2014年8月2日

今日は海に行く。一人で行くのは三年振りだろうか。欠伸を晒しながら電車を乗り換える。ラクロス部の女子学生の日焼け。隣に座る女性が読み進める恋愛小説。夫の顔を眺めながら彼の父のようにいずれ頭髪が薄くなっていく事を気にしないと主人公は語る。車内の冷房が脚元を引き締める。

江ノ電。観光客でしかない俺にとっては魅力的だ。子どもが母親から靴を脱がして貰い、シートから外を眺めている。シートに立てばこの子は頭二つ分上から物事を眺められ「高い高い」とはしゃぐのも馬鹿に出来ない。出来る事が増えていく過程にあるという新鮮さ。

由比ヶ浜で下車し海水浴場を目指す。海沿いらしい趣を感じさせる住宅街と宿屋街を抜け、海。サーファー達が海に揺られている。まだ海の家が開いていない。今回は海の家頼みで来たので何も準備らしい事はしていない。イヤフォンを抜き波音を聞き、寄せては返す波を眺める。言葉は消え五感だけが開いていく。ウェットスーツを着た女性が砂浜を歩き海に入っていく。日焼けしている為なのか身体が引き締まって見える。以前の職場に居た女性を思い出す。専らアウトドア派でハイエースにキャンプ用具とサーフィン道具を載せて休日は子ども達と出掛けているという。サバサバとした性格が非常に魅力的だった。

海の家で寝椅子を借りビールを飲む。意識が途切れ、寝椅子に身体が溶けていく。ビールを飲みひたすら海と空を眺める。台風の影響で波が高く潮の流れも早いという。遊泳が禁止、最終的に水浴びも禁止された。大学のサークル仲間と来たのだろう、声を挙げながら海に入って行く男女。自分にあのような元気は無く若さを感じる。水着姿の男女の戯れ、主に女性を目で追う事になるものの、その肢体との一切の関係が断たれているという事が明らかになるばかり。写真撮影を依頼されたので引き受ける。男女二人組で二十代後半、つまり俺と同じ位の年齢だろう。写真に収まった人々を観ながらシャッターを二回押す。少し妬みたくもなるが「思い出になりました」と言われると、俺は茶番のダシだろうが、彼等にとって掛け替えの無い人生の一時なのかもしれないと思えてくる。普段飲まないビールを四缶程飲んだためか頭痛がする。熱くなった砂浜を小走りで後にする。