自発的隷従論

エティエンヌ=ド=ラ=ボエシ著、西谷修監修、山上浩嗣訳『自発的隷従論』を読んだ。
著者はモンテーニュの無二の友人と知られ、「エセー(随想録)」に於いて言及された人物として知られているという。モンテーニュは若くして亡くなった著者の本書の原稿をその他の原稿と共に発表しようとしたが、本書が時事的な事象と共に引用され誤解される事を恐れ、出版される事は無かったという。

本書は別題として「反一者論」として知られている。
著者はまずなぜ多数者が一者の圧政に隷従するのかを問う。そもそも人間は生まれつき、本性上「自由」である。しかしもう一つの本性「習慣」がある。生まれつき隷従が習慣化し、それ故に隷従してしまう。
また隷従は階層化している。一者の支持者となった数人が権力と利益を確保する。更にその数人が…という連鎖が連なり、支配される側でありながら圧政者を積極的に支える事になる。こうなった時、一者の支持者たちはこの体制の変革では無く強化を望む。一者に何も与えなければ圧政は成り立たないが、このような構造の前に圧政が成立する。

本書は「自発的隷従論」の他に付録としてシモーヌヴェイユ著「服従と自由についての考察」、ピエール=クラストル著「自由、災難、名づけえぬ存在」がある。本書の監修者である西谷修は解説に於いて日本とアメリカとの関係に自発的隷従を指摘している。


自発的隷従論 (ちくま学芸文庫)

自発的隷従論 (ちくま学芸文庫)