2022年7月の音楽

2022年6月は思うところがあり、新規購入した音楽は無い。

Shuta Hiraki『univocal』


Shuta Hirakiが2022年6月10日にリリースしたアンビエント作品。

『univocal』の意味を検索したところ、意味は、明白な、一つの意味しかもたない、とのこと。そのアナグラムは「vacuolin」となり、化学用語となるようだが、元は、空砲、液胞、という意味を持つ。「univocal」は「on baluster」と「lone」の2曲が収録されている。「on baluster」の意味を検索したところ、手すりを支える柱を意味するらしい。「lone」は意味を調べるまでも無いことだが。孤独を意味する。univocalの意味に寄せれば、ただ一つといった意味もある。紹介文には「work for fluttering lust with the rain sound of 梅雨」とある。梅雨のための音楽といったところなのだろうが、今年は梅雨明けが早く、気象庁が梅雨明けを宣言した後に聴いた。しかしながら、梅雨明けが発表された後、梅雨戻りと言うのだろう、雨の日が続いた。そんな中、ヘッドホンを付けて本作を聴いた。

主に「on baluster」について述べる。
全体として約15分の長さがあり、最後の残響の余韻のような時間を含めると概ね5回のタイミングで違うギミック等の追加や変化があるように思う。主にピアノのまばらな音、金属音、低音、これらのまばらな配置の音の残響が継続する。特に低音の残響がピアノの残響を引き立てる。5分頃にドローンとシンセサイザーが加わり、ドローンの消失と再生が続く。ここでピアノのまばらな音と金属音と低音の配置に一定のパターンがあると思われてくる。10分頃、ドローンが消失すると、ピアノと残響が重なって連なって行く。そして残響がこだまする。その後、低音の残響とともに高音の連なりの残響が続き、「lone」に至る。最初はピアノ音の心地良さばかりを追っていたものの、繰り返し聴いていくとドローンや高音、低音の残響の冷たい心地良さに身を委ねており、次曲の「lone」に引き継がれているように思われる。おそらく「lone」は「on baluster」の機械的な解釈による変奏と思われるが、気が付くと「lone」の方が好んで聴いている気がする。

Sun Ra & His Arkestra『Lanquidity』


喫茶店で暑い季節に丁度良いと店主が何度か掛けてくれた。サン=ラと言えば、ザ・スピリチュアル・ジャズといったところだが、一曲目のLanquidityの気怠い雰囲気が非常に良い。

Sun Ra & His Arkestra『The Magic City』


ジョン・コルベット 著、工藤遥 訳『フリー・インプロヴィゼーション聴取の手引き』において「Poly Freeの古典20枚」の1枚として挙げられており、『Lanquidity』と併せて聴いた。

Talking Heads『Remain in Light』

栗原裕一郎編著『村上春樹の100曲』より。アフロビートで構成されたアルバム。下記の『Fear of Music』よりこちらが良いと思う。

Talking Heads『Fear of Music』

栗原裕一郎編著『村上春樹の100曲』より。『Remain in Light』の前作となり、一曲目の「I Zimbra 」にアフロビートの導入が試みられている。なお、村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」に登場する。

the beach boys『Pet Sounds』

栗原裕一郎編著『村上春樹の100曲』より。一応、ビーチ・ボーイズに無知であるものの、まずは「ペット・サウンズ」は聴けということは知っている。なんでそんなことを知っているかというと、以前、綿矢りさによるビーチ・ボーイズに関する本の書評を読んだからだと思うのだが、詳細は忘れてしまった。
色々音楽を聴いてようやくこういった楽曲に向き合えるといったところである。そもそも、村上春樹の小説だと英語詞を理解していることが前提になっているものの、そこはさすがに判らない。
あと、昨今シティ・ポップの流行があり、ビーチ・ボーイズもそういった中で評価されているようだ。

the beach boys『Summer Days (And Summer Nights) 』

栗原裕一郎編著『村上春樹の100曲』より。村上春樹の小説においてビーチ・ボーイズの意味するところは重く、デビュー作である『風の歌を聴け』において本アルバムに収録された「California Girls」が重要な役割を与えられている。