小説『桐島、部活やめるってよ』

映画『桐島部活、やめるってよ』が非常に面白かったので文庫本を手に取ってみた。
映画と小説の違いについては、大澤真幸の評が非常にまとまっている。
小説の内容を読む限り、それぞれの登場人物の結末は、映画の内容と似ているようで、違う。
特に、野球部の幽霊部員の少年は、体育館で映画部の生徒と接触、その姿に眩しさを感じる。同時にある事を知り桐島に声を掛けようと決意、その場を後にする。
それは映画で桐島に救いを求めるとはまた違う彼の姿である。
桐島が辞める事によってリベロのポジションについた後釜の生徒は、桐島には及ばないと映画では叫ぶ事になるが、小説ではその役目を引き受けていく。

私は映画の「桐島部活、やめるってよ」を面白く思うのだが、桐島が部活を辞めた事を受け入れていく小説に非常に説得力を覚える。
生活のなかで誰かがその場を去った時、その穴を自然に埋めていく事を経験的に知っている。だから小説では誰も右往左往する事は無い。
そしてその去った人の役割を埋めながら、去った人の一面を新たに知る事もあるだろう。
映画は桐島の突然の退場に驚く生徒たちが描かれるが、いずれ、この小説のように生徒たちも受け入れていくのだ、と、私は思うのだが。

思いの外、シリアスな面があったりして驚いたのだが、やっぱりミサンガをしている人たちは付き合っているのかなとか思い、はぁと溜息をつくのだけど。


―桐島部活、やめるってよ 評者 大澤真幸 BooK asahi.com 朝日新聞社の書評サイト―
http://book.asahi.com/ebook/master/2012092800004.html



桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)