『渇き。』

中島哲也監督作品『渇き。』を観た。
深町秋生原作「果てしなき渇き」の実写映画化作品。原作にほぼ忠実、脚色された登場人物が登場するも、橋本愛妻夫木聡オダギリジョーがノリノリで演じている為、全く問題にならない。ふざけた警官役妻夫木聡は二度位車に吹っ飛ばされて痛快、殺人狂の警官役オダギリジョーは、主人公役の役所広司にレイプされた妻に殺人を請け負っている事を罵られ妻を射殺する狂いっぷり*1。ヒロインの同級生役橋本愛は、役所広司と火花を散らしてその存在感をしらしめ、あまり登場しないヒロイン役小松菜奈が霞んでしまっていた。特にこの映画はヒロインが行方不明且つ何を考えているか判らないという設定であり、端的に出番は少なく行動の意図が判らない故「あの娘、何だったの?」くらいの感想を持つ可能性がある*2。どうなんだろう、そういう意味では顔立ち等で十分に人を惹きつけていたのだろうか?俺はもう橋本愛の印象が強くて一時会社のPCのスクリーンセーバーをこの映画の橋本愛にしていた位である*3。またこの劇中歌である「でんでんぱっしょん」が気に入りでんぱ組.incの楽曲を聴くようになった。

さて、本作では殺伐とした主人公の悪行が進むパートと共に最終的にヒロインによって殺される「ぼく」のパートがある。ここでヒロインが「不思議の国のアリス」を読んでおり、映画はヒロインを「アリス」に見立てている事が判る。ヒロインはアリスが落ちた長い長いうさぎ穴であり、皆はヒロインを求めてうさぎ穴に落ち、「不思議の国」=「人間の本性が暴かれた郊外」に招かれるのである*4

*1:妻役派谷恵はとても綺麗だった。

*2:何となくこの映画をチョイスしたであろう隣に座った化粧の濃い女性二人組は、この映画を観終えて「つまらなかった」という感想を漏らしていた。

*3:今はアルブレヒトデューラーの版画にしているがそんな事はどうでも良い。

*4:つまり『血と暴力の国』が立ち現れる。