ルーヂン/(二)登場人物・内容

(二)登場人物

  • ダーリヤ=ミハーイロヴナ=ラスンスカヤ モスクワでは知らぬ者はない富裕な枢密顧問官の未亡人。
  • ボンクール フランス人の家庭教師。60歳位。
  • アフリカン=セミューヌイチ=ビガーソフ 女嫌いの変人の老人。
  • ナターリヤ ダーリヤの娘。17歳。レジネフは彼女を子供ではなく、情が激しいのではないかと評している。
  • ドミートリイ=ニコラーエヴィッチ=ルーヂン 34~35歳。ダーリヤ邸に招待されたムッフェリ男爵の代わりに現れた男。

(二)内容

ダーリヤ邸。客間に集まった人々。ダーリヤとビガーソフのやり取り。途中でアレクサンドラとヴォルィンツェフが到着し、一同は夕食の時間まで庭に出る。ヴォルィンツェフがナターリヤに好意を伝える。夕食後、ムッフェリ男爵の代わりに男爵の知り合いだというルーヂンが現れる。

当主のダーリヤも名だたる富裕な貴婦人で、枢密顧問官の未亡人だった。パンダレーフスキイは、彼女は全ヨーロッパを知り、ヨーロッパもまた彼女を知る、などと評したが、ヨーロッパではろくに知られてはいず、ペテルブルグでさえ大して重要な役を演じていなかった。その代わり、モスクワでは知らぬ者はなく、客が絶えなかった。彼女は上流社会に属し、少し変わったところのある、大して善良ではないが、ひどく頭のいい婦人だという評判だった。若い頃は大そうきれいで、詩人連から詩を捧げられたり、青年たちに恋をされたり、顕官名士から言い寄られたりしたものだった。然し、それから二十五年、乃至三十年たった今日では、往年の色香はあとかたもとどめていなかった。初めて見かけた者は誰でも思わず《この痩せこけて、黄色くなって、尖がり鼻の、そのくせまだそれほどの年でもない女が、本当にいつか一度は美人だったのだろうか?これが、あの、竪琴にほめ奏でられた女性なのだろうか?》と自らに訝しみ問うほどだった。もっともパンダレーフスキイの説では彼女のすばらしい眼は不思議に昔の面影をとどめているそうだが、ヨーロッパで彼女を知らぬ者はないと放言したのもこのパンダレーフスキイなのだから、これもあてにならない話である。