『パリ、ただよう花』

ロウ=イエ監督作品『パリ、ただよう花』を観た。
冒頭、中国人女性がフランス人男性に縋っている。「私を抱いて。愛情はいらないから。」と。
フランス人男性は「たしかに中国では楽しかったが今は愛情もない。彼氏はいるのだろう。」と突き放し、宥める。
中国人女性は街中を彷徨いながら雨に降られ、カフェでアルコールを飲み込み、眠る。
店員に起こされ、店を出ると建設工が担ぐ鉄柱の束が彼女にぶつかる。
彼女に怪我は無い。建設工は彼女に怪我が無いか何度も尋ねる。建設工をあしらい彼女は街中に紛れる。
ATMからお金を卸そうとするも上手くいかない中国人女性。建設工は彼女を見つけ銀行を案内した上で食事に誘う。
建設工はマチューと名乗り、彼女の名前を尋ねる。「ホア」と答え、マチューは続ける。「中国人の名前には意味があるのだろう?」ホアは応えていう、「花」と。
食事を終えた後、ホアをレイプそのものの態で求めるマチュー。事を終え呆然とするホア。しかしマチューとホアはホテルに入り更に体を求め合うのだった。
ホアはマチューを求めながら、更に別の男、また別の男、北京に住む男と居場所を変えていく。
あばずれと言われ、否定する事も無く、マチューと交わり続ける。
誰を求めているのか、何を求めているのか、判らない。マチューを求めているかのように見える。しかし同時に「私たちは違い過ぎる。」とも語る。
では、冒頭の「私を抱いて。愛情はいらないから。」という言葉は何なのだろうか。男の気を惹くための言葉なのか、身体が欲しているのか。
また男たちも。マチューに妻子があり、別れ話を切り出されれば窓から飛び降りると述べ、他の男にホアを試させさえする。北京に住む男の自宅には女性が尋ねてさえ来る。
一体何を求めているのか、ホアを見ながら、彼女に尋ねながら、乱反射した問いは、一瞬垣間見えた、見過ごしたフリをした場所を照らすのか。

ホアは北京で婚約を約束した後、フランスに戻り、マチューを尋ねる。マチューの両親にあばずれと呼ばれ、そしてマチューとホアはホテルに入る。
交わりながらマチューの質問に対し婚約した事を述べるホア。マチューは彼女を叩き言う。「婚約したにも関わらず俺を誘ったのか。」と。
失したマチューは彼女と交わろうとするも上手く行かず彼女の胸に顔を埋める。
ホアの顔は、思いは見えない。しかし身体はマチューと共にある。