ブコウスキーの酔いどれ紀行

チャールズ=ブコウスキー著『ブコウスキーの酔いどれ紀行』を読んだ。
ブコウスキーが故国であるドイツに赴き、そこでの出来事について語る。これはそういう紀行文である。
ただし、ドイツであってもブコウスキーは小説の時と同じように酒を飲み、煙草を吸い、挑発し、朗読会で金を稼ぐ、彼女に振り回される、というような内容であり、本当にいつも通り、飾ったところは(たぶん)無い。だから面白い。
しかし如何せんどうも内容は頭に残っていない。文章と共に用意された何点もの写真には、恰幅の良い老人がニヤニヤしながら、時に厳しい顔が写っている。
印象に残っているのは、朗読会にビビるブコウスキーの姿だ。アメリカを放浪して、放言し、小説の中でさんざんな事をしてきた人間が、だからこそなのか、金になるからと自分に言い聞かせる姿はブコウスキーも普通のおっさんなのだなと思わせてくれる。普通のおっさんがいつも通り、酒屋で格好つけなかったら面白いに決まっているが、普通のおっさんは概して酒屋で格好つけるから話にならない。だからこの紀行文は面白い。
文庫版解説は町田康、パンク。


ブコウスキーの酔いどれ紀行 (河出文庫)

ブコウスキーの酔いどれ紀行 (河出文庫)