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願望機

アルカージイ&ボリス=ストルガツキイ著深見弾訳『願望機』を読んだ。

「教授、あんたはどう思う、あの場所は実際に存在するんだろうか?はたして願望はかなえられるんだろうか……」
「〈ヤマアラシ〉は大金持ちになった。彼は金持ちになることが生涯の夢だったんだ」
「なのに、首吊り自殺をした……」
「本当に金持ちになりたくてあそこへ出かけたと思うかね、〈ヤマアラシ〉は?〈ゾーン〉へでかけた理由を、人になんといっていたかわかるかね?実は、彼がなにを望んでいたか、誰も知りはしないんだ。本質は複雑だ。彼の頭はあることを望んでいても、脊髄はべつのことを望んでおり、心はさらにほかのことを望んでいたんだ……そういう混沌としたものは、だれにも理解できるものじゃない。とにかく、ここで問題になるのは、心の奥底に秘められていることだ。わかるだろ?秘められた願望が問題なんだよ!」
アルカージイ&ボリス=ストルガツキイ著(1989)『願望機』深見弾訳,群像社.

アンドレイ=タルコフスキー監督作品「ストーカー」の為に作られながら、結果採用されなかったもう一つの脚本であり、自らの小説「ストーカー〈路傍のピクニック〉」が基となっている。翻訳者である深見弾によれば、アンドレイ=タルコフスキー監督作品による「ストーカー」は一度完成した後、現像所でミスが発生し消滅してしまったらしい。そしてその後もう一度撮影されたのが現在の「ストーカー」なのだ。そしてその再度の撮影でストーカーはインテリとして描かれる事になったのだという…そこでここではストーカー諸作品を簡単に比較する事にした。尚、本書では「スプーン五杯の霊薬」という脚本も収録されており、こちらも面白く読んだ。

・ストーカー同士の駆け引き等が描かれ、ハードボイルドSF小説と言える内容となっている。
・原題「路傍のピクニック」とは、未知が地球に来訪して残していったものが、人類にとって何を意味するのかという比喩となっており、作中で言及される。
・未知が来訪した際にゾーンに居た住民が移住すると、移住先で災害等が起こると統計学的に立証され、ストーカーの子ども等には遺伝的な変化が起こっているとされる。
・主人公であるストーカー「赤毛〈レッド〉」のレドリック=シュタルトの二十三歳から三十一歳までが描かれる。作中、ゾーンの侵入を密告され自ら警察へ出頭している。
・主人公は粗野でタフな存在として描かれている。
・主人公の娘はモンキーと呼ばれ、金髪の産毛に身体が包まれ、成長するに従い何も解さなくなり、医者から「人間では無い」と診断されている。
・全ての願いが叶うと言われる願望機「黄金の玉」が登場し、それを前にした主人公が「全ての人類の幸福」を望みながら物語は終わる。

  • アルカージイ&ボリス=ストルガツキイ著深見弾訳『願望機』

・ストーカーが科学者と作家をゾーンへ案内するという内容。
・ストーカーに粗野な言動が目立つ。また娘は目は見えず這って歩くという。科学者はこれをミュータントと呼び「ゾーンの犠牲者」だと語る。
・全ての願いが叶うと言われる願望機が登場する。しかし上記引用の通り、それは一筋縄ではいかないもののようだ。
・科学者が原子爆弾で願望機とゾーンを破壊しようとするもの、結局その場で爆弾を解体し、何もする事無くゾーンを後にする。

・ストーカーが科学者と作家をゾーンへ案内するという内容であり、ストルガツキー兄弟の「願望機」と物語の構造はほとんど変わらない。
・主人公のストーカーは静かなインテリ風の人物として描かれている。
・ストーカーの娘には足がない。しかし物語の終わりに超能力を披露する。
・願いが叶う部屋が登場する。作家によれば「人間の潜在意識を実現するもの」だと言い、「願望機」と同一の装置となっている。
・科学者が部屋を小型核爆弾で爆破しようとするが、ストーカーが「私にはそれしかない」と縋り付き止める。
・ストーカー、科学者、作家は願いが叶う部屋に入る事無く、その場を後にする。

願望機

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