『ゴジラ』(1984年版)

橋本幸治(本編)中野昭慶(特撮)監督作品『ゴジラ』(1984年版)を観た。
幼稚園の時、家から帰るとテレビの中でゴジラが高層ビルにもたれかかっていた。凶暴な眼差し、破壊尽くされた都市。このシーンを観てゴジラにのめり込んでいった。それが本作だったのは、ある程度ものを知ってからになるだろう。また一つ一つのシーンを写真のように切り取って記憶していたようだ。落書き帳には、怪獣が横並びに並んで相対した絵をひたすら描き、それを頭の中で動かして、絵に付け足しをしていた。ゴジラにのめり込む事が破壊を望む事だと知ったのは、小学校低学年の時だった。画用紙に他の児童と共に切り絵を貼り付けていた時、自分が適当に切り取った画用紙の怪物が、他の児童が丁寧に切り取った森の上に容赦無く貼られたのだ。「怪獣は物を壊すもんだよ」と男の子は言った。どうにも子どもながらに腑に落ちなかった。皆がそれなりにつくったものが、怪物一つで駄目になってしまう。今思えばゴジラ映画とは正にそういう表現なのではないか?

東西冷戦下の世界情勢を背景に描かれた世界はブラックユーモアにしか見えない。ゴジラに破壊されたソ連原子力潜水艦により、アメリカとソ連が一触即発の状態になったり、アメリカとソ連が東京でゴジラに核爆弾を使いたがったり、誤ってソ連の核弾頭が発射されたりといった具合だ。またキャストの沢口靖子宅麻伸が若い。沢口靖子東宝シンデレラ受賞者であり、本作で日本アカデミー賞新人賞を受賞している。尚、Wikipediaによれば、東宝シンデレラ受賞者は、ゴジラ映画*1がある場合、必ずスクリーンデビュー出来るようになっていたらしい。

友人とゴジラ談義をしていたところ、話題に挙がったのは首都防衛戦闘機「スーパーX」である。デザインは何となくサンダーバード2号機を彷彿とさせるが、深緑色のカラーは自衛隊っぽく、洗練されたフォルムは渋い。また平成ゴジラシリーズにはスーパーXが改良されて再度登場するのだが、とにかく本作では渋い扱いなのだ。そんなスーパーXはホバリングしながら勇壮なBGMでゴジラを果敢に追い詰めるのだが、件のソ連の核ミサイルをアメリカが高度で迎撃した結果、高高度核爆発が発生した影響でゴジラが目覚め、ビルに潰されてしまう。

冒頭、巨大化したフナムシ「ショッキラス」に襲われた船でミイラの船員が出て来たりとグロテスクだが、本作がリアル路線だからこそ。今、昭和ゴジラを一から観ているが、本作及び平成ゴジラシリーズは楽しんで観る事が可能になっていると思う。


*1:ゴジラ終了後はモスラ映画