『バットマン ビギンズ』『ダークナイト ライジング』

『ダークナイト』を観て以来、続編を楽しみにしていた。
『バットマン ビギンズ』を観てから『ダークナイト ライジング』を観に行った。『ダークナイト ライジング』は『バットマン ビギンズ』の内容とつながりがあり、『バットマン ビギンズ』を観ておいた方が面白い。
『バットマン ビギンズ』では、バットマンの誕生と、その誕生に関わった組織「影の同盟」との攻防が描かれる。
主人公は両親を強盗に殺されたというトラウマを抱えており、同時期に自身の屋敷内で遭遇したコウモリの群れへの恐怖と重ね合わせている。
主人公は忍者集団「影の同盟」での修行の中でその恐怖を征服し利用する事を覚える。一方ゴッサム・シティを新たに創造する為に破壊が必要と迫る「影の同盟」と離別する。
主人公はゴッサム・シティに戻り、自身が征服した恐怖心―「コウモリ」を悪人共に刷り込むためにバットマンとなる。毒を以て毒を制す、これがバットマンというコンセプトなのだ。そのため、バットマンという立場そのものがとても微妙なものだという事が判る*1
物語の終わりにバットマンのパフォーマンスに呼応してジョーカーの登場が明示され、『ダークナイト』にて一線を越えた者同士としてバットマンを苦しめ、更にトゥーフェイスがその存在で以てバットマンを犯罪者へと追いやる。

『ダークナイト ライジング』は『バットマン ビギンズ』、『ダークナイト』のテーマが引き継がれている。
『ダークナイト』にてバットマンを犯罪者と仕立てあげる事によってゴッサム・シティに平和が訪れる。他方、平和の裏で悪人共の暗躍を察知したバットマンが活動を始めようとする。そこでバットマンの存在理由が問われる事になり、それぞれの登場人物が行動するなかで、その存在理由は私的なものへ変貌していく*2
前二作で広げた風呂敷をまとめあげひたすらエンターテイメントをする三部作は最高に面白かった。特にキャットウーマンがスタイリッシュに物語を演出する。そしてバットマンに対し「二人でどこかに逃げましょう」と正義にも悪にもなれない観客の声を届けてくれる*3

*1:実際、バットマンは警察が手を出せない犯罪者に対して法を越え私刑をしている訳で。

*2:その証拠として経済・治安・環境のテーマが散りばめられ、それぞれ理解出来ると同時に全てを引き受けるキャラクターはバットマンしか―それもまた怪しいのだが―いない。正直こういう考えしか出て来なかった辺り、おれはこの映画をよくわからなかったのかもしれない。

*3:この声こそ物語が私的なものへの変化である事の答えなのかもしれない。