象られた力

飛浩隆著『象られた力』を読んだ。
飛浩隆の「グラン・ヴァカンス」シリーズを読む前の手始めとして読んだ。
本書は全4篇の作品が収録されている。

  • 「デュオ」…双子の天才ピアニストについて記された手記。サスペンス調。
  • 「呪界のほとり」…小さなドラゴンらしきものを肩に載せ時空を旅する男の物語。ファンタジーSF調。
  • 「夜と泥の」…ある植民地惑星の夏至、おぞましい奇跡はテラフォーミングにあった。
  • 「象られた力」…表題作。突如消えた惑星「百合洋(ユリウミ)」。百合洋の文化である紋様を解明しようとするイコノグラファー。しかし宇宙は世界を記した紋様によって破壊へ向かっていた。

「呪界のほとり」における呼び水技術はグラン・ヴァカンスでも登場。世界の設計図に改変を加える、これを力とする世界観が面白くあった。
どの作品にも感じられる静謐さが気持ち良い。そしてその静謐さに胎動する破壊への志向が美しい。


象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)

象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)