『姦淫に寄す』『風博士』

坂口安吾の短編『姦淫に寄す』『風博士』を読んだ。
河本英夫著『〈わたし〉の哲学 オートポイエーシス入門』では坂口安吾の『姦淫に寄す』と『風博士』が分析の対象になっている。これを調べてみると青空文庫Kindleで読める事が判った。尚、どのような分析が為されたかは失念且つ本書を友人に貸している為、紹介する事は出来ない。私は『姦淫に寄す』を面白く思った。しかし題名を「カンインニキス」と読んでいたのだが「カンインニヨス」が正しい。よくよく考えてみれば「姦淫にキス」はおかしい。読み間違いをフロイディアンなら意味があると指摘するのだろうがそんな事はどうでも良い。

  • 『姦淫に寄す』

隣室で自殺があったのに関わらず、それも意に介さずわざわざ隣室に移って暮らす、特に面白味も無い、「単に全ての現実が全ての現実でしかないやうな、「常に凡ゆる断片」とでも呼ぶべき男」。男は教会の聖書研究会に顔を出し、そこで出会った美しい未亡人と仲を深める。未亡人に誘われ、大磯の別荘に赴く。嵐のなか駅で待っていた未亡人は顔色が悪く、別荘で隣人たちとトランプや麻雀をした後、それぞれ寝室に入り眠る。男は目覚め、嵐が去った後の海岸を歩き、体調が復活した未亡人がもう二三日の滞在を勧めるなか「余儀無い用があるから」と別荘を後にする。
坂口安吾『姦淫に寄す』青空文庫

  • 『風博士』

風博士が紛失した。風博士は禿頭の凧博士を憎んでいる。風博士の遺書には凧博士がカツラを被っている事、論敵である事、妻を寝取られた事、逆襲の為カツラを凧博士の邸宅から奪うものの別のカツラを用意していた為に失敗した事、そして万策尽きた為に自殺すると書かれていた。風博士は結婚式の日に紛失した。語り手は花嫁と共に風博士を待つも現れない。語り手は風博士の邸宅に赴くと、彼は部屋にある椅子に座り本を読んでいる。声を掛けると風博士は失念していた事を思い出し、突然その場から消えてしまう。
坂口安吾『風博士』青空文庫