Helpless

早稲田松竹にて、青山真治監督作品『Helpless』を観た。
青山真治の北九州サーガ第一作、これに「EUREKA ユリイカ」『サッド・ヴァケイション』が続く。
浅野忠信演じる健次は精神病院に入院する父親を見舞いに向かう日々を送っている。母親は既に夫を見限ってどこか行ってしまったようだ。そんな折り、知り合いである仮出所した片腕のヤクザと再開を果たす。ヤクザは兄貴分から親分が死に組が解散した事を聞くも信じようとせず、逆上して兄貴分を射殺してしまう。ヤクザは隠そうともせず拳銃片手に、眩しそうに太陽を仰ぐ。
ヤクザは兄貴から餞別に渡された鞄と施設から連れだした知的障害者の妹ユリを健次に渡し、組の親分を探しに出掛ける。健次はバイクにユリを乗せ田舎道を彷徨う。山道の喫茶店、ユリは籐カゴからうさぎを取り出し、音の出ないテレビに流れるドラマに見入る。路上の公衆電話から精神病院に電話を掛ける健次。そんななか、以前クラスでいじめに遭っていた、しかし健次は手を出さなかった、同級生の秋彦に出会う。秋彦は健次より先に喫茶店を訪れると店主がヤクザと親しい健次と鞄の中身を問い質そうとする。何も知らない秋彦は暴力を受けるも、喫茶店に戻った健次に助けられる。しかし健次は店主とその妻であるウェイトレス共々撲殺する。一方ヤクザは親分を探すなか、警察官を射殺、意気消沈して喫茶店に戻る。ヤクザはユリ共々死のうとする。しかし健次は「何でも自分の思う通りになると思うな。射てるものなら射ってみろ」とユリをバイクに乗せる。ヤクザは車に乗り自殺を遂げる。
健次はファミレスのトイレで鞄を開ける。ヤクザの片腕、パックに入った無数の白い粉、馬鹿らしく思った健次はデタラメにトイレに粉を放り込む。トイレから戻れば、うさぎを探すとメモを残しユリは消えている。思案した後、ユリを探しに出掛ける健次。ユリを見つけ「うさぎを探しているのだろう」と声を掛ける。「そう」と応えるユリ。健次はバイクを放ってユリと共に行く事を決める。路上に死んだヤクザの姿を見出すも、健次をユリを追う。

健次は一線を越えるもユリと共に行く事を決めたが故に踏みとどまる。秋彦はクラスで自分をいじめた者たちを毒殺すると言うのだが、健次の殺人の為に呆けて姿を晒し映像から消える。「EUREKA ユリイカ」、「サッド・ヴァケイション」への繋がりがようやく見えた。
しかし、この一連の物語に張り巡らされた女性の存在。この存在によって男たちの暴力は滑稽にも見える。愚かな故に最も神に近いユリと見立てれば健次こそユリが必要だったのである。そして「サッド・ヴァケイション」にて母親に対して、ユリをダシにして復讐をしたのだと語った健次だったが、再度一線を越え、これに深く傷ついたのは健次だった、と思うのである。


Helpless [DVD]

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