2014年4月5日

起きると八時を過ぎていた。予定では始発の電車に乗って今頃上野公園で余裕の花見のひとり酒のはずだったのだが。この為の昨日の準備ではあったがレジャーシートが風に舞い処分されていない事を祈る。

荷物をまとめて早々と自宅を出る。ここで焦っても仕方無い。鞄が重い、腹が減る。ECHOSMITHが爽やかに唄う。肌寒いが天気は良い。ドリフの雷様みたいな金髪パーマを掛けたおっさんが、面白いのは雷様が描かれたパーカーを着ているところだが、乗り込んできた。何かの冗談なのかと思う。

ネット上で花見に参加する仲間たちが沈黙を守っている。遅刻に対する怒りの表明なのか、まだ夢のなかなのか。春、レイチェル=カーソン「沈黙の春」、スプリングという英単語を「春は虫や動物が土や木々からバネみたいに飛び出してくるような感じだからスプリングっていうの」と教師は話した。そんな春の沈黙。それは耐えられそうに無い。SFでは、異常気象による天候の偏りは、夏と冬に決まっている。そもそも天蓋が人工的なのもよくある話。季節は壊れる儚いものだ。

レジャーシートを張り直す。数分すると友人が来た。ベルギービールで早めの乾杯。友人の差入れの缶ビールも飲む。そしてベルギービールをまた飲む。ピッチが早い、午前中の間に出来上がってしまった。ピークは過ぎたものの桜は花を咲かせている。主要参加者が揃ったところで昨日買ったマカロンを食べた。美味しい。友人が予約して取ってきたピザを食べているとテレビ局の取材を受ける。去年はアベノミクスの影響についてインタビュー、今年は酒のつまみについてのインタビュー。仲間たちで特に何かを話す訳では無い。ひたすら飲み食いする。そして桜がある。二年間イギリスに居た友人と合流した。大学卒業以降、数人ではあるが皆で顔合わせをしたのは何年振りだろう。言葉にすればたかだか四、五年。けれども、この身体に経験した事は頭の中で考えていた事とは、やはり違っていた。

友人たちを照らすランタンの灯り、桜を照らすぼんぼりの灯り。辺りを包む臭気、馬鹿騒ぎ。人混みから抜け出し家路に着いた。