服はなぜ音楽を必要とするのか?

菊地成孔著『服はなぜ音楽を必要とするのか?「ウォーキング・ミュージックという存在しないジャンルに召喚された音楽たちについての考察」』を読んだ。
ファッション・ショーに於いてモデルたちは音楽に合わせてウォーキングしない。音楽に合わせて歩けば行進となる*1
モデルたちのウォーキングは音楽とズレている。著者はこのズレ/揺らぎについてヒップホップとの関係性*2を推測、市民革命以降の服飾文化について考察を加えながら*3、ファッションショーの映像を批評していく。
批評の中で、実はモデルのウォーキングに音楽を流したのは日本人だという事が判明したり、市民革命以降の服飾文化、オペラについて語られたりと、ファッション、ないしファッション・ショー門外漢の私でも面白く読める*4
特に著者がパリコレ滞在記やファッションショーで音楽を担当する人々のインタビューがとても興味深く読めた。
ファッションショーの動画を動画サイトでみる事はしなかったが、読みながら本書に出てくる音楽を検索しては聴いていた。
以下、本書で言及されたもので、個人的にリピートしたものを掲載する。



Jessie Saunders - On and On - YouTube
ファッションショーで流れる音楽は、ハウス・ミュージックが多い、という事で著者がハウス・ミュージックについて言及する。一応、シカゴ発という事は知っていたが、この音楽から始まったという事は知らず。



Be My Baby - The Ronettes - YouTube
パリコレ滞在記の中で言及される、当時シャネルのテーマ曲となっているものとの事で、著者がその歌詞を引用している。



Sparks - This Town Ain't Big Enough For Both Of Us ...
ランバンの音楽を担当するアリエル=ウィズマンとのインタビューで言及される。本書のインタビューの中で一番刺激的で面白い。アリエル=ウィズマンはスパークスをリスペクトしているとの事。アリエル=ウィズマンはレヴィナスから薫陶を受けたらしく、ウォーキングを、歩きながら思考する古代ギリシアの哲学者を引き合いにだしたりしている。ちなみに良い曲だったのでその上記楽曲が収録されている「Kimono My House」を購入した。


*1:ただし本書の中で行進するというスタイルを取るメゾンが登場し、言及される事となる。

*2:著者が本書外でもよく言及している。

*3:その他、色々。

*4:一応、大学時代からの友人、コム・デ・ギャルソンを好んだ彼から色々と刺激を受けてファッションに少し興味があるといえばあるのだが。