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夏の野球観戦

メモ

野球はするのも見るのも得意ではないが一度だけ神宮球場で観戦した事がある。
あれは大学生の時だった。前期テスト前の補講期間中、友人と一緒に閑散とした校内を歩いていたところ、野球部の試合が神宮球場でこれから行われると校内放送が流れた。
私が在学している時、野球部はプロ入り確実と言われる投手を擁しており、何かと話題になっていた。
校内放送を聴いた友人は「観戦に行ってみない?」と突然言った。
友人は野球に興味が無かったと思っていたので理由を尋ねると、
「なんだかいいじゃない」「ビールとか飲んだり、村上春樹の小説みたいにさ」
と言う。特に断る理由も無い。自宅に戻ってもどうせテスト勉強なんてしない事は判っている。「何だかいいじゃない」、その通りだった。
校内でチケットを買い、地下鉄から中央線に乗り換え、神宮球場を目指した。
スタンドに入ると試合は既に始まっており、スタンドではチアリーダー部が応援をしていた。七月後半の陽射しは鋭く、熱かった。
人がまばらに座っている場所に腰を下ろした。スタンドからは選手は小さく判然としなかった。
チアリーダー部には同じ学科の同級生がいたはずだと笑顔で声を挙げ跳ね上がる女性たちを目で追ってみたりした。
スタンドから試合がどのように進んでいるか判らなかった。外野席上のスコアボードで試合の進展がやっと判った。
昼食を取っていなかったので球場内で売店を探したが既に閉まっていた。仕方なく自動販売機でやたら高いビールを買った。なぜかビールはハイネケンしかなかった。ハイネケンを飲まざる得ないなんて本当に村上春樹の小説みたいだなと思いスタンドに戻った。
スタンドでは座っているだけで汗が吹き出した。着ていたポロシャツに汗が染みた。チケットを買った際に貰った応援用のタオルで体の汗を拭いた。
本当に暑いと思いながらビールに口をつける。アルコールは得意では無かったが暑い陽射しのなかで飲むビールはうまかった。
相変わらず試合がどのように進んでいるか判らなかった。スコアボードを見ると野球部が無失点である事は判った。
友人と暑い暑いといいながらビールを飲んだ。アルコールに弱い私はすぐに酔いがまわった。
試合の様子が判らない私は仕方がないのでチアガールをぼんやりと眺めた。こんな暑いなか声を出して動きまわってすごいよなと思っていたところ、視界に同級生がいる事に気がついた。友人に同級生がいる事を伝えると「ほんとうだ」と小さな声で応えた。
スコアボードが七回を終えると選手がチアガールの前に集まってきた。どうやらコールド勝ちらしい。選手にチアガールとスタンドにいる観客が応えている。私はその様子を見ながら「ああはなれないな」と思った。
友人はタオルを顔に掛けて空を仰いでいる。俺は酔いがまわって気持ちよくなっていた。

その後、野球部をそのリーグ戦を制したと聞いた。そしてプロ入り確実と言われた投手はドラフト上位で指名されプロになった。
しかしその投手がプロで活躍したかどうか。二軍に落ちたのかもしれないし、一軍で活躍してどこか他の球団に移籍したのかもしれない。投手の名前はすっかり忘れてしまったが。

あの時、暑い陽射しのなか球場で飲んだビールは最高にうまかった。あんなにうまかったビールは未だ無い。


国産 ハイネケン 350ml×24缶

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