神山健治監督作品『『009 RE:CYBORG』を観た。
おそらく神山健治のアニメーションを真面目に観たのは初めてだと思われる。
原作である009には馴染みがあるかというと、おそらく小学生か中学生の時、姉がどこからか借りてきた文庫版009を読んだ事を憶えている。全ての作品を文庫本で読んだかどうか知らないが、島村ジョーとジェット=リンクが流星になる結末が印象的だった。
さて本作では、「彼の声」なるものを聞いた人々が同時多発的に発生、テロを実行している。しかしそれはアメリカと軍産複合体による陰謀なのではないかと疑われている。
008ことピュンマと004ことアルベルト=ハインリヒはギルモア博士の元に向かっていた。ピュンマは考古学者としてアフリカで遺跡発掘をしているのだが、天使の化石を発見、その化石をみた他の仲間は「彼の声」を聞くという現象を体験していた。
この事態に自国の諜報員として活動する007ことグレート=ブリテンと002ことジェット=リンクは酒場で情報交換をしており、グレート=ブリテンは今回の事態はアメリカの陰謀なのかとジェット=リンクに尋ねる。そしてピュンマから仕入れた「彼の声」についても披瀝してジェット=リンクに探りを入れるのだが…。
001ことイワン=ウイスキーと006こと張々湖は先行してアメリカ軍産複合体に潜入するが、死体サイボーグ兵士に反撃に会う…。
009こと島村ジョーは高校生として独り六本木高層マンションでタンブラーで出来た爆弾を作り、六本木ヒルズ森タワーを爆破しようとしている。なんと島村ジョーも「彼の声」を聞いていたのだ。しかしなぜか可愛い彼女が出て来て彼女の懐に抱かれているところで、アメリカ艦艇による付近のロケット攻撃、ギルモア博士の命を受けた003ことフランソワーズと005ことジェロニモ=ジュニアが彼の記憶を呼び覚ますために到着する。なんと島村ジョーはその見た目のために高校三年間を繰り返し過ごしていたのだった!(可哀想だ)。
そんな訳で、アメリカ陰謀論と「彼の声」なる体験の解明が物語の主軸になるのだが、色々あって失踪したピュンマの代わりにアルベルト=ハインリヒがピュンマの残したノートから「彼の声」をフロイトやらなんやら用いて、人間の脳が神を創りだす構造なら「彼の声」もそれに該当するのではという考えを仲間たちに紹介する*1。
そんな状況ですが、ドバイでは島村ジョーとジェット=リンクが防ごうとしたけど核が落下して大変な事になっていたりする。ここでの核描写は生々しくかつ加速装置で核の炎から無音で逃げる演出は残酷さと共にスタイリッシュです。
そして物語は最後に石ノ森章太郎の原作を彷彿とさせる展開、島村ジョーが人間が脳内に作り出したなんやらに向かって問いを以って物語は終わる。
しかし、だとするなら「彼の声」なるものが善悪を越えたものの意志とするしかない訳で、それを意味づけるのはとても難しいと思うのだが、たぶん石ノ森章太郎が描いたものはそういうものだった、という事だと思う。

- 作者: 神山健治,福島直浩
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/11/10
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 18回
- この商品を含むブログ (13件) を見る