平野啓一郎著『決壊』を読む。
雑誌「新潮」で連載中に読んでいたが単行本化したために再読した。連載途中の感想はここ。連載終了直後の私の感想はこちら。それをさらに詳しく書いたものがこれ。そして少し言及したものもある。その他に平野氏がテレビ出演したメモもリンクを貼っておく。
再読して考え直したことは上記にリンクした内容にある、私が指摘した「『カラマーゾフの兄弟』における父フォードルの殺害の状況が描かれない設定との酷似」というもの。そしては「与えられた外観から内容を考える小説」というものである。前者は読めばわかるのだが、しっかりそのシーンは描かれている。もちろん描かれていない事件もあるのだが。また後者の方をもっと詳しくいえば「情報源としての人間」*1を描こうとするとき、特に意図的にそれを描こうとしている『決壊』という小説において、「私」というものが読者に決定的に与えられるものではないということを意味する。小説において「私」が描かれなくなった、という原因はここに帰結しそうである。
この小説に登場する「悪魔」の存在が重要なのだろうが、語ることが難しい。実在する「悪魔」というと、それは「悪魔」じゃなくて「悪魔」的なものではないかというのが自分の考えになってしまって話が展開しない。問題は実在するとかそういうことではなく、思考が悪魔に牽引されるのかのごとく自らを追い詰める自分自身が「悪魔」なのだろうか。『カラマーゾフの兄弟』のイワンと悪魔との対話を再読してもよくわからない。なので少しずつ書き付けていきたい。まさに現在進行形の問題だと思うから。
- 作者: 平野啓一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/06/26
- メディア: 単行本
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*1:平野氏が著者インタビューで発言している。リンク先:http://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/426007/03_interview.html