風立ちぬ

堀辰雄著『風立ちぬ』を読んだ。
本書を読んだのは宮﨑駿が本作に着想を得て制作した同名の映画の影響だ。実際どのような作品なのか興味を持ったのである。
読んでみると「お前は…」と婚約者の問い掛けから始まり高原の風景描写が続き、また婚約者の結核の病状も悪化していく。他方、二人の心境も静謐な風景と共に深化を見せ至福の境地を迎える。死を前にした二人が幸福に至れるものだろうか?そんな疑いを持って読み進めれば「二人が出会い、結核を抱え、それ故に高原に赴き、死を前にして、その風景と共に二人だけの時間を過ごした。」という一回性が強調されてしまう。しかしその内実は、死と幸福への進行の矛盾した渦中に思い至る萌芽であり、反省的なものでは無い。
上記を踏まえた上で、宮崎駿による同名の映画を省みた時、本書の精神性は削ぐ事無く描いたのだと思う。

風立ちぬ

風立ちぬ