町田康著『パンク侍、斬られて候』を読んだ。
前回、町田康の『告白』という作品について書いた。
今回、この『パンク侍、斬られて候』を読んだのはこの作品が単行本化されてから気になっていたから。気になってはいたが、あっという間に時間がたって、文庫化されてた。書店で見かけて、文庫化されたのを知ったが、あっという間に時間がたって、『告白』が文庫化されて適当に読んだりしていたら、そういえば『パンク侍、斬られて候』を読んでないなぁと思って、まぁ本屋に置いてあったら買おうかなとか思って、暇な時渋谷駅前の文教堂で見つけたから買って読んでみた。この作品は『告白』より前に発表されていた。
題名通り、侍が出てくる時代小説である。ただし藤沢周平の時代小説とは当たり前だが根本的に違う。だって町田康だから。出てくる侍はもう肥大化した自我にあっぷあっぷしているし饒舌に語る語る語る。畜生まで語る。そして語りに語り尽くして、『告白』同様、言葉の向こう側、荒野にいたるのである。
思ったのだが、この饒舌に語る登場人物はつまり加藤典洋がいう想いと「言葉」に間にレベル差がないこと、ではないのだろうか。これによって町田康の作品には「生の一回性」なるものが生まれるのではないか。*1
とはいえ、町田は暴力も描くし、「私」も描く。「文藝」夏季号で高橋源一郎と斉藤美奈子の対談をさらっと読んだが、今の小説には「私」がない、らしい。彼らは舞城王太郎や平野啓一郎*2などを例にそういっていた。そういう小説の登場が、東浩紀のいう自然主義的読解から環境的読解への移動につながっていくのか…。
- 作者: 町田康
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/10/01
- メディア: 文庫
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