伊坂幸太郎著『モダンタイムス』『ゴールデンスランバー』を読んだ。また映画『ゴールデンスランバー」も観た。
尚、『モダンタイムス』は『魔王』の続編という設定の為、『魔王』を再読した。
これらは『死神の浮力』を読み、とりあえず『ゴールデンスランバー』までの作品を全て読む事にした為である。
『死神の浮力』を読んだ際、『魔王』に登場する死神について記述した。今回『魔王』を再読したところ、私に一部誤解があった。『魔王』に死神千葉が登場するが、これは明らかに『魔王』の腹話術の超能力を持つ主人公が別の超能力者に「事故死」―殺害された事を示唆する為である。よって死神千葉の登場を、著者の物語全てにまで及ぼすという考えは、著者の意図にそぐわないと思われる。
さて『モダンタイムス』及び『ゴールデンスランバー』は主人公が巨大な陰謀、システムに巻き込まれてしまう物語である。
そこで『モダンタイムス』はシステムを破壊しようと試み、『ゴールデンスランバー』では逃亡を図ろうとする。
両作品は同時期に描かれ、著者自身も同じテーマを扱ったと後書きに記述している。
私はこのシステムに対抗しようとする物語を見ながら、村上春樹の壁と卵の比喩を思い出した。村上春樹だけでなく、巨大なシステムを描き、それに対抗しようと物語を書く人がいるのだなと思い、幾つか著者に対する評論を読みたいと思った次第である。
- 『モダンタイムス』
本書は『魔王』から50年程の月日が経過している。徴兵制は実施され、それは当たり前のものとして受け入れられている。
さて主人公は浮気を妻に疑われ、プロの探偵に拷問に会う。同時に会社の先輩が放り出した、あるサイトの仕事をする事になる。しかし、そのサイトを解析すると、ある仕組みが発見される。特定の言葉で検索を掛けると事件に巻き込まれてしまうのだ…。
『魔王』「呼吸」にて登場した、腹話術の超能力を持つ主人公の弟、安藤潤也にも触れられる。安藤潤也は都市伝説と化しており、兄の死によって目覚めた超能力で以て資金を稼ぎ、世の中を動かそうとしたのだが…。
『ゴールデンスランバー』では陰謀から逃げるしか無い主人公が描かれるのだが、本書はその陰謀―システムを突き止めようとする点が面白い。そしてそのシステムの途方のなさも含めて。
尚、一番の謎は主人公の妻だったのだが、その点は私の読み込みが浅いからなのか、その他の作品で登場する為なのかは今も判らない。
主人公が首相暗殺の濡衣を着せられ、仲間や社会の爪弾かれた人物の助けを得てひたすらに逃げる物語。
この物語は巨大な陰謀に乗せられてしまう物語だとも言える。一方、映画ではその陰謀は知る人間が一部明確になっており、それに抵抗する様子が小気味良くもある。
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