熱狂の爆弾処理『ハート・ロッカー』

ハート・ロッカー』を観た。
『ゼロ・ダーク・サーティ』が面白そうだったので監督のキャスリン=ビグローの前作である本作を観賞した。
爆弾処理班の話と聴いていたので「爆弾が爆発するまであと3秒、どうする?」というような話を想像していたのだが、そういった内容では全く無かった。
舗装されていない路上のゴミ溜まり、住人を避難させ爆弾処理班が出っ張り、爆弾の処理を行う。処理方法は解体、爆破、遠隔操作ロボットを使う事もあるようだ。そして遠隔操作ロボットを使う事が出来ない場合、防護スーツに身を包み直接爆弾を処理する事になる。帯電話で爆弾を起爆させる者、武装ゲリラを仲間たちは警戒する事になる。
冒頭、上記場面から始まり、防護スーツに身を包んだ男は携帯電話で起爆した爆弾で死亡する。そして代わりにやってきた人物は爆弾処理のスリルを楽しみ、爆弾の元に自ら向かっていく。
取り憑かれたように爆弾処理をする男がいる一方、必要以上に爆弾の解体に執着する仲間は不満を募らせていく。
ハート・ロッカー」という題名を聴いた時、爆弾を処理する人間が高鳴る心臓を抑えこむ、という程度の意味だと思っていた。しかしWikipediaによれば、アメリカ軍の隠語で「苦痛の極限地帯」「棺桶」を意味するという。
爆弾処理班たちは各々にいう。「まだ子どもはいらない」「その作戦には賛成だ」と。
しかし物語の終わりでは「おれも子どもが欲しい」「あれは余計な事(作戦)だった」と叫ぶ事になる。
彼らは戦場に於いて、生きる為に戦いながらも自分の生死がただの確率にしか左右されない事を知っている。生死が確率に左右される場所で自らの希望や意志を語る事は何とも馬鹿らしい。
では戦場に何があるのか、それは冒頭に掲げられる「戦争は麻薬である」という言葉、一度アメリカに戻った隊員は「爆弾処理班は必要だ」と妻に語り掛け、麻薬―「戦場の熱狂」を求め再び戦地に赴くところで物語は終わる。


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