ゼロ・グラビティ

アルフォンソ=キュアロン監督作品『ゼロ・グラビティ』を観た。
医療技師として宇宙での活動に初参加したライアン博士は船外活動に従事している。部品の交換が上手くいかない博士は宇宙酔いを被り、多少の苛立ちを募らせながら作業を続ける。スペースシャトルの周囲を、作戦の指揮を務めるマット=コワルスキーが宇宙遊泳しながら無線で会話を楽しんでいる。ミッションを終えたのか無重力を楽しむシャリフが見える。

そこへ無線連絡、ロシアが軍事衛星の一つをミサイルで爆破したとの知らせが入る。同じ軌道上では無い為、心配する必要は無いという。
しかし次の無線連絡、爆破した衛星の残骸が更に別軌道上の衛星を破壊、破片がそちら向かっているという。急ぎシャトル内に戻ろうとするも破片は彼らに無慈悲に襲いかかる。おそロシア。

画面が無重力の演出でグルグル回り、主人公視点に切り替わったりで忙しく、そして興奮する。
何より宇宙でこんな事が起こったらヤバいよね、という中途半端な知識が恐怖感をバンバン煽って魅せるから堪らない。
無重力を楽しんでコイツ死ぬだろと思っていたシャリフは顔面に穴開けて脳味噌を宇宙にぶちまけて空っぽになっている。スペースシャトルの搭乗員は凍りついて沈黙している。そもそもスペースシャトルってもう使ってないって聞いていたけど、衛星として宇宙にいるのだろうか、それともそういう時代設定なのだろうか。よく判らない。

宇宙に吹き飛ばされたライアン博士はグルグル回転して宇宙服の酸素をバンバン使いながらもマット=コワルスキーに救出され、ISSに向かう。マット=コワルスキーが装備している推進装置も燃料がほとんど無いらしい。この絶望感半端無い。つーかISSとか宇宙兄弟とか立ち読みしているから通じるなぁ何て思ったり、宇宙では見えているものへ直線的に向かえば良いってもんじゃないと聞いていたのを思い出したり。
ISSへ向かいながら地球での生活について話す二人。マット=コワルスキーは冒頭の下らないお喋りで宇宙にいる間に奥さんに弁護士とトンズラされたらしい。
一方、ライアン博士は娘が鬼ごっこしている時に頭をぶつけて死んだとか。これだけ聴くとこの二人のストレス耐性は宇宙ミッション的に大丈夫かとツッコミを入れたくなる。

ISSが見えてきた。マット=コワルスキーによれば基地の一部が切り離されているらしい。何か紐が絡まったり、パラシュートが飛び出てていたりする。ISSも衛星の残骸でボロボロで、いやいやもう駄目だろ、この状況。とりあえず泣けなしのジェット推進をプシュプシュしながらISSに合流、というか無重力だから衝突して何とか縋りつこうとするもバカバカぶつかってあわや吹っ飛びそうになるところ、何か絡まってた紐に足が引っ掛かるライアン博士、そしてマット=コワルスキーを掴むも無重力だからどんどん明後日の方向に引っ張られる。マット=コワルスキーは自らを宇宙に屠る選択をする。「掴んでいたのに…」と嘆くライアン博士、無線でISS船内へ案内する遠くに飛ばされたマット=コワルスキー、この描写、現実的で空しい。

この辺りから映画の記憶が曖昧になる。
ISSに入り込み、マット=コワルスキーを助ける為、無線を使うも応答が無い。マット=コワルスキーから指示された中国の神舟へ向かう為、再度船外活動を実施する。その前に火事でISSの一部を切り離したりしたような気もする。
とにかく宇宙は大変だ。
船外活動で飛び出たパラシュートの紐を外しているとそこに再度衛星の破片が向かってくる。もうISSも何もかんもあるかという状態。ちなみ地球、というかヒューストンとの通信は衛星事故の影響によって完全に途絶えているという状況。宇宙飛行士が自ら考え、やりたいようにやるという状況だ。なんやかんやあってISSに戻って神舟に向かおうとするもパラシュートの紐が絡まっていて、今度は切り離した舟ごとISSにぶつかりそうになったり。ぶつかりそうになったからパラシュートの紐を切り離そうと船外活動をしたのだろうか、もう判らん。

色々あって、というか動かそうと思ってた船の燃料切れが判って、疲れたライアン博士は船の電源を落とし死のうと試みる。
しかし、そこでマット=コワルスキーがいきなり窓を叩き侵入してくる。うっそ~と思うも実際夢だったのだが、ライアン博士にヒントを与える。
ライアン博士が乗っているのは切り離し型の脱出ポッド、どうやら地球に着陸する時は、パラシュートの他に地上スレスレの状態でジェット噴射する仕組みらしい。このジェット噴射で神舟に向かうのだ。

脱出ポッドのジェット噴射で神舟へ向かうライアン博士、どうやら神舟の高度が落ちててこのままだと地球に降下してしまうらしい。どうやって脱出ポッドで神舟に乗り移るのだろうと思ったら、脱出ポッドから飛び出して取り付くらしい。おいおいそんな事可能なのかと思ったら、消火器噴射の反作用で取り付くらしい、なるほど、それなら安心だ。宇宙でのサバイバル、半端無い。

ライアン博士、脱出ポッドから飛び出し消火器をプッシューしながら舟に縋り付いて舟内に入って操縦しようとするも、中国語で操作出来ないというアクシデントが発生、こういうところが自国単独開発のデメリットなんじゃないでしょうか等と勝手に案じていたら、ライアン博士はシミュレーターでの経験を活かし運転、「うん、たぶん、これで良さそう」というヤケクソな発言で機体を切り離し大気圏に突入する。

よくわかんないけどその機体の体勢で大気圏突入しても大丈夫なのか、という心配を尻目にその他部品が大気圏で吹っ飛んでいく。ライアン博士が乗っているポッドも蓋みたいのが吹っ飛んでたけど。そんな事はどうでも良いらしく、何とかライアン博士が乗ったポッドは無事パラシュートが開き、落下する。
今更、ヒューストンが連絡してきてうざったい感じが半端無い。あっ、あとちゃんと中国製ポッドでも地上スレスレでジェット噴射してた。

さてやっと地球だと、船内では小火が発生して煙ったいライアン博士、ポッドの扉を開けたら水が入ってきて出られない、ここで水死は映画的にキツイ。しかしポッドが水中に沈むとそこは先程までいた宇宙と同環境とも言える世界、水中を泳ぐライアン博士。

水中から陸に這って上がるライアン博士。湿った土を掴み笑う。そして弱った筋肉で立ち上がり、画面の奥へ向かう。このシーン、人類の進化を思わせるじゃないですか。
そういえば、宇宙船内に入り安心したライアン博士が窓から太陽の光を浴びて小さく胎児のような格好を取っている。そういう流れか、ただのパニックSF映画と思わせて一人の人間が生まれ変わる、成長する、というテーマがあったのか~と感心した。そして原題が「Gravity」だという事も。


いや、面白かった。でもこういうのがありそうで無かった。宇宙の無重力の緊張感、最高調の盛り上がり。


ゼロ・グラビティ [Soundtrack]国内盤

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