『天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク PART1』

小川一水著『天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク PART1』を読んだ。
大長篇「天冥の標」シリーズ最新刊。PART2は今年中に出版予定だという。
西暦2800年の植民地惑星を描いた第Ⅰ巻に本作は連なるものとなっている。第Ⅱ巻以降、西暦2000年代から西暦2800年に至る過程が描かれてきた。そして遂に物語は第Ⅰ巻にまで辿り着いた。硬殻化した救世群が人類に宣戦布告し戦闘を繰り広げるなかアイネイア=セアキを逃したイサリ=ヤヒロ*1。しかしその後太陽系皇帝を名乗る妹ミヒルによってコールドスリープを施されていた。その期間300年。硬殻化は感情によって猛獣化する危険があり、その為の処置だったという。更に今回の目覚めは叛逆者たちの意志を挫くためだとミヒルは語る。そんななかミヒルの方針に反対する者たち―人類=未染者の殲滅を救世群が望んでいない一団―がイサリにまだ人類は生き残っている可能性がある事を伝える。彼らの犠牲のもと、準惑星セレスの軌道上からセレス内部―惑星ハーブCの植民地メニー・メニー・シープ―に侵入したイサリ。ここから第一巻をイサリの視点から描くのが本作である*2

登場人物たちの長大な系譜を知ってしまった今、彼らの命脈が続くこと、伝染病を端に欲した怨念には終止符を、そして外宇宙からの静かな侵略への抵抗を願って止まない。


*1:Ⅵ巻。

*2:その他にも勿論色々ある。