2014年4月14日

知らぬ間に業務委託先の駐在員になっていた。しかし、ほとんどの人が駐在員で皆アドバイスをしてくれる。判った事があればノートに記載して欲しいとノートが掛けられた商品棚を教えて貰う。気がつくと小学校の教室になっていた。歴史検定の試験を受ける同級生の女子と男子が、他の同級生の悪口を言って笑っている。悪口を言われている同級生に聴こえているか判らない。ああはなりたくない、歴史検定なんて無意味だと俺は思う。

曇天。少し肌寒い。昨日の様子だと花粉は平気だろうが念の為マスクを着ける。ショパンピアノ曲、向かいから歩いてくる中学生たちはキャリーバッグを引き、大きなリュックを背負っている。遠足でもあるのだろう。紺色のジャケット、胸元には差し色のピンクのシャツ、そんな彼女は大通りから小道へ曲がる。駅前の蕎麦屋のシャッターが開く。車内、スマートフォンに開いた写真を見せ笑い合うスーツの会社員たち。堀北真希が英語の勉強に取り組んでいる映像が浮かぶ乗換駅のホーム。彼女は上司に連れられ客先で謝罪し築地へ行き、彼氏に振られ原宿で友人に励まされ、祖母と歌舞伎座に行き、甥っ子と西日暮里で童心を取り戻し、大手町で英語の学習に取り組む。満員電車、いつもは降りない駅で下車し電車を待つはめになる。駅では学生の姿を多く見つける。今日から講義が始まるのだ。フランク=ザッパのMr.Green Of Sonが流れた後、再びショパンの小犬のワルツ、ベイシックチャンネルのエンフォースメント、耳許が落ち着く事は無い。

ブコウスキーが毎日パンツを履き替え続けなければならないと嘆いていたが、俺の場合は洗剤やシャンプーの詰替をしている時、ふと我に帰ってしまう。シャンプーを使い切る為に握力を容器にこめたり、詰替用のシャンプーの袋の切れ端の置場を考えたりしている時、自分は一体何の為に生きているのかと思う。

水性ペンの蓋を開けたまま作業していたら腕がピンク色に染まった。洗面所で腕を洗いデスクに戻る。「落ちました?」水性ペンだからね。「桜は散るの早いですからね」「儚いね」同僚たちの深妙に言い回しに思わず吹き出す。

手持ちの仕事を手放せたので定時で事務所を出る。担当部署が変わり、上司に仕事の配分の主導権が握られている。今日のような日は貴重だ。とはいえ以前の職場に比べれば残業したとしても大した時間にならない。今の職場の唯一の利点である。

ラコステのCMが電車の中で流れる。空になった頭でぼんやりと見つめる。どこかの喫茶店だろうか、男と女が座っている。男の心象風景、男はビルの屋上から飛ぼうと走る。女の腕に手を伸ばし、立ちあがる。男はビルから跳躍する。額と額がぶつかる。女は口づけを促し、唇が重なる。姉の婚約者と会った父親はその日の夜電話を掛けてきた。「お前はそういった話はないのか」会話に差し込まれる核心。そういった話はない。特に出会いの場に出掛ける事も無い。正直に応える。「そうか、無いのか」会話は次の話題へ。実際問題本当に女性と付き合いたいのかと突き詰めれば、何とも曖昧な答えしか出てこない。突き詰めれば必要無いという答えが導かれてしまうかもしれない。これこそで適当で良い事、適当で良い。