2014年5月23日

「杉山が描いた初めての小説の件はよく知られている。人生は素晴らしいとか美しいとか…しかしそんな綺麗事を誰も読みたいとは思わなかったし、そのまま描けてしまうところに彼の軽薄さが滲み出ていた。」と言った内容のナレーションと共に、制服姿の男子中学生が自転車を押しながら女子中学生と語り合っている。どうやら杉山はこの男子中学生の事らしい。

スーツ姿の女性。鞄から白い書類が見える。就職活動中なのか、新入社員なのか。どちらにしても垢抜けない印象を持った。曇天、少し肌寒い。濡れたアスファルトに響く足音はイヤフォンから流れる音楽がかき消している。視界だけ開け、眼差しに偏見の眼鏡をつけている。ハンバーガー片手の女性。靴は赤いデッキシューズ。男と話を続ける。朝の空腹を感じている。男の小指に光る指輪と大袈裟なジェスチャー。電車の揺れにバランスを崩し靴を踏まれる。テーブルの上に並べられた焼酎のパックとミネラルウォーター。爺さんは生温い焼酎の水割りを朝から煽る。

現実とは何か。そもそも現実とは厳密に共有可能か。丸山眞男「現実主義の陥弄」でも読むかと思い、帰り掛けに本屋に寄り「丸山眞男セレクション」を手に取ったものの、何か違和感を憶え本を棚に戻し店を出る。腹が減ってしょうがない。カレーチェーン店に入り、大盛りのカレーを食べる。帰り掛け、業務が無いにも関わらずデスクに残って居た先輩社員は上司に飲みに誘われたのだろう。目が虚ろだった。おそらくだが、その場で客先への派遣ないし常駐について話されるはずなのだ。

課外授業の帰りなのか、大きな荷物を持った十代を多く見掛ける。身体に疲れがある事を隠さず、しかし躍動している姿、たぶんこれは若さなのだと思う。

「天冥の標Ⅷ ジャイアント・アークPART1」を読み終える。伏線が回収されつつあるなか、PART2では何が描かれるのだろう。続刊が楽しみでしょうがない。