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世界終末十億年前

アルカジー&ボリス=ストルガツキー著、深見弾訳『世界終末十億年前 異常な状況で発見された手記』を読んだ。

二世紀振りの猛暑、「ありきたりの天体物理学に恒星力学。恒星と拡散物質の相互作用。」を研究する天文学者マリャーノフはある一つの発見をしようとしていた。しかしそれを遮るように、身に覚えのない高価な食料品が届いたり、生物学者の友人ワインンガルテンが突然電話掛けてよこし、今まで興味を持たなかったマリャーノフの研究について聴きたがった。電話の途中、妻の友人だという女性が家に上がり込み、隣人の物理学者スニョゴヴォーイを交えて酒と共に雑談に耽るなか、スニョゴヴォーイもまたマリャーノフの研究について知りたがった。翌日、スニョゴヴォーイが死んだと捜査官が訪れ、女性は姿を消していた。慌てたマリャーノフは上階に住む数学者ヴェチェローフスキイの元に駆け込む。
部屋に戻れば生物学者ワインガルテンとスニョゴヴォーイが口にしていた電子工学者ザハールとその子どもが居た。ワインガルテンはある発見をしたものの日常にごたごたが起き研究が進まずにいた。そして突然赤毛の男が部屋に訪れ、地球外文明の代表を名乗り、今までの騒ぎは意図したものであり研究を断念させる為だったと語った上、マリャーノフとザハールの研究も注視しているという。ザハールは昔関係を持った女性が次々と現れ、そして一人は子どもを連れてやって来た。古代から地球には九人同盟なる存在がおり科学的成果を蓄積し地球が自滅しないよう監視しているのだと彼女は言い、子どもを残して立ち去った。
更に東洋学者グルーホフも加わり、自分たちに起きている事態を荒唐無稽だと思いながら議論するなか、皆の話を聞いた数学者ヴェチェローフスキイはマリャーノフに〈均衡の取れた宇宙(ホメオスタチック ユニヴァース)〉なる考えを示す。「宇宙はその構造を維持しつづける」という公理の元、マリャーノフたちの研究がそれを脅かす可能性があり、十億年後に他の何千何万の研究と一体となって世界を終末に導かないようにしているのだという。
最初は荒唐無稽な話だと馬鹿にしていたマリャーノフだったが、家族や現在の生活を守る為に研究を諦める。しかし皆の研究資料を預かった数学者ヴェチェローフスキイは今の仕事を辞め、皆の研究の交わりとこれを断念させようとする法則を見つけるべく、パミール高原で仕事をするという。マリャーノフはヴェチェローフスキイが話を終えたのにも関わらずその続きを聞いていた。「十億年あれば、やれることは沢山ある、もし降伏しないで理解すれば、理解して降伏しなければ。」「蝋燭がパチパチ弾ける音を聞きながらだって原稿用紙は埋めることはできるんだ!ブラック・リバーのほとりにだって、命を捧げる価値のあるものはみつかるはずだ、と……」

「月曜日は土曜日に始まる」「トロイカ物語」が乗り気でなかっただけに夢中で読み進めた。ストルガツキー兄弟の作品の中でも特に好きな話だ。また本作はアレクサンドル=ソクーロフが邦題「日陽はしづかに発酵し…」として映画化しており、またストルガツキー兄弟も「蝕の日」と題して本作の映画シナリオを発表している。
尚、本書にはアルカジー=ストルガツキーによる自伝、深見弾による作品リストが掲載されている。

世界終末十億年前―異常な状況で発見された手記

世界終末十億年前―異常な状況で発見された手記