2014年3月22日

友人たちとSkypeで遅くまで話していたからだろうか?眠る事が出来なかった。昼に寝てしまったからだろう。暗闇の中で天井を見上げる。とりとめのない考えが浮かんでは消えていく。どのくらい時間が経っただろう、諦めて部屋の電気を点け、本を手に取る。コーマック=マッカーシー著「血と暴力の国」、物語は佳境を迎えていた。麻薬取引に用意された、自分の人生が凝縮された億の金が入ったアタッシュケースをくすねた男は、ドライブインのモーテルで十五歳の家出娘と共に、メキシコ人に撃たれて死んだ。保安官は彼の死体を確認し彼の妻に事実を伝え罵倒されている。物語はまだ続く。

気がつけば電気を点けたまま寝ていた。夢を見たが今になっては思い出せない。本を横に置き電気を消し目をつむった。鳥の鳴き声が朝がそこまで来ている事を教えてくれる。

何処かでダンボールを紐で纏めて得意になっている。そんな夢を見た。布団から出て雨戸を開け、洗濯機を回す。切れた煙草と遅い朝食を買いに出掛ける。家に戻りバックされた煮豚を温める。思ったより甘い味付けにうんざりする。食べ慣れた味付けと他人の味付けの違いは、常に衝撃を受ける。

買い物がてら散歩に出掛ける。ジムに通うようになり、公園や川沿いに久しく行っていない。風も無く陽が暖かい。公園のベンチに座り陽を浴びる。鼻のむずつきや目のかゆみも無い。小さな子どもを連れた母親がトラックの中で遊んでいる。母親は懸命にスマートフォンで子どもの姿を捉えようとしている。微笑ましい光景を視界の端に捉えながらスマートフォンを覗き込む。

川沿いを歩く。梅や桜が花開いている。耳許ではフジファブリックがヴォーカルを変えながら唄っている。ヴォーカルが何年か前の年末に亡くなったもののメンバーたちが活動を再開させた。野球場の少年野球、グラウンドでミニゲームを繰り広げる小学生の姿は、陽を浴びて眩しく正視出来ない。

海猫沢めろん著「頑張って生きるのが嫌な人のための本」、とても優しい本だったが、既にレールの上から降りた気分でいる俺はあまり必要としていなかったのかもしれない。とはいえ人は欲深い。必要とすべき時が来るのかもしれない。この気分を歳上の友人たちにすると「まだまだ」という返事が返ってくる。一体何が「まだ」なのか?チャンスはどこから転がってくるかわからない?だとしたら拾う準備が必要だ。何より、目の前に転がったものは無視してしまうのに、新鮮に動いているものばかり、猫みたいに追ってしまっている。

一時間程歩いただろうか?公園の芝生の上を歩く。一本の梅の木の元で少女たちが集まっている。腰掛けでは男女がバドミントンのラケット片手に笑っている。スーパーに寄って帰ろうと、川沿いの遊歩道を離れる。

スーパーでアメリカ産の豚肉を一ブロック買う。朝の煮豚の味に落胆させられた。蒸した豚肉にシンプルに醤油で味付けし夕飯とする事にした。豚肉を一口大に切り、輪切りにした生姜を載せていく。高校に自宅が養豚場だという同級生がいた。彼は「朝の豚の鳴き声で起きるんだ、最悪だよ。」と自嘲していた。しかし、彼は一年間の浪人生活の後、北海道の畜産系大学に進学した。彼の父親は獣医師免許を持っていたというから、どこかで実家を継ぐ事を決めたのだろう。順調に行けば既に彼は獣医師の資格を手に入れているはずだ。お湯を沸騰させ鍋に豚肉を並べた皿を置く。炊飯器のスイッチを入れ、お湯の加減を見る。聖書、レギオンが登場する一節を思い出す。家畜の群れに取り付いた悪霊たちはイエスを前に自ら谷底に落ちていく。完全なる統合された一人格イエス。他方、悪霊は一体に複数の悪霊が入り乱れ統合されず、また家畜の群れとなって姿を表す。これは完全な一者である神との優劣を表しているのだろうか。一度蒸した豚肉の脂を抜き、醤油に漬ける。クッキングペーパーの上で白く固まった脂。ウィリアム=ゴールディング著「蝿の王」、無人島に漂着した少年たちは肉と脂を欲する。殺し合いを目前にして少年の一人は蝿舞う豚の祭壇を前にベルゼブブなる悪霊を幻視する。もう一度沸騰させた鍋で再度豚肉を蒸す。温め終えれば調理は終わりである。

脂を抜いた豚肉にも関わらず、食べれば頭痛が起きた。食事を終えぼんやりと「日常」というアニメを観た。TumblrGif動画で見掛ける事の多かった作品を選んだ。高校生を題材にした四コマ漫画が原作らしいのだが、二十話からシュールなギャグが潜まり、大袈裟なリアクション芸が繰り広げられる展開になった。俺は単純なのて二十話以降の展開に笑っている事が多かった。