄。ゴジラに寄生し放射性廃棄物処分場に移された繭から雌が登場。

本作でゴジラやムトーの謎を追う芹沢猪四郎博士が所属する研究機関。ゴジラを研究し、一般市民から存在を隠蔽する事を目的とする。1999年、フィリピンでゴジラの亡骸と共にムトーの繭を発見する。尚、この繭が放射性廃棄物処分場に移されたムトーの雌の繭であり、その場所から既に這い出たのは、日本の原子力発電所を倒壊させたムトーの雄となる。

  • あらすじ

日本の原子力発電所で働く夫婦とその子どもフォード。しかし原子力発電所は謎の倒壊を果たす。
それから数年後、フォードは軍人となり、家族を持つに至る。しかし軍務から戻った直後、日本で父が捕まったという連絡が入る。父に呆れながらも家族を大切するよう説く妻の説得で日本に向かう。父は妻を奪った原子力発電所倒壊の謎を究明する為、立入禁止区域に侵入したのだ。父に呆れながらも再度立入禁止区域に侵入するも、またもや捕まり原子力発電所跡地のモナーク研究所に輸送される。研究所では謎の繭が監視された状況にあり、二人が到着した直後、繭は孵化、ムトーが研究施設を破壊、これに巻き込まれ父が負傷し死に至る。
モナークは軍傘下に入り、フォードは父の情報を交換した後、芹沢よりモナークとゴジラの存在を知らされる。その後、ムトーはホノルルに上陸、これを追いゴジラも海中から登場、ムトーの電磁波パルスはホノルルを停電状態に陥らせ、ゴジラの出現は沿岸に津波を発生させ街を飲み込む。二体は交戦後、ホノルルを離脱する。他方、アメリカユッカマウンテン核廃棄物処分場に廃棄された繭が孵化、もう一体のムトーが出現する。
芹沢はフォードの父の研究から二体のムトーが産卵の為に接触するであろう事を突き止め、天敵を仕留めるためゴジラもまた姿を現すと予測する。軍は三体が接触するであろうサンフランシスコにてアナログ式時限爆弾型の核兵器の使用を決める。しかし列車による輸送途中にムトーに核兵器一基を捕食されてしまう。またサンフランシスコ湾内に運び込んだ核兵器は時限装置起動後、ムトーに奪われてしまう。
ゴジラは海を割りサンフランシスコに上陸。一方、軍は核兵器奪還の為、空から降下作戦を実行する。煙に包まれた市街地の中、格闘を繰り広げるゴジラとムトーを横目にフォードは核兵器を湾外の運び込む作業に入る。フォードは核兵器をムトーの巣に発見するも、ムトーの卵が活発化している事に気がつく。巣を爆破したフォードはムトーに追い詰められ、ムトーの注意が外れたゴジラ放射能火炎でこれを攻撃、フォードは難を逃れる。その後、ゴジラは雄のムトーを尻尾で叩きつけ倒壊したビルと共に瓦礫に埋もれる。港に移動させた核兵器を狙うムトーに攻撃する軍は一方的に嬲られるものの、その隙をついてフォードは湾外に核兵器を運び込む準備を始める。フォードに迫るムトーの隙をついたゴジラはありったけの放射能火炎をムトーの体内に浴びせこれを破壊、自らも咆哮の後、倒れるのだった。
フォードは爆発迫る核兵器を自らと共に湾外へ出た後、ヘリに救助される。翌日、避難所で家族と再会するフォード。ゴジラ瓦礫から目覚め、太平洋に還っていく。テレビ中継の字幕には「The King Of Monsters」のテロップが映し出される。

あらすじでは触れていないが本作では家族愛がテーマとなる。その為フォードの生還は物語の要請ではあるものの、核兵器湾外の持ち出し作戦の印象が薄まっている。とはいえ核兵器奪還の降下作戦から、兵士たちが煙に包まれた街でゴジラとムトーの戦い仰ぐ視線こそ本作の見せ場である。
よく考えるとムトーの繭と卵の区別がよく判らない。移動と寄生による繭化を繰り返し雌と雄で産卵するというサイクルで生きている種族なのだろうか?あと改めて見ると雄のデザインがギャオスを彷彿とさせてますますガメラっぽい。
ホノルルに於ける二体のアクションシーンは災害的であり、サンフランシスコに於ける三体のアクションシーンは怪獣的・娯楽的破壊と言える。
ラストのテレビ中継によるテロップ「The King Of Monsters」は初代ゴジラのアメリカ版の題名を由来にする。尚、このアメリカ版は日本版とは異なり、アメリカ特派員による報告という体裁を取っている。私達が親しんだ初代ゴジラとアメリカ人が親しんだ初代ゴジラが異なっている事に留意したい。とはいえ、ゴジラを太平洋に還らせたのは日本版ゴジラの研究の大成果と言える。そこは過去に目を向ければ第二次世界大戦の主戦場であり、核兵器の実験場である*2。そういえばこのゴジラはソナーが検知して存在が明らかになったというのだが、太平洋で発見されたのだろうか?
以上の通り、基本的に本作を楽しんで観た。ゴジラ映画として観たのかと問われれば、おそらく私は観たのだと思う。

GODZILLA ゴジラ[2014] DVD2枚組

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