2015年5月11日~2015年5月17日

何度か言及したネットで炎上した保守系議員が駅前で挨拶をしている。彼は今回の選挙で得票数を下から数えて二、三番目で当選を果たしている。

ひたすら他人の作った書類の正誤を確認している。

平野啓一郎のマチネの終わりにの連載を読むのが日課となった。こういう楽しみがあるのは一つ救いだ。

友人によれば貝原益軒の養生訓には酒の効能について書かれているという。

赤ワインをコップ半分程飲み、サラダとハムを食べた。酔いがまわって来る。顔が熱くなるのを感じつつ身体に違和感を覚えた。みぞおちや脇腹の筋肉が強張っている。仕方無く横になると内臓が痛み出した。一時的なものだろうと横になるも、痛みが引いていく気配が無い。身動きを取るのも辛くなっていく。アナフィラキシーショック?風邪薬とアルコールの影響?スマートフォンを手繰り寄せ検索窓に「赤ワイン 激痛」と入力すればアルコール筋症なる言葉を発見する。水分とミネラル不足で肝臓がアルコールを分解出来ない為に毒素が身体中に回り筋肉痛のような痛みが生じるという。物は試しだと冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出し口に含む。一瞬楽になったような気がしたものの、痛みがぶり返す。そもそも痛みの原因がアルコールだと判った訳でも無い。知らぬ間にペニスがいきり勃つのが判る。全身にまわった痛みが引く様子は無い。救急車を呼ぶべきか、検索窓に119番を入力しようと試みるも、かな入力のままだった為に星マークの絵文字が表示されている。堪えれば身動きは取れる。救急車を呼ぶには大袈裟だろう。実際呼んだところで病院に直ぐに行ける訳でも無く、救急車の中で待機する事になるのは経験上知っている。幸運な事に総合病院は直ぐ側にある。風邪薬が入ったビニール袋に携帯電話と財布を入れ自宅を出る。肌寒さを感じるには十分な風が吹く。痛みを引きずりながら歩く。すると刺激によるものか、身体が楽になってくる。このまま自宅に引き返そうか、そう考えコンビニに入店するも痛みがぶり返す。やはりどうにもならない。観念してコンビニを出る。病院の敷地内に入るとウインドウ越しにカフェの店員たちが談笑している姿を垣間見る。建物に入り受付に事情を説明すると夜間外来の受付を案内される。まだ歩かなければならないのか、エレベーターでは無く階段を選んだ事に後悔しながら受付に辿り着く。「どういったご用件で」事情を説明すると「連絡入れてから来て下さい」と事務的な口調の男性。「お名前は」説明するのも面倒になり免許証を財布から取り出し見せる。体調を崩した理由を説明すると「酒の飲み過ぎですか」と呆れながら言う。飲み過ぎていないから困っているのだ、しかし細かい事を説明する気力も無く椅子に座る。「かなり待つ事になると思います。先生は先程の急患に付きっ切りなので」「じゃあ、どうすれば良いですかね」椅子の上で悶絶しながら尋ねる。すると奥から看護士に有りがちな落ち着きを見せた女性がビニール袋を渡してくれる。「とりあえず血圧だけ測ろうか」差し出した腕にベルトが巻かれる。機器が出した数値は正常値らしい。「大丈夫、死にはしない」「死なないですか、そうですか」また体調を崩した理由を説明すると「赤ワインか。それは辛そうだね。スボーツドリンクをガブガブ飲んでみて。それでも駄目なら救急車を呼んでいいよ」対応してくれた人々にお礼を言いその場を後にする。しかし痛みを引き受けなければいけない事には変わり無い。コンビニでスボーツドリンクを数本を買い、歩きながら飲み続ける。やっと自宅にたどり着き、スボーツドリンクを飲み続ける。飲み過ぎた為に戻す。胃の中が空になり、アルコールも吐き出せたのか少し楽になる。それでもスポーツドリンクを飲み続ける。そんな事をしていると友人から電話が来る。「金が無くて銀行からお金が引き出せない」思わず笑ってしまう。しかし話していた方が気が紛れる。今回の気紛れの電話には大変助かっている、そう伝えると友人はいつものように話を続ける。「来週まであと四千円で過ごさなくちゃならない」過ごせ無いだろう。「だからPS3を売ろうと思うんだ」なるほど手元の現金を増やす訳だ。「学生の頃は時間があるけどお金が無い。けど今は時間も無いしお金も無いって状況でしょう?」仰る通り。挙句健康まで無くしつつある。その後「ジョジョのゲームが糞ゲーオブザイヤーに選ばれた動画を見る」と言って電話が切れる。当初の痛みより大分マシになったろうとシャワーを浴びる。しかし痛みは痛み、緊張した筋肉は簡単には解けない。布団の中に入り鈍痛を意識しながら眠りを待つ。スポーツドリンクの飲み過ぎで何度も布団とトイレを往復する夜になった。

一度目覚め、身体が汗に濡れているのが判った。

痛みは殆ど無くなった。しかし身体の強張りはまだ残り息をする度に痛む。

喫茶店で勉学に励む若者を見掛ける。俺も勉強したいと思う。

会社の帰りに病院に寄る。「本日○○先生が不在になり××先生が担当医になりますがよろしいですか?」事務員に問題無い事を伝える。簡単に来院の説明をした後、医務室に呼ばれ、中に入ると三十代中頃の女性がデスクの上に腰を下ろしている。「ごめんなさい。状況がいまいち良く判らないのだけど。」昨日の状況を改めて時系列に説明する。デスクに寄り掛かるようにして座る女性医師の胸が机の上に乗る。慌てて視線を別の場所に移す。「煙草を吸うのか」と尋ねられ応えれば「えぇ」と嘆息される。シャツと下着を捲り上げ、汗が浮かぶ身体に聴診器があてられる。「夜間外来で医師の診察を受けていないの?」結局追い返されたのだ。「あなたの年齢でその体型なら肺気胸の可能性は除外したいのでレントゲンを撮りましょう」レントゲン室でシャツを脱ぐ。「はい、息を吸って」レントゲンの写真を眺めながら女性医師は「炎症の跡も無いし穴も無い。大丈夫でしょう。たぶん痛みもこの先引いていくと思う。」という見解を示した。

一週間研修を受ける事になった。ブルーワーカーの研修ではあるが、女性は少数ながらいる。所属先からおそらく大学院卒程度の学力であろう事は察せられる。この職場の面白いところは現場では高卒から高学歴まで入り乱れている事だろう。ちなみに高学歴組からは俺の所属先は勿論馬鹿にされている。馬鹿にされるのは構わないが、依頼した仕事くらい体裁を整えて提出して欲しいものだ。期待はしていないにも関わらず懇切丁寧な文言で素案を送り返している時程馬鹿らしい事は無い。さてそんな研修の最後には試験があり、講師の説明をBGMに試験対策に取り組まなければならない。おかしな事を言っていると思う。しかしこれがビジネスの世界なのだ。

茜色の空につられ寄り道をするも夕陽は街並みに隠れ姿を見せない。

ビルの上から外を眺め煙草を吸う。見知らぬ街並み。下を覗くと慰霊碑の裏で立小便する老人。チャックを閉めた後、石碑を長い間眺めていた。

「この会社の給料なら皆いつ辞めてもおかしく無いと思っていたんですけど」実際今の事務所に辞めた人はいないらしい。「だから、これからって事なんですかね。この事務所が始まってそう長くない訳でしょう」そうかもしれない。しかし後輩がそこまで考えていたとは知らなかった。

ZAZEN BOYSのベース吉田一郎の新譜が良い。

顔を起こせばプロジェクターで映し出された味気無いパワーポイントのアニメーションが動いている。テキストを何度も読み直す作業に没頭する。

自宅までの帰り道、電車の中で眠気に襲われる。

新幹線のチケットの買い方も判らなくなっていた。デスクワークが長過ぎたのか、常識が無いのか、我ながら呆れる。

新幹線から眺める郊外は似たような高層マンションが建ち並ぶつまらない風景だが、あの一室一室に人々の生活があるのだと思った。

ところどころ田園に水が張られ稲が整然と並んでいる。

隣に座った女性の匂いに一瞬包まれるも直ぐに下車して行った。

田園に黄金色の稲が並ぶようになった。

新幹線を降りると構内で今回の主役である義兄、姉夫婦と合流する。どうやら皆軽井沢が初めてらしい。

女性陣は着付けに出向き、父と義兄と甥とホテルのロビーで談笑する。義兄と姉は観光でもしてくれればと軽井沢で結婚式を開く事にしたらしい。しかし観光するにも移動手段も無く金も無い。本当にどうすれば良いのか。

初めて教会形式の結婚式に参加したが牧師の感情表現豊かな言い回しにこそばゆい気分になる。そんな言葉につられていた為か新郎新婦のキスや指輪交換が刺激的だった。内村鑑三記念堂という石の教会で催されたのだが、余り場所の特異性を感じる事は出来なかった。

披露宴を兼ねた家族同士の食事会。場を和ませるのは子どもたち。料理は美味いがアルコールと普段取らない脂に冷汗を流す。

手違いで一人別のコテージに泊まる事になる。若い女性案内人と共にコテージを目指す。適当に「静かですね」と言えば「そうですね」と返ってくる。話を聞けば四月から軽井沢に移り働き始めたという。長く働ければ良いと自分の失敗談を語ってみるものの、余計なお世話この上無いなと思う。

頭痛を紛らわそうとテレビを眺める。全く盛り上がりに欠けるアクション映画に閉口。チャンネルを変えスポーツ番組を眺めて見るものの味気無い。その後音楽番組で玉置浩二とオーケストラの共演を眺めていたが、歌唱と演奏のダイナミズムに心動かされた。

静けさのなか、電化製品が立てる音が気になってしまう。

朝早く目を覚ましてしまう。しかしカーテンから陽が溢れているのが判る。ぼんやりと窓を眺めているとコテージの屋根をリスが駆けて行った。よくよく考えるととても贅沢な時間を過ごしているのでは無いか。しかし何処か腑に落ちない。

朝食をレストランで取る。後ろに座った知ったような素振りを見せる男性に辟易する。静かな場所では物事が明瞭に届いてしまうものらしい。

分不相応な場所にいる。そう考え現実に引き戻されてしまう。布団の上で脈絡も無く適当な事を思い、そしてそれは大体が仮定形を前提にしており、妄想なのだと判る。これが贅沢な時間なのかと少し途方にくれる。

姉夫婦と共に帰路に着く。観光するつもりだったらしいが、荷物が多くそのまま帰るのだと言う。姉夫婦は指定席を確保出来そうに無いと自由席を選択したものの、到着した電車には座る場所が無い。姉と子どもを優先して座らせ、通路で義兄と適当に話をする。姉との生活やらを聞いていると家族を持つ事で変わった部分とそうで無い部分もあるらしい事が判る。また義兄たちに、仕事に対するある程度のやる気が伺えるのを見て、自分との違いは何だろうと思う。

新幹線を降りると蒸し暑さを感じる。今回の小旅行で生活の余裕が無くなってしまった。

教会の牧師は説教のなかで「高尚とは他人と比較するものでは無い」云々と言ったが正確な内容を思い出せないでいる。