『誰も寝てはならぬ』第17巻(最終巻)を読んだ。
ついに『誰も寝てはならぬ』が終わってしまった。
「モーニング」の連載も目を通していたので、そろそろ終わりかもなぁとは察してはいたものの終わりは呆気なくやってきた。
主人公ハルキちゃんが好意を寄せていた女性の一人、活動家シモヤナギ氏の姪御が相撲取りと婚約した辺りで、この物語が近々終わるであろう事は察せられた。
思えばこの物語は、主人公であるハルキちゃん、そして大学同期のゴロちゃん、大学時代以来二人のアイドルである亜美さんが紹介されるところから始まった。
しかし終わってみれば、ハルキちゃんはひょんな事から気象「予想」士の岡ちゃんと出会い、上述した姪御さんと仲良くなりながらも最終的に岡ちゃんに気持ちを伝える事になった。
また、最終巻ではプレイボーイのゴロちゃんの女性遍歴の原点がハルキちゃんの親戚ヨリちゃんである事が判明。
一方、大学同期で一緒に仕事をするヤーマダ君は、亜美さんについて「おれはこの人を誤解していたのかもしれない」と語り、彼女が鉱物採取の為に訪れたという川に行ってみたりしている*1。
その他にも、彼らの仕事場で働くねねちゃんも魚屋さんから告白されたりしている。
その妹の巴ちゃんと、バスオタクのマキオちゃんは相変わらずの様子だが…。
何か特別な事が起こる物語では無い事は以前から知っていた。
それでもこの漫画が描く、日常の些細な機微を読む面白さは他に代えがたいものである。
著者であるサライネス氏のTwitterによれば次回作も準備中との事なのでとても楽しみである。
そして『大阪豆ゴハン』のように文庫化したら、ちょっとだけ彼らが働く「オフィス寺」の続きが覗けたらなぁと期待している。
と上記について最終巻を読み終え考えていた。
そしてTwitterにて著者であるサライネス氏が「好きな話があったらお伝え下さい」というアナウンスをしているのを観て、この漫画のある話を思い出した。
それはこの漫画に原発が登場する話である。
手元に単行本全巻がないので、何巻の何話なのか指示する事は出来ないのだが、ハルキちゃんとヤマダ君が、電気会社依頼の仕事をする事になり、原子力発電所施設見学ツアーに取材として参加するという話である。
その話の内容は、マイペースな二人がツアーに参加、施設内でツアーアテンダントに注意されたり、おかしな他のツアー参加者が描写されるというものである。
私は作者や物語内における大地震を経験したハルキちゃんやヤマダ君がこの件について何らかの応答があった方が良かったと言いたい訳ではない*2(本作品では最終巻にてハルキちゃんが盛んに行われるデモを目撃しているシーンが登場している事から東日本大震災は作中にも起きていると思われる。ちなみに他に私が読んでいる漫画で東日本大震災が扱われていたのは『おやすみプンプン』や『アフロ田中』だろうか。)。
私が驚いたのは一見原発とは何も関係ないと思われたこの作品に、原発施設が、東日本大震災が起こる前に、ごく当然に登場していた事だ。
今でこそ慎重に活発に語られる原発という存在が、日常に密接に存在しており、私も自然にこの話―原発を受容していたという事が「判ってしまう」。
おそらくこの話を再読する時、批評的に読んでしまう事だろう。
正直、この物語から原発について考えるとは露程も思っていなかったのだが*3。
(20120210追記)
サライネス氏のTwitterによれば、原発の話題は、お昼です。新入り仔猫が古猫のゴハンを盗み食いして腹ピーに。罰として今日一日絶食!。オルメカネタは兵馬俑展に行くと「終了後レプリカ販売します但し取りに来られる人のみ」ちゅうのを見て。好きな弁当は御堂筋弁当。原発は東電のツアーに冗談で応募したら当たってしもたので。(サライネス)
サライネス氏のTwitter https://twitter.com/#!/SAARA_INES/status/167446992983822336との事だそうです。まさか実際に見学ツアーに行っていたとは。
そういえば本作品の題名である『誰も寝てはならぬ』というのは、結局のところどういう意味が込められているのでしょうね笑。
- 作者: サライネス
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/01/23
- メディア: コミック
- 購入: 4人 クリック: 53回
- この商品を含むブログ (26件) を見る