Terry Jennings『Piece for Cello and Saxophone』


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Terry Jennings(テリー=ジェニングス)は1960年代にニューヨークで活躍したミニマル・ミュージックの作曲家及び演奏家*1。『Piece for Cello and Saxophone』は1960年の作品。本音源はチェロ奏者Charles curtis*2の2016年の演奏でLa Monte Young(ラ=モンテ=ヤング )*3が盟友Charles Curtisのために純正律で編曲したもの。本作はYoshi Wada*4の実子でミュージシャンのTashi WadaのレーベルSaltern*5がリリースしている。Terry Jenningsは10代の頃にLa Monte Youngと知り合い、La Monte Youngが結成したTheatre of Eternal Musicで演奏し、その後は新ロマン主義の影響を受けた作曲をしたという。

ドローンを探究したLa Monte Youngやミニマリズムやドローンの作品を発表しているTashi Wadaが関わっていることから、本作がミニマル・ミュージックやドローン・ミュージックから評価されていることが判る。本作はタイトル名に反してLa Monte Youngの編曲でチェロ単独の演奏になっているものの、過去にはTerry Jenningsによってサクソフォンとチェロによる演奏が行われており、上記記事によればネット上にも一部の音源が公開されているとのこと。本音源の演奏時間は長い。しかしながら、低音のドローンとチェロが一定の長い音で呼応しながら、断続的な音の切れ目と変わり目の一瞬が明らかにされている。また、チェロの音の大小や高低音の緩急と揺らぎも判る。まずはこれらの音の変化のパターンとチェロの質感の妙味に気が付く。そして、ドローンとチェロの長い音の巡り合わせがどこまでがコントロールされた必然でどこまでライブによる偶然なのかと思い至る。これまでに数多の解釈があり、これからも数多の解釈が生まれる。おそらく、その一端しか知らずに終わる。そんな長大な射程の中にいることに気が付かされて寒気がした。